聖高原(長野県)と長野県のリゾート開発方式である麻績方式について、旅行・地理・歴史に詳しくない方にもわかりやすく解説してゆきます!

冠着山のふもと・姨捨駅からの景色(長野県千曲市)
今回からは、2回に渡って長野県の篠ノ井線・
- 聖高原(ひじりこうげん)
- 冠着山(かむりきやま)
の話になります。
今回は「前編」で、次回は「冠着山」についての話題になります!
まずは、松本駅からスタート
今回の目的地である
- 聖高原駅(ひしりこうげんえき、長野県東筑摩郡麻績村)
- 姨捨駅(おばすてえき、長野県千曲市)
へは、まず松本駅からのスタートとなります。

松本駅(長野県松本市)
長野県松本市は、ご存じの通り国宝・松本城で有名です。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。

聖高原へ向けてスタート
松本駅を出ると、犀川に沿いながら、篠ノ井線で長野方面へと向かいます。

犀川の景色(篠ノ井線の車窓より)(長野県)
この沿線については、以下の各記事でも解説していますので、ご覧ください。

聖高原駅に到着
やがて、聖高原駅(ひじりこうげんえき、長野県東筑摩郡麻績村)に着きます。

聖高原駅(長野県東筑摩郡麻績村)
聖高原駅は、元々は麻績駅という名前でした。
それは、麻績村という自治体にある駅だから、ということになります。
しかしながら、「麻績」はとても読みにくい、いわゆる「難読駅名」となります。
そのため、
- より覚えやすい駅名
- 観光地「聖高原」の名前を冠した駅名
にしようということで、地元の要望・要請もあり、現代の「聖高原駅」に改称された、という経緯があります。
聖高原(ひじりこうげん)

聖高原駅(長野県東筑摩郡麻績村)
聖高原は、長野県東筑摩郡の麻績村に存在する高原・リゾート地になります。
この地域(聖高原のあたり)におけるリゾート開発において、かつて「麻績方式」という、長野県ならではの独特の手法が採用されたのでした。
長野県ならではのリゾート資金調達方法「麻績方式」
聖高原の開発のための、資金集めのための方式
聖高原(ひじりこうげん)のリゾート施設を開発してお金を儲けていくためには、そもそも「開発」をしていかなければなりません。
例えば、
- 別荘地
- スキー場
- ゴルフ場
- ホテル
- 旅館
- 生活必需品などを売るための店など
- 道路
- 土地を工事するための建設費用
- きれいな道路を工場するための、人件費など
などのために、たくさんのお金が必要になってくるわけです。
これらのお金をかけて、ようやくお客様に来てもらえる「リゾート地」が出来るというわけです。
聖高原のリゾート地開発のための資金調達には、「麻績方式(おみほうしき)」という、長野県ならではの独特の開発方法が用いられたのでした。
なぜ聖高原に、リゾート地が必要だったのか
ではなぜここまでお金をかけてまで、リゾート地を作る必要があったのか。
それは、農作物を干上がらせないための、ダム建設のための資金が必要だったからです。
地域にダムを作ったり、農地に水を提供し、町を発展させていくには、とにもかくにも「税収」が必要になってきます。
その税収を補うために、「麻績方式」が考え出されたといってもいいでしょう。
元々は同じ長野県の「菅平法式」からはじまった
今回メインで扱う「麻績方式」は、長野県上田市のやや北に存在する、菅平ダムというダムの建設資金集めのために使われた「菅平方式」と並ぶ方式です。
なぜ、ダムが必要だったのか?
なぜ、当時の長野県でダムが必要だったのかというと、人々の農業に使う水を確保するためでした。
ダムの建設のために、レジャー開発による収益によって、建設資金をしようとしたわけですね。
ダム開発資金集めのために、リゾート地を開発する必要があった
つまり、聖高原のリゾート開発は、
- ダムなどの公共インフラを、リゾート地開発することで、
- レジャーで遊びに来たお客様にお金を落としてもらい、
- その利益・収益から、固定資産税や事業税などを、自治体や長野県に対して納めてもらい、
- その税収をもとに、長野県の地元やに対する開発・発展をさせていこう
という目的によるものです。
- 固定資産税:建物などの「資産」を持っていると、それに対してかかってくる税金
- 事業税:事業の「売り上げ」「所得」などにかかってくる税金
夏でも涼しい高原地帯の多い、長野県ならではの出来る手法ですね。
「菅平方式(すがだいらほうしき)」とは
菅平方式とは、長野県上田市にある、「菅平ダム」の建設のときに用いられた手法です。
まずは、地元の人たちが元々持っていた土地を、県に対して無償で貸し出しