鉄道唱歌 奥州・磐城編 第9番 両毛線で養蚕と織物の街をゆく 前橋、高崎へ

まずは原文から!

左にゆかば前橋(まえばし)を
經(へ)て高崎(たかさき)に至るべし
足利(あしかが)桐生(きりゅう)伊勢崎(いせさき)は
音に聞こえし養蠶地(ようさんち)

さらに読みやすく!

左にゆかば前橋(まえばし)を
経(へ)て高崎(たかさき)に至るべし
足利(あしかが)桐生(きりゅう)伊勢崎(いせさき)は
音に聞こえし養蚕地(ようさんち)

(東北本線)
上野駅→王子駅→赤羽駅→(荒川)→浦和駅→大宮駅→蓮田駅→久喜駅→栗橋駅→(利根川)→古河駅→間々田駅→小山駅→小金井駅→石橋駅→雀宮駅→宇都宮駅

(両毛線)
小山駅→足利駅→桐生駅→伊勢﨑駅→前橋駅→新前橋駅(→高崎駅)

※鉄道唱歌に関連する主要駅のみ表記
※新前橋駅~高崎駅は上越線の区間

小山駅を左(西)へ行くと、両毛線で前橋・高崎へ

前回説明したように、小山駅(おやまえき、栃木県小山市)は左右(東西)に別々の線路が分かれています。右側(東側)を水戸線(みとせん)、左側(西側)を両毛線(りょうもうせん)といいます。

小山駅・両毛線ホームより(栃木県小山市)

両毛線(りょうもうせん)は、栃木県小山市の小山駅と、群馬県前橋市の新前橋駅(しんまえばしえき)を結ぶ、いわば「栃木県と群馬県を東西に結ぶ路線」です。
歌詞にもあるように、沿線は製糸織物養蚕などの名産地であるため、歴史的にこれらの生産物を運ぶための路線として作られました。
新前橋駅からはさらに上越線(じょうえつせん)と接続して、高崎駅(たかさきえき、群馬県高崎市)に至ります。

「両毛線」の名前の由来とは?

両毛線の名前の由来について、少し勉強しましょう。

群馬県は元々、上野国(こうづけのくに)という国名でした。「うえの」ではなく、「こうづけ」と読みます。

また、栃木県は元々、下野国(しもつけのくに)という国名でした。「しもの」ではなく、「しもつけ」と読みます。

群馬県→上野国、上毛野国(こうづけのくに)
栃木県→下野国、下毛野国(しもつけのくに)

そして、間に「毛」という文字が入る場合があります。読み方は同じです。

つまり、上毛野国と下毛野国の両方の「毛」がつく国を結ぶ、つまり群馬県と栃木県の両方の県を結ぶという意味で「両毛線(りょうもうせん)」といいます。

なお、「上毛新聞」「上毛電鉄」などのように、群馬県のことを「上毛」という表現は一般的にありますが、栃木県に対して「下毛」という表現をするのはあまり一般的ではないようです。

「上越新幹線」の「上越」と、新潟県上越市の「上越」は、意味が異なる

さらに補足すると、「上越新幹線」というのは「上野国(こうづけのくに、群馬県)」と「越後国(えちごのくに、新潟県)」を結ぶ新幹線という意味になります。つまり群馬県と新潟県を結ぶ新幹線という意味です。
川端康成の有名な小説「雪国」の冒頭に出てくる、いわゆる「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」の国境とは、いわゆる上越国境(群馬県と新潟県の県境)のことではないかと言われています(諸説あり)。
つまり、ここでいう「上越」とは、新潟県上越市の「上越」とは意味が異なります。
新潟県はとても広いため、京都に近い順に「上越(じょうえつ)」「中越(ちゅうえつ)」「下越(かえつ)」に分かれています。
さらに、京都に近い順に
福井県→越前(えちぜん)
石川県→加賀(かが)
富山県→越中(えっちゅう)
新潟県→越後(えちご)
のように分かれています。
混乱しないよう、併せて覚えておきましょう。

このことを知らないと、北陸新幹線の上越妙高駅(じょうえつみょうこうえき、新潟県上越市)はなぜ上越新幹線の線路上にないの!?という疑問が起こってしまうわけです。
私も小学生のときは、なんで上越新幹線が新潟県上越市に向かっていないのだろうと思っていました。

「足利学校」や足利氏の出身地としても知られる、栃木県足利市

話がだいぶずれてすみません。
両毛線の沿線の話題に戻ります。

栃木県足利市(あしかがし)は、その名の通り、あの室町幕府を作り上げた足利氏の発祥の地として知られています。
隣の小山市も小山氏と縁(ゆかり)があったり、結城市も結城氏とゆかりがあることは、前回も説明しました。
この辺りは、その地名とゆかりある一族と関連が高いケースが比較的多いという印象です。
そして、足利市にはかつて関東最高と呼ばれた学校である「足利学校(あしかががっこう)」があります。創立はなんと平安時代で、日本の歴史上トップクラスに古い学校であり、日本最古の学校とも呼ばれています。

