鉄道唱歌 奥州・磐城編 第37番 八戸に到着!ようやく海の景色に出会える

まずは原文から!

尻内(しりうち)こせば打ちむれて
遊ぶ野馬(のうま)の古間木(ふるまき)や
今日ぞ始めて陸奧(みちのく)の
海とは是(これ)かあの船は

さらに読みやすく!

尻内(しりうち)こせば打ちむれて
遊ぶ野馬(のうま)の古間木(ふるまき)や
今日ぞ始めて陸奧(みちのく)の
海とはこれかあの船は

さあ、歌ってみよう!

♪しりうちこーせば うちむれてー
♪あそぶのうまのー ふるまきやー
♪きょうぞはじめて みちのくのー
♪うみとはこれかー あのふねはー

(IGRいわて銀河鉄道)
盛岡駅→好摩駅→岩手川口駅→いわて沼宮内駅→奥中山高原駅(旧・中山駅)→小鳥谷駅→一戸駅→二戸駅→目時駅

(青い森鉄道)
目時駅→三戸駅→八戸駅(旧・尻内駅)→三沢駅(旧・古間木駅)→野辺地駅→浅虫温泉駅→野内駅→青森駅

※鉄道唱歌に関係ある主要駅のみ抜粋(便宜上、各ターミナル駅や新幹線停車の主要駅なども併記)

「青い森鉄道」にて、八戸方面へ

歌詞にある「尻内(しりうち)」とは、現在の八戸駅(はちのへえき)の開業当初の名称、また「古間木(ふるまき)」とは現在の三沢駅(みさわえき)の開業当初の名称です。詳しくは後述します。

目時駅(めときえき)を過ぎると、ここからは青森県となり、さらに鉄道路線は第三セクターの「青い森鉄道」の経営管轄下に入ります。

なぜこの区間はJRでなく第三セクターなのかというと、前回説明したように、元々はJR東北本線の一部だったのが、盛岡駅~新青森駅間で東北新幹線が開業したため、JRから経営分離したからです。詳しくは、前回の記事をご覧下さい。

青い森鉄道(あおいもりてつどう)は、前述するようにJR東北本線を前身とする第三セクターの会社です。
線路は青森県の所有であり、青森県に使用料を払って経営する、いわゆる「上下分離方式」をとっています。
また、第三セクター線や私鉄ローカル線は赤字になることが大多数であり、青い森鉄道発足当初も赤字が予想されていたのですが、なんとずっと黒字続きという経営能力の高さがあります。その秘訣は、やはり地域のニーズ(通学や通勤)を聞き出し、地域の人々が望む駅(場所)に必要な数の列車が適切に来るという、お客様からのヒヤリング能力とコミュニケーション能力の高さの表れであるともいえるかもしれません。
必要の無い駅に無駄に列車を走らせても赤字になるだけです。逆に言えば、お客様が必要としている駅や場所に必要な本数を充てれば、利益に繋がります。これは、お客様の声を普段からいかに聞いているかが重要になります。当たり前のことですが、これはなかなか行動力のある企業でないと難しいことかもしれません。
青い森鉄道は、この「当たり前だけど実行に移すのは難しい」ことを抜群の行動力と決断力、実行力でなし得たのかもしれません。素晴らしいですね!

「青い森鉄道」は、「北海道&東日本パス」なら自由に乗り放題

なお、青い森鉄道のこの区間はJR区間ではありませんが、青春18きっぷでも、「青森~八戸」「青森~野辺地」「野辺地~八戸」の区間に限って、乗ることができます。しかし、上記3つ以外の駅で乗り降りすることはできません。例えば青森駅を出発すると最低でも野辺地駅までは降りられないため、注意しなければなりません。
やはり、東北地方や北海道方面のみの旅行なら、IGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道にも自由に乗り降りできる「北海道&東日本パス」の方が1日あたりの料金も安くて便利といえるでしょう。

また、この救済措置は、野辺地駅(のへじえき)から分岐しているJR大湊線(おおみなとせん)が、他のJR路線から孤立してしまったため、青春18きっぷでJR区間を接続できるための措置であるとも考えられます。元々はJR東北本線の区間だった目時駅~八戸駅~野辺地駅~青森駅の区間が経営分離により青い森鉄道の区間となったことにより、JR大湊線は孤立することとなったため、上記の措置ができたのかもしれませんね。

三戸駅を過ぎて、馬淵川に沿って走る

目時駅を過ぎて北上すると三戸駅(さんのへえき)、諏訪ノ平駅(すわのたいらえき)、剣吉駅(けんよしえき)、苫米地駅(とまべちえき)のように、馬淵川(まべちがわ)の景色が美しい区間を通ります。
(上記はいずれも青森県三戸郡南部町の駅。)

馬淵川(青森県)

馬淵川(まべちがわ)はこの辺りを流れる重要河川であり、一級河川です。
馬淵川は岩手県の北東部あたりに水源地があり、西へ進むと岩手県の小鳥谷駅あたりで鉄道線路と合流し、そのまま北へ流れて青森県に突入し、八戸方面へ流れます。そして、八戸市街地を流れて、最後は太平洋に注ぎます。

車窓からの冬の馬淵川の白い雪景色は、素晴らしいものです。

八戸駅(旧・尻内駅)に到着!しかし、街の中心部は「八戸線」で

馬淵川に沿って北上すると、いよいよ八戸駅(はちのへえき、青森県八戸市尻内町)に到着します。

東北新幹線・八戸駅(青森県八戸市)
東北新幹線・八戸駅(青森県八戸市)

と言いたいところですが、この八戸駅は尻内町(しりうちちょう)という八戸市街地とはやや離れた位置にあり、どちらかというと八戸市の中心部はここから八戸線に乗り換え、馬淵川を渡ったところにある「本八戸駅(ほんはちのへえき)」「小中野駅(こなかのえき)」「陸奥湊駅(むつみなとえき)」あたりが市街地中心部になります。

八戸線・本八戸駅(青森県八戸市)

八戸駅は尻内町にあると説明しましたが、1891年の開業当初は「尻内駅(しりうちえき)」という名称でした。鉄道唱歌の歌詞にも「尻内こせば~」と歌われていますよね。

八戸駅が市街地中心部から離れているとはいえ、駅入口付近にはドトールコーヒーがあって軽く休憩できる上、コンビニも駅前にあるので簡単な買い物も済ますことができます。というか、八戸駅は新幹線も止まる大きく綺麗な駅なので、それなりに設備も充実しており次の列車の待ち時間を退屈することはありません。

人口20万人、青森県第二の都市・八戸市

青森県八戸市(はちのへし)は、人口20万人を越える青森県東部きっての主要重要都市です。
八戸市内の観光をする際には、「八戸線」に乗り換えて、「本八戸駅」などで降りてみましょう。

八戸大橋(夢の大橋)(青森県八戸市)

八戸市内には「青森県一の大きな橋」とされる「八戸大橋(通称:夢の大橋)」という大きな橋があります。黄色い壮大なカラーが特徴的な、大きな橋です。
この「夢の大橋」は、近くの「館鼻公園(たてはなこうえん)」という公園からよく眺めることができます。最寄り駅は先ほど紹介した八戸線陸奥湊駅(むつみなとえき)で、徒歩で15分ほどいくと公園に着きます(少し距離があるので、徒歩で向かう際には充分気を付けて行ってください)。

ウミネコの集う島・蕪島

また、八戸線で少し先の「鮫駅(さめえき、青森県八戸市鮫町)」で降りると、ウミネコの繁殖で有名な「蕪島(かぶしま)」に着きます(やはり駅から徒歩15分~20分ほどの位置にあるので、徒歩で行かれる場合は充分気を付けて行ってください)。

蕪島(かぶしま)はウミネコの大量繁殖地として有名で、元々は本当に島だったらしいのですが、1942年に軍事目的で、現在のような陸続きになったそうです。

蕪島(青森県八戸市)

島の「蕪島神社」に祀られているのは「弁財天(べんざいてん)」です。神奈川県の江ノ島や、静岡県沼津市淡島(あわしま)、浜名湖弁天島などと一緒ですね。
弁財天(べんざいてん)は、海の安全や大漁、商売繁盛などに御利益のあるインドの神様で、日本神話のイチキシマヒメノミコトと同じ神様であるとされています(同一視)。

そして、2011年3月11日の東日本大震災の際には、島の約5m位のところまで津波が来たらしく、大変なことになったようです。
神社へ登っていく階段の途中に、津波の高さの目印があり、「こんな高さまで津波が来たのか」とびっくりしてしまいます。いかに津波が恐ろしいものであったかわかります。

今回の旅では、初めての海の景色

鉄道唱歌の歌詞に戻りますが、「今日ぞはじめて陸奥(みちのく)の 海とはこれか あの船は」とあります。これは、思えば東京の上野駅を出発して、東北本線をはじめとするずっと内陸の鉄道路線を通ってきたため、八戸市あたりまで来てようやく海の近くまで来られた、というちょっとした感動を表しています。蕪島まで来れば、以下のような綺麗な海岸に出会えます。

蕪島近くの海の景色(青森県八戸市)。思えば、東北地方の鉄道旅を始めて、これが最初の海だ

鉄道唱歌 奥州・磐城編では、言われてみれば確かにこれが最初の海の景色だったんですよね。海のはるか向こうは、北海道の日高半島(ひだかはんとう)や、苫小牧(とまこまい)あたりでしょうか!?

八戸を出て、やがて三沢駅(旧・古間木駅)へ

冒頭でも少し述べた通り、歌詞にある「古間木(ふるまき)」とは、現在の三沢駅(みさわえき、青森県三沢市)にあたります。三沢駅は、開業当初は古間木駅(ふるまきえき)と呼ばれていました。

青森県三沢市(みさわし)は、歴史的に馬の生産などでよく知られた町でした。

馬は暑さに弱い動物なので、東北地方や北海道などの冷涼な地域でよく育ちます。

東北地方では歴史的によく馬は飼育生産されてきたほか、現在でも北海道の日高半島では競走馬が飼育生産されています。

また、岩手県南部の平泉(ひらいずみ)で奥州藤原氏(おうしゅうふじわらし)が平安時代の1080年頃~1180年頃に栄華を極めていたときに、東北地方の冷涼な環境を生かして多くの馬を、京都などに売って莫大な利益を挙げて平泉の繁栄を築いていました。
それだけ、歴史的に東北地方で生産された馬は貴重だったといえます。

「三八上北」とは?青森県でしか通じない、ローカル知識

ここから先は、少し雑学的な話をします。
これを知っておくと、青森県出身の方と会話するときに、少し会話の幅が広がるかもしれません。

青森県のホテルに泊まって、天気予報などを観ていると、「三八上北(さんぱちかみきた)」という、恐らく地元民にしか通じないであろうフレーズが普通に飛び交って出てきます。
今、鉄道唱歌で走っているまさにこの地域のことを、地元では「三八上北(さんぱちかみきた)」と言ったりします。

三八上北(さんぱちかみきた)とは、いわゆる三戸郡、八戸市、上北郡の地域。つまり青森県の東側の地域のことを言ったりします。

青森県は横に広いため、西から津軽地方、北東の下北地方、そして東側の三八上北の3地域に別れます。

津軽地方は県庁所在地の青森市をはじめ、弘前市(ひろさきし)、五所川原市(ごしょがわらし)などが含まれます。
下北地方は、青森県の右上に突き出た半島である下北半島(しもきたはんとう)の地域で、中心都市はむつ市になります。
そして三八上北の中心都市は八戸市になります。

なので、3地域では地域性や文化もかなり異なりますし、方言もかなり違うようです。三八上北に住む人からすれば、津軽弁はかなりわからないようです。特に若い人は老齢世代の津軽弁は特に理解できなくて難解なため、青森県の国立大学である弘前大学(ひろさきだいがく)の医学部では津軽弁が必須科目となっています。若い医者が高齢な患者の言葉を理解するためですね。

津軽地方の高齢者は、なんと「け」だけで会話が通じます!
しかも「け」には複数の用法があるらしく、とても地元民ではない我々が数日あたりで理解できるものではないでしょう。

三沢駅を出ると、小川原湖(おがわらこ)を横に過ぎ、上北町駅(かみきたちょうえき、青森県上北郡東北町)も過ぎて、野辺地駅(のへじえき)へ向かって進んでいきます!

注意
この記事は、「小学生の頃の私(筆者)に教える」というイメージで書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
もし内容の誤りに気付かれた方は、「お前は全然知識ないだろ!勉強不足だ!」みたいなマウントを取るような書き方ではなく、「~の部分が誤っているので、正しくは~ですよ」と優しい口調で誤りをコメント欄などでご指摘頂ければ嬉しく思います。再度こちらでも勉強し直し、また調べ直し、内容を修正致します。何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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