山陰鉄道唱歌 第12番 余部鉄橋を渡る 山と山をつなぐ、高さ40mの巨大な橋

まずは原文から!

山より山にかけ渡す
み空(そら)の虹(にじ)か棧(かけはし)か
百有餘尺(ひゃくゆうよしゃく)の中空(なかぞら)に
雲(くも)をつらぬく鐵(てつ)の橋

さらに読みやすく!

山より山にかけ渡す
み空(そら)の虹(にじ)か桟(かけはし)か
百有余尺(ひゃくゆうよしゃく)の中空(なかぞら)に
雲(くも)をつらぬく鉄の橋

さあ、歌ってみよう!

♪やまよりやーまに かけわたすー
♪みそらのにじかー かけはしかー
♪ひゃくゆうよしゃくの なかぞらに
♪くもをつらぬく てつのはし

(山陰本線)
城崎温泉駅→香住駅→餘部駅→浜坂駅→居組駅→岩美駅→鳥取駅

※鉄道唱歌に関連する主要駅のみ表記

余部橋梁を渡り、鳥取方面へ

列車は既に、兵庫県日本海側を走っており、また鳥取方面へ向かっている最中となります。

餘部駅(兵庫県美方郡香美町)

今回は、その日本海側にかかる巨大な鉄橋である、「余部鉄橋(あまるべてっきょう)」の話題となります。

山と山を架け渡す、天空の橋

余部鉄橋(あまるべてっきょう)は、高さ40mもの場所を走る、文字通り「山と山を掛け渡す橋」になります。

余部鉄橋は、1912年の開通から2010年までの間は、巨大な赤色のトレッスル橋(後述)でした。
しかし、安全性への配慮から、2010年以降は現在のコンクリート製の橋へとリニューアルされました。

現在は鉄の橋ではないので、伝統的な「余部鉄橋」という名前は現在では正確ではなく、「余部橋梁(きょうりょう)」という名前が正確かもしれません。

まるで雲の上を通るような、あるいは虹の上を渡るような、高所からの列車の眺めは壮観です!!車窓からは、眼下にダイナミックな視界が広がります。

高さ40mにも及ぶ、空にかかる橋

余部橋梁からの眺め(山陰本線)

高さ約40メートルは、「ウルトラマン」の身長とほぼ同じ高さになります。

1尺は約0.3mですから、歌詞にある「百有余尺(ひゃくゆうよしゃく)」がだいたい140尺くらい(?)と仮定すると、

140×0.3=42m

で、だいたい余部鉄橋と同じほどの高さになります。

余部鉄橋(2010年まで)は、「トレッスル橋」と呼ばれる仕組みの橋になります。
トレッスル橋とは、簡単にいうと「ハ」の字の橋げたが連続する橋のことです。つまり、下へいくほど広がっていく橋げたをいいます。
トレッスル橋は明治時代には(アメリカでも)よく見られた橋げた構造になります。

実際、2010年までの余部鉄橋は赤いトレッスル構造橋げたがとても印象的でした。2010年以降は先述の通り、コンクリートの橋になっています。

ちなみに余談ですが、似た言葉に「トラス橋」というものがあります。
トラス橋とは、△▽△のように鉄の三角形が連続する橋のことをいい、同じく明治時代に造られた橋によく見られた構造になります。
トラス橋は、丈夫に橋を作れるメリットがありますが、その反面、構造が複雑でコストがかかるというデメリットもあります。費用や手間をかけてでも丈夫な橋を造りたいときは、トラス橋が用いられたようです。

過去の列車落下事故・・・現在に活きる、数々の安全対策

話がずれましたが、余部鉄橋の話題に戻ります。

余部鉄橋は、残念ながら1986年12月に列車の落下事故があり、車掌・住民合わせて6名が亡くなられました。
その原因は、風速33mの「突風」が吹いたことによるものです。

風速は、15mでもかなり強い風です。
15mでは向かい風に向かってまとも歩くのは困難なレベルです。
風速20mを越えたら台風レベル、30mを越えたら竜巻レベルであり、車や小屋などは吹っ飛ばします。
余部鉄橋を襲い列車を吹っ飛ばした風速33mという風が、いかに強いものだったかわかるでしょう。
(ただ基本的に、日本海側は風が強い。)

このとき、2つの風設計が故障しており、誤って「風速20m」と実際よりも低く出していたことや、職員らの判断ミス・安全確認を怠るなどのことが原因で事故が起こったようです。

この事故を契機として、風速20mを越えた場合には運転を見合わせる、と言う具合に規制が強化されました。これはかなり厳しい規制です。
しかしこの規制強化により、運休が増えることになり(年間300回もの運休が起きた)、列車の定時性が失われることとなりました(つまり、乗客が乗りたい時間に「運休」で乗れない・着きたい時間に着けない。結果、誰も列車に乗らなくなる、ということが起こる)。
日本海側は基本的に風が強いですから、「ちょっと風が強いというだけで運休」ということが多くなったわけですね。

他の列車落下事故の例:羽越本線脱線事故について

同じような事故として、2005年12月に秋田県酒田市(さかたし)の近くで起きた、羽越本線(うえつほんせん)脱線事故が挙げられます。
この時も、秋田県酒田市を中心に「横殴りの雨」が降るなどのかつてない暴風雨・荒天でありました。
列車の運転士は当時わずか29歳、すごく責任感の強い方でした。
気象台やJR側での事前の風速は20mを記録しており、数値上は問題はありませんでしたが運転士は(列車が遅延してでも)自らの判断で速度を落として運転するなど、運転士に何らミスもありませんでした。

しかし実際に起きた風速40mにも及ぶ突風は「竜巻」のような「局所的」なものであり、いくら気象台やJR側で風速20mと計測しても、限定的な場所のみで起こる「竜巻」「突風」の風速など測れるはずもありませんでした。

結果、風速40mの突風が吹き、列車が橋から落下する事故となりました。
これはどんなベテラン運転士でも防ぎきれなかった事故とされています。

以降、2017年より突風の予知システム「ドップラーレーダー」が開発実用化され、また、AIなどを駆使した突風予知システムなどが発展してきているため、上記に挙げたような事故は起こらなくなってきているといっていいでしょう。
安心して乗りましょう。

このように、鉄道の歴史は、ある意味事故とその対策の歴史でもありました。
過去の人々の犠牲のもとに、現在の我々の安全が確保されていることを再認識したいものですね。

余部橋梁・餘部駅からの景色はとても最高

暗いことばかり書いて申し訳ありませんが、橋を渡った山際にある餘部駅(あまるべえき、兵庫県美方郡香美町)からはダイナミックな景色が見下ろせます。

餘部駅(兵庫県美方郡香美町)

餘部駅(あまるべえき)は、「余」の表記が旧字体であることに注意しましょう。あと兵庫県は南北に長く、瀬戸内海と日本海の両方に接しています。まだ鳥取県には入っていないことにも注意しましょう。鳥取県へは、あと少しになります。

餘部駅を出ると、次はさらに浜坂・鳥取方面へ向かってゆきます!

注意
この記事は、「小学生の頃の私(筆者)に教える」というイメージで書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
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