鉄道唱歌 山陽・九州編 第59番 武雄温泉・江北・有田・早岐方面へ 佐世保への分かれ道

まずは原文から!

つかれてあびる武雄(たけお)の湯
みやげにするは有田燒(ありたやき)
めぐる車輪(しゃりん)の早岐(はいき)より
右にわかるゝ佐世保(させぼ)道(みち)

さらに読みやすく!

つかれてあびる武雄(たけお)の湯
みやげにするは有田焼(ありたやき)
めぐる車輪(しゃりん)の早岐(はいき)より
右にわかるる佐世保(させぼ)道(みち)

さあ、歌ってみよう!

♪つかれてあーびる たけおのゆー
♪みやげにするはー ありたやきー
♪めーぐるしゃりんの はいきよりー
♪みーぎりわかるる させぼみちー

(長崎本線)
鳥栖駅→新鳥栖駅→吉野ヶ里公園駅→佐賀駅→鍋島駅→久保田駅→江北駅(旧・肥前山口駅)

(佐世保線)
江北駅(旧・肥前山口駅)→武雄温泉駅→有田駅→早岐駅→佐世保駅

※鉄道唱歌に関連する駅と、その他主要と思われる駅を筆者の独断と偏見でピックアップしたものを記載

佐賀駅を西に出発すると、今度は江北(こうほく)・武雄温泉(たけおおんせん)・早岐(はいき)方面へ向かって進んでいきます。ゴールの長崎も、もう少しといった感じとなります。

今回は主に、佐賀駅鍋島駅(なべしまえき)→久保田駅(くぼたえき)→江北駅(こうほくえき)→武雄温泉駅(たけおおんせんえき)→有田駅(ありたえき)→早岐駅(はいきえき)、のように進んでいきます。

鍋島駅(なべしまえき、佐賀県佐賀市鍋島町)は、鍋島町の駅ですが、「鍋島(なべしま)」というのは江戸時代の佐賀県(佐賀藩)を支配していた一族の鍋島氏に由来しているのかもしれませんが、真相はよくわかりません。
ただし、全国的に地名と一族の名前が重複しているケースは多いです
(例:栃木県小山市小山氏、栃木県足利市足利氏津軽半島津軽氏、福島県相馬市相馬氏など)

久保田駅(くぼたえき、佐賀県佐賀市久保田町)は、唐津線(からつせん)との分岐駅です。
佐賀県唐津市(からつし)は、これまで何度も説してきた通り、古代より「外国に近い港町」として港湾を中心に栄えてきた街です。港で働く人が増えると、その人々をもてなすための商業施設も増えるので、こうして港湾都市は栄えてゆきます。

江北駅(こうほくえき、佐賀県杵島郡江北町)は、以前は肥前山口駅(ひぜんやまぐちえき)という名前で、いわゆる「最長片道切符」のゴール地点として知られていました。
また、トップ鉄道系YouTuberであり「交通の神様」とも呼ばれるスーツさんが、2016年に初めて顔出し動画を出した駅としても知られます。

肥前山口駅(現・江北駅)(佐賀県杵島郡江北町)

肥前山口駅は、西九州新幹線の開業に伴い、地元の江北町(こうほくまち)の知名度アップのために、肥前山口駅から江北駅(こうほくえき)に駅名変更となりました。
しかし、「肥前山口駅」という名前は鉄道ファンにとって最高のステータスを持つ「最長片道切符」のゴール地点として広く認知されていたため、「肥前山口駅」の名前は残した方がよい、という声も上がっています。
それだけ、「肥前山口駅」というネームバリューは大きかったのです。

「江北町へようこそ」最長片道切符のゴールとして強い存在感を印象付ける

最長片道切符(さいちょうかたみちきっぷ)とは、北海道の稚内駅(わっかないえき、北海道稚内市)を出発し、日本列島を縦横無尽に(経路が重複しないように、また後戻りしないように)駆け巡り、九州を一回りして肥前山口駅でゴールとなる、自身で作ることのできる片道切符の中で最も長い距離となる切符のことです。
有効日数は56日にもおよび、値段にすると約91,000円かかります(学割だと約73,000円)。
日本列島を、日本中の路線をわざと遠回りして距離を稼ぎながらジグザグに進むので、同じような場所を行ったり来たりする上、また距離を稼ぐ目的で移動手段としてはほぼ無意味に新幹線に乗ったりもします(例:身延線で甲府駅から富士駅に来て、東海道線で富士駅→三島駅に進み、新幹線で三島駅→新富士駅→静岡駅に移動したりなど※。富士市を2回通っているが、駅は重複していない)。
※このルートはあくまでわかりやすさの観点から紹介した例であり、必ずしも実際の最長片道切符のルートというわけではありません。

JRの片道切符は、実はオーダーメイド品ということもできます。普段我々が券売機で買うきっぷも、発着駅を決めてその場でオーダーメイドしているのです。
こうした片道切符は、本来であれば駅が重複しない限り、いわゆる「一筆書き」でいくらでも長い経路の切符を作ることができます。

また、あまり知られていないのですが、実はJRの片道切符は100キロ以上の距離があれば、途中下車を何回もすることが可能です。
そして、有効日数が2日以上あれば、夜に宿泊する駅で途中下車して、翌朝から続けて乗ることができます。
このようにして、片道切符は好きなルートを自在に長く設定でき、100km以上のきっぷであれば何回も途中下車でき、また有効日数も増えます。
また距離が長くなるほど、1日あたりの料金が安くなり、下手すれば青春18きっぷよりも安くなります。
さらに青春18きっぷと異なり1年中使えるどころか、特急券を買えば新幹線や特急列車に乗ることも可能です。
(ただし青春18きっぷは経路重複はできますが、片道切符は経路重複はできません。)
こうしたきっぷは自動券売機では買えないので、「みどりの窓口」などで発注して購入します。このノウハウを最大限活かした切符が、最長片道切符ということになります 。

