冠着山(長野県)の観光・歴史について、旅行・地理・歴史に詳しくない方にもわかりやすく解説してゆきます!

冠着山のふもと・姨捨駅からの景色(長野県千曲市)
篠ノ井線の旅シリーズ
今回は、長野県の篠ノ井線の旅のうち、
- 聖高原(ひじりこうげん)
- 姨捨山(おばすてやま)の話になります。前回は聖高原の話題でしたが、今回は冠着山の旅になります!
聖高原については、前回の記事をご覧ください。
姨捨駅へ
前回で聖高原駅の観光を終え、姨捨駅方面へと向かってゆきます。

冠着駅(長野県東筑摩郡筑北村)

篠ノ井線のトンネルを進む(長野県)
姨捨駅(千曲市)に到着
やがて、姨捨駅(おばすてえき、長野県千曲市)に到着します。

姨捨駅(長野県千曲市)

姨捨駅からの景色(長野県千曲市)
姨捨駅からは、とても広い善光寺平のこと長野盆地の景色が眺められます。
今回のメインである冠着山は、そんな長野盆地(善光寺平)の南西端に位置しており、また姨捨駅の裏側に存在しています。
善光寺平(ぜんこうじだいら)については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

冠着山のふもとに広がる、「姨捨の棚田」
姨捨駅の下には、「姨捨の棚田」という、山の斜面に沿って広がる、格子状の田んぼが広がります。
姨捨の棚田には、「田毎の月」という景色が広がることが知られています。

冠着山をはるか遠くに眺める(篠ノ井線の車窓より)(長野県)
田毎の月とは、姨捨山、別名・冠着山の麓にある、格子状にたくさん存在している田んぼごとに映る月のことを言います。

姨捨の棚田(長野県千曲市)
「姨捨の棚田」「田毎の月」について詳しくは、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

冠着山(かむりきやま)

冠着山/姨捨山(長野県千曲市)
冠着山(かむりきやま)は、
- 長野県千曲市(ちくまし)
- 長野県東筑摩郡(ひがしちくまぐん)筑北村(ちくほくむら)
にそれぞれまたがる、標高1,252mの山です。
冠着山にはいくつかの呼び名があり、
- 姨捨山(おばすてやま)
- 更科山(さらしなやま)
などの呼び名もあります。

冠着山のふもと・姨捨駅(長野県千曲市)
「フォッサマグナ」と、冠着山の関係
冠着山は、いわゆるフォッサマグナに位置します。
いやいや、いきなりフォッサマグナとか言われても、何だよそれ・・・って感じですよね(^^;
以下、順を追って解説してゆきます!
かつて冠着山の近くに存在した「フォッサマグナ」とは?
フォッサマグナとは、
- その大昔、日本列島がプレートによって東西に引っ張られ、
- 日本列島は真っ二つにちぎれてしまい、
- そのときに出来た、とても大きな海のこと
です。
もちろん、今は陸地になっているため、フォッサマグナは存在しません。
なぜ「日本列島が真っ二つになったの!?」とか、色々疑問はあるかもしれませんが、ここでは残念ながらスペース上書ききれません。
フォッサマグナについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。

フォッサマグナのなりたち
改めて、フォッサマグナとは、
- 元々は海の底だったものが、
- 長年をかけて、風によって土砂が運ばれてきて、
- その土砂などがどんどん積み上がって、陸地になった
ものです。
先述の通り、もちろん現代ではフォッサマグナは存在せず、完全な陸地になっています。
フォッサマグナと「糸魚川静岡構造線」は、似ていて異なる
また、フォッサマグナはいわゆる糸魚川静岡構造線(糸静線)とも似ていてよく勘違いされますが、厳密には異なるものです。
糸魚川静岡構造線についてくは、以下の記事をご覧ください。