「桐生織」で有名な、群馬県桐生市

群馬県桐生市(きりゅうし)は、いわゆる桐生織(きりゅうおり)で有名な、織物の産地です。
織物といえば京都の西陣織(にしじんおり)が有名ですが、それと比肩するほどの名声があります。
織物の産地で他に鉄道唱歌に関係するところでは、岩手県盛岡市や福井県福井市の羽二重織(はぶたえおり)や、福岡県福岡市博多区の博多織(はかたおり)が有名だと歌われていますね(それぞれ奥州・磐城編35番、北陸編63番、山陽・九州編40番)。併せて覚えておきましょう。

同じく絹織物で有名な、群馬県伊勢崎市

群馬県伊勢崎市(いせさきし)も、桐生市と同じく絹織物(きぬおりもの)が盛んです。
絹と生糸はどう違うの?という疑問がわくと思いますが、簡単に説明すると以下のようになります。

生糸→加工しておらず、原料である繭に近い糸
→生糸を加工して、おりやすくしたもの

群馬県の県庁所在地・前橋市

群馬県前橋市(まえばしし)は、群馬県の県庁所在地です。人口では高崎市の合併により抜かれてしまったものの(高崎市:37万人、前橋市:33万人)、赤城山(あかぎやま)の麓に雄大に市街地が広がる、県庁所在地に相応しいとても大きな都市であることには変わりありません。
なお、鉄道唱歌 北陸編 第12番では、「上野(こうづけ)一の大都会」と歌われていますよね。

群馬県最大の人口を持つ都市・高崎市

群馬県高崎市(たかさきし)は、前橋市と並ぶ群馬県の2大都市の一つです。
高崎駅は上越新幹線・北陸新幹線が停車する駅であり、駅前はとても都会的に栄えている群馬県最大の人口を擁する街です。
かつては、江戸時代に京都へ徒歩または馬で向かう旅人たちの道路であった中山道(なかせんどう)の宿場町・高崎宿(たかさきしゅく)として栄えました。

明治時代の「殖産興業」で栄えた、群馬県の養蚕・生糸産業

このように、群馬県や隣の栃木県では、明治時代に「欧米諸国に負けないように日本を強い国にしよう!」ということで、当時の主力産業であった生糸や織物などをいかに大量に効率よく生産し、それを輸出することで大きな利益を上げるかが重要でした。
そのため、群馬県には桑畑・養蚕・製糸・織物に関連する地域がたくさんあります。
以下が、それぞれの工程です。

桑畑→カイコが食べる桑を育てる
養蚕→桑を食べさせてカイコを育てる
製糸→カイコが生んだ繭から糸を作る
織物→糸をおりあわせて着物を作る

群馬県、栃木県のいわゆる両毛地域では、これらの名産地というわけです。
製糸で特に有名なのは、現在では世界遺産にも登録されている「富岡製糸場(とみおかせいしじょう、群馬県富岡市)」が有名ですね。

魅力度ランキングでは常に下位・・・群馬県には魅力がない? けど実はこんなにある群馬県の魅力

観光地としての群馬県ですが、2021年の「都道府県魅力度ランキング」で群馬県は44位という不本意な結果に終わってしまい、山本知事が「法的措置も検討」という発言をして話題になったことがありました。
しかし、群馬県には以下のようなたくさんの観光的魅力があります。

・避暑地で有名な伊香保温泉(いかほおんせん)、榛名山(はるなさん)
・日本一のモグラ駅「土合駅(どあいえき、群馬県利根郡みなかみ町)」
・死者数世界一でギネスブック登録で有名な谷川岳(たにがわだけ)
みなかみ町の温泉街、利根川の流れの景観
・ドリフターズの曲「いい湯だな」でも歌われている「草津温泉(くさつおんせん、群馬県吾妻郡草津町)」
・ユニークな形をした山で有名な「妙義山(みょうぎさん)」と、碓氷川(うすいがわ)の景観
・温泉マークの発祥地「磯部温泉(いそべおんせん、群馬県安中市)」
・信越本線横川駅(よこかわえき、群馬県安中市)の「峠の釜めし」「アプトの道

などなど。他にも挙げればたくさんあると思います。

なお、現在ではドリフターズの曲で有名な「いい湯だな」も、元々はデューク・エイシスというアーティストによる群馬県の温泉をメインに歌った曲だそうです(草津温泉、伊香保温泉、万座温泉、水上温泉)。

これらの群馬県の観光的魅力については、鉄道唱歌北陸編でかなり歌詞を割いて歌われていますので、その時に詳しく解説します。

群馬県の観光と名所探訪はいかがだったでしょうか。
次は、再び小山駅に戻り、宇都宮方面へ戻ります!

注意
この記事は、「小学生の頃の私(筆者)に教える」というイメージで書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
もし内容の誤りに気付かれた方は、「お前は全然知識ないだろ!勉強不足だ!」みたいなマウントを取るような書き方ではなく、「~の部分が誤っているので、正しくは~ですよ」と優しい口調で誤りをコメント欄などでご指摘頂ければ嬉しく思います。再度こちらでも勉強し直し、また調べ直し、内容を修正致します。何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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