武雄温泉駅(たけおおんせんえき、佐賀県武雄市)は、現在は西九州新幹線の駅となりました。
武雄温泉駅から斜め左下(南西)にまっすぐ進むので、西九州新幹線は長崎へ行く場合はかなりのショートカットになります。

武雄温泉駅(佐賀県武雄市)

武雄温泉(たけおおんせん)は、神功皇后(じんぐうこうごう)が湯浴み(ゆあみ)をした場所と知られます。
神功皇后(じんぐうこうごう)は、日本神話において朝鮮半島への遠征に向かう途中、お腹に後の15代天皇となる応神天皇(おうじんてんのう)を宿しており、既に臨月(妊娠10ヶ月)を迎えていましたが、お腹を石で冷やすことによって出産を遅らせ、朝鮮半島から戻ってきて妊娠15ヶ月で出産したとされています。この逸話から、神功皇后は「安産の神様」として、現代でも安産祈願の対象とされています。湯浴み(ゆあみ)とは、まだ医学が発展していなかった時代に、温泉につかることによって病気や怪我を治していた行為・風習です。
神功皇后を祀る主な神社の例として、福岡の筥崎宮(はこざきぐう)、神奈川県鎌倉市(かまくらし)の鶴岡八幡宮(つるがおかはちまんぐう)などがあります。
また、武雄温泉の楼門(ろうもん)は、佐賀県唐津市出身の明治時代の建築家・辰野金吾(たつの きんご)さんの設計で知られます。東京駅の特徴的なレンガ造りも、辰野金吾さんの設計です。

武雄温泉駅をさらに西へ進めると、有田焼(ありたやき)で有名な有田町の駅・有田駅(ありたえき、佐賀県西松浦郡有田町)へ到着します。

有田焼(ありたやき)は、いわゆる陶磁器(とうじき)です。
この地域の伝統工芸品であり、作るには相当たる技術や熟練を要します。
陶磁器は、その作成のために近隣に原料となる「陶石(とうせき)」ものがたくさん埋まっている必要があります。
有田町近辺では、このような陶石がたくさん採れたため、有田焼の製造のための大きなアドバンテージとなったことでしょう。
昔は現代のよう遠方から原材料を取り寄せて生産、ということが難しかったでしょうから、原材料が近辺で採れることはメリットが大きかったことでしょう。

有田駅をさらに西へ進めると、やがて佐世保方面への分岐駅である早岐駅(はいきえき、長崎県佐世保市)へ到着します。

早岐駅(長崎県佐世保市)

早岐駅(はいきえき)は、佐世保方面へのスイッチバックを行う駅があります。スイッチバックとは、一旦先頭から突っ込んで、バックするように進む線路の形状のことです。「人」の字のような形の線路をしていることが特徴です。
早岐駅はなぜこのようなスイッチバック方式なのかというと、佐世保方面への道(現在の佐世保線)は後からできた路線だからです。
当初の長崎本線は佐賀→江北(肥前山口)→早岐→大村→諫早というルートでした
しかし、江北(肥前山口)から南へ、有明海(ありあけかい)沿いの肥前七浦(ひぜんななうら)経由のルートができ、こちらが(現在の)長崎本線となりました
それに従って、江北~早岐~佐世保間は「佐世保線」、早岐~大村~諫早間は「大村線」という扱いと改められたのです。

歌詞はおそらく「めぐる車輪の早さ」と「早岐(はいき、または「はやき」)」という地名を掛けている、「掛詞(かけことば)」になっているものと思われます。掛詞(かけことば)とは、昔の日本の詩などで使われてきた、言葉遊び・洒落の一種です。

早岐駅前には、給水塔(きゅうすいとう)というものがあります。
この給水塔は、かつて蒸気機関車だった時に、機関車が動くために必要な水を供給していたものです。

早岐駅前の給水塔

蒸気機関車は、石炭を燃やして水を沸騰させ、その時に生じる蒸気によって走ります。
石炭を燃やすため、明治時代にはたくさんの石炭(その他、炭鉱や石炭を運ぶ貨物列車)が重要だったことはこれまで何度も述べた通りだったわけですが、水も必要だったので、蒸気機関車に給水する(水を入れる)ための設備が給水塔だったのです。

給水塔前にある案内板(早岐駅前)
案内板の一部分を拡大。最後の方の段落に、鉄道唱歌歌詞についての解説がある(早岐駅前)

画像の早岐駅前の給水塔前の案内板には、よくよく読んでみたら、鉄道唱歌の歌詞めぐる車輪の早岐より 右にわかるる佐世保道」に関する説明があります!私(筆者)が案内板のこの記述に気付いた時、とても感動しました!!

さて、次回は歌詞の通りに線路を一旦右方向へ、佐世保方面へ向かいます!

注意
この記事は、「小学生の頃の私(筆者)に教える」というイメージで書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
もし内容の誤りに気付かれた方は、「お前は全然知識ないだろ!勉強不足だ!」みたいなマウントを取るような書き方ではなく、「~の部分が誤っているので、正しくは~ですよ」と優しい口調で誤りをコメント欄などでご指摘頂ければ嬉しく思います。再度こちらでも勉強し直し、また調べ直し、内容を修正致します。何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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