まずは原文から!
春はこゝより汽車(きしゃ)おりて
影もおぼろの月が瀬(つきがせ)に
梅みる人の数おほし
さらに読みやすく!
春はここより汽車(きしゃ)おりて
影もおぼろの月が瀬(つきがせ)に
梅みる人の数おほし
さあ、歌ってみよう!
♪はるはここよりー きしゃおりて
♪かーげもおぼろの つきがせにー
♪うめみるひとのー かずおおしー
木津駅→加茂駅
(関西本線)
加茂駅→笠置駅→(木津川橋りょう)→大河原駅→月ヶ瀬口→伊賀上野駅→佐那具駅→柘植駅→(鈴鹿峠のトンネル)→関駅→亀山駅→四日市駅→桑名駅→長島駅(→至・名古屋駅)
※鉄道唱歌に関連する主要駅のみ表記
三重県に入り、伊賀上野駅(伊賀市)に到着
大河原駅(おおかわらえき、京都府相楽郡南山城村)を過ぎて
- 月ケ瀬口駅(つきがせぐちえき、京都府相楽郡南山城村)
を過ぎると県境を過ぎ、伊賀国(いがのくに)・三重県に入ります。
やがて、伊賀上野駅(いがうえのえき、三重県伊賀市)に到着します。
伊賀上野駅(三重県伊賀市)
伊賀地方の中心都市・伊賀市
三重県伊賀市(いがし)は伊賀地方(いがちほう)中心として発展してきた街であり、2004年までは「上野市(うえのし)」と呼ばれていました。
東京の上野(うえの)と区別するために、伊賀上野(いがうえの)とも呼ばれます。
伊賀市のある盆地を、上野盆地(うえのぼんち)といいます。
「伊賀国(いがのくに)」とは?
伊賀国(いがのくに)とは、かつての三重県西部のことをいいます。
三重県は、大きく分けて主に以下の国からなります。
- 伊賀国
- 伊勢国(いせのくに):かつての三重県東部のこと。
- 志摩国(しまのくに):三重県南東部
「国(くに)」とは、奈良時代の律令制における、日本のエリア分けのことで、現代の都道府県に該当します。
ちなみに「藩(はん)」は、江戸時代におけるエリア分けです。
築城の名手・藤堂高虎
なお、かつて江戸時代の伊賀では、藤堂高虎(とうどう たかとら)という築城の名手が支配していました。
藤堂高虎はとてもクオリティの高いお城を作るため、江戸幕府からも非常によく評価されていました。
東京の「上野」は、「伊賀上野」「藤堂高虎」が由来だった!
その藤堂高虎が東京都台東区(現在の上野)に移り住んだことから、現在の上野公園・寛永寺(かんえいじ)が存在する一帯は「上野」となったそうです。
つまり、元々の藤堂高虎の拠点が伊賀の上野で、その移り住んだ先が江戸(の上野の地域)だったので、東京側も上野という名前になったそうです。
東京の「上野」は、この「伊賀上野」が由来だったのです!
先述の通り、藤堂高虎が、東京の上野に移り住んだからですね。
「大和街道」の途中にある、伊賀市
伊賀市は、大和街道(やまとかいどう)を通って奈良~伊勢間を(徒歩または馬で)移動する人々にとって、重要な宿泊・途中休憩地点になっていたと思われます。
一度に長距離を移動するのはきついですから、その中間地点にこうした盆地があり、なおかつ休憩したり宿泊したりできるのは、旅人たちにとって伊賀上野のこの町の存在はとてもありがたかったことと思われます。
松尾芭蕉の出身地・伊賀市
また伊賀市は、松尾芭蕉(まつおばしょう)の出身地でもあります。
松尾芭蕉とは言うまでもなく、江戸時代に「おくのほそ道」の旅にて東北地方を探検・冒険したあの人です。
また、琵琶湖あたりを巡る「野ざらし紀行」という作品も書いています。
伊賀上野城
伊賀上野城(いがうえのじょう)は、先ほど述べた藤堂高虎(とうどう たかとら)という人物が江戸時代に改修した城でもあります。
藤堂高虎(とうどう たかとら)は、あの徳川家康が認めた(高く評価した)築城の名手といわれ、高度な技術によってお城を造ることで知られていました。
そのお城には、江戸城をはじめ和歌山城、そして後に解説する津城(つじょう。三重県津市)などがあります。
幕府から「城の改修を認められた」城
伊賀上野城は元々は藤堂高虎が改修するずっと以前からありましたが、徳川家康の意向により改修されたのでした。
江戸時代には城の改修(つまりバージョンアップ、アップグレード)は、無駄に軍事力を付けられると幕府にとって脅威だったのでした。
そのため、無断で行うことは厳禁であり、必ず幕府の許可が必要でした。
これは江戸時代の武士に向けた法律ともいえる「武家諸法度(ぶけしょはっと)」において、無断での新規の城の建築や城の改修は禁止されていたからです。
逆に言えば、城の改修が認められた藩は、幕府に反逆を行う心配のない、信頼できる藩だとみなされていたといえます。
藤堂高虎は徳川家康から信頼を得ていましたから、とても素晴らしいお城を造っていたのだと推察できます。

月ヶ瀬とは?次回詳しく解説
月ヶ瀬(つきがせ)とは、伊賀市のやや南西にある、梅の林(梅林)として有名です。
春にはたくさんの梅の花が咲き並び、とても美しい景色となります。
詳しくは、次回解説します。
歌詞「影もおぼろの月(月ヶ瀬)」
「おぼろ」とは、月に雲がかかってぼんやりしているような様子をいいます。
なので、歌詞は
と、
という地名を掛けているものと思われます。
これを「掛詞(かけことば)」といい、古くから日本の歌・詩ではよく用いられてきた洒落・言葉遊びの一つです。
鉄道唱歌では、この掛詞が非常によく登場します。
次は、月ヶ瀬の解説をします!
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