ここでは、
ということを抑えておいてもらえれば、OKです!
冠着山は、どのように誕生したのか?
冠着山は、おおむね以下のようにして出来てゆきました。
- 第四紀(約170万年前~現在)という、日本の地質学においては比較的新しい時代になって、
- 火山で吹き出したときの岩たちが積み上がってゆき、
- その積み上がった部分が、雨や風で侵食されてゆき、
- 岩がキレイな形に削りとられ、
- そこからさらに積み上がって「ドーム」のような山が出来た、
という、いわゆる「溶岩ドーム」になります。
※地質時代の例(以下、これらの用語を使うのでご注意願います!)
第四紀:約170万年前~現在
第三紀:約6,500万年前~約170万年前
白亜紀:約1億4,500万年前~約6,600万年前まで
ジュラ紀:約2億1400万年前~約1億4500万年前
冥王代(めいおうだい):地球誕生(46億年前)~40億年前
地層は、下にいくほど古くなる
一般的に、地層は下に行くほど古い時代のものになります。
例えば、第三期の地層の上には、より新しい第四紀の地層が積み重なっている、というようなイメージです。
これは「地層累重の法則」と呼ばれます。
これは、地層が堆積していくときの順序を考えるときに、とても重要な法則になります。
新しい時代になるにつれ、徐々に土砂が積もりたまっていくことになります。
それによって、より新しい地層が上に積み重なってゆくわけです。
冠着山は、元々は「火山」だった!
現在の冠着山は、大昔は「火山」でした。
もちろん今は火山ではなく、あくまで「元火山」ということになります。
500万年前には、既に火山の活動を停止してしまった
なぜ「元火山」なのかというと、火山活動が停止してから、既にもう500万年以上も経過しているためです(第三期の頃)。
現在の冠着山の形は、長い年月をかけて、雨や風によって削られてしまってできたものとなっています。
そのため、約500万年前の噴火していたときの姿では、もはやなくなっているといいます。
高温のマグマが、地上で急激に冷やされ、巨大な岩のカタマリ(山)に
約600万年前(第四紀)に、長野県のこの地域である
- 更級(さらしな)
の奥深い場所において、地下からマグマが噴出してしまったのでした。
地面が怒って、トバーッとマグマが地上に噴出してきたようなイメージです。
これこそがまさに、冠着山が産声を上げる、誕生シーンになります。
「マグマ」とは?
ここでマグマとは、いわゆるドロドロの液体のようになった岩石のことです。
つまり、岩石が非常に高い温度で溶かされて、ドロドロになったようなものです。
これが地上に出てくると、常温で冷やされて(融点を下回って)固くなり、「溶岩」となります。
つまり、マグマを水にたとえると、
- 岩:氷
- マグマ:水
というようなものです。

(休憩用画像)冠着山のふもと・姨捨駅からの景色です!(長野県)文字ばっかりだと、疲れちゃいますよね、、
なぜマグマは、ドロドロの液体になっていのか?
ではなぜ、ドロドロの液体なのか。
それは、火山の地下では1,000度以上の高温となっており、融点を余裕で上回っているからです。
どんなに固い鋼鉄や金属だって、もし数千度の高温で熱してしまえば、ドロドロの液体になるのはわかると思います。
あれと同じ原理ですね。
しかし地面の上に噴出してくると、気温が0度~40度くらいです。
そうなると、急激に冷やされて、融点を下回って固まります。
これがいわゆる、「安山岩」ということになります。
いわゆる「火山大国」である日本では、この「安山岩」というパターンが非常に多いのです。
「安山岩」からできている冠着山 元々はマグマの塊だった

姨捨山・遠景(篠ノ井線の車窓より)(長野県)
冠着山は、元々は「火山の噴火」による「安山岩」からできています。
安山岩とは?ドロドロ高熱の岩が、冷やされて固まった岩
安山岩は、
- 火山から吹き出る灼熱のマグマが、
- 空気にふれて、せいぜい15~30℃程度の常温にさらされ、
- 急激に冷えされることで、固まってできた
という、火山岩の一種です。
なぜ冷えると固まるのかというと、融点を下回って固体になるからです。
安山岩は先述の通り、日本では最も多く見られる火山岩になります。
ドロドロ液体が冷えて固まり、富士山のような「溶岩ドーム」に
いわゆる元・火山であった冠着山は、約550万年前~約500万年前(第四紀の頃)になると、噴火のパワーも徐々に弱くなってゆきます。
つまり、だんだんと火山というには弱い感じになってくるわけです。
すると、灼熱にめちゃくちゃ熱かったマグマも、約20度くらいの常温にさらされてくるため、やがて冷えて固まっていきます。
つまり融点を下回り、固体になっていくわけです。
こうして火山岩(溶岩)となるわけです。
それから、
- こうして出来た溶岩が溜まりに溜まって、
- 空に高く積み上がった、巨大な溶岩のカタマリ(冠着山の原型)は、
- 長年をかけて、雨や風などによって侵食されてゆき、
- まるで富士山やドームのような形になった
ゆきました。
つまり、形がどんどん削られてスリムになってゆき、まるで富士山のような形になってゆきます。
富士山というより、ドームのような形ですね。
富士山のでき方とは、ちょっと違う
つまり、冠着山の作られ方は、富士山とは全く違うわけです。
富士山の場合は、
- 火山の噴火によって積み重なってゆき、
- どんどん高さが増していった
という、いわゆる「成層火山(せいそうかざん)」になります。

富士山(静岡県)
「冠着山」の名前の由来
ちなみに、冠着山の由来には、さまざまな説あります。
なんかカンムリを着けたような山だから、冠着山なのかな?とも思ったのですが、定かではなく、諸説あるようです。
手力男命という神様が、天照大神が外に出てくるように、わざと扉を開けた。
そして彼が九州の高天原(宮崎県あたり)から、天岩戸を信州・長野県の戸隠に運んでくる途中で、この地で一休みして、
冠を着け直したのだった。
と、日本神話により伝えられている事によります。
「手力男命」とは、いわゆる「古事記」などに代表される、日本神話に登場する神様です。
天岩戸といわれる岩に隠れた天照大神を、外に出てくるようにと、力強く引き出したという伝説で知られています。
「手力男」とは、「手の力がとても強い男」という意味になります。
その天岩戸を、九州の宮崎県から、長野県の戸隠まで運ぶ途中で、ここで冠を着直したわけですね。
これが「冠着」の由来というわけです。
天岩戸とは?
天岩戸とは、日本神話に登場する、岩でできた洞窟です。
これは、天照大神が隠れた場所とされています。
天照大神が岩に隠れた理由については、弟のスサノオが暴れて手におえなくなったためである、とされています。
高天原とは?
高天原(たかまがはら)とは、日本神話において、
- 神様たちがお住まいになっている場所
- 天の上にあるとされている国
のことです。
つまりいわゆる、神様たちが住んでいる「天の国」と思っていただければいいでしょう。
高天原を治めているトップの神様は、最高神である天照大神になります。
高天原からは、ニニギノミコトがこの世を治めるために、地上に興臨してきたのでした(いわゆる、日本神話の「天孫降臨」のエピソード)。
その場所というのが、宮崎県の高千穂であるとされています。
高千穂と「天孫降臨」の神話エピソードについては、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

戸隠とは?
ここでいう「戸隠」とは、長野県の北部、戸隠山のふもとに位置している地です。
戸隠山は、先述のタヂカラオノミコトが、天照大神が隠れた「岩戸」を持ってきた(投げ飛ばした、とも)ことで出来た山だとされています。
戸隠山については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

姨捨駅の観光など
姨捨駅にはスイッチバックなど、他にもさまざまな「みどころ」があります。
詳しくは、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

今回はここまでです。
お疲れ様でした!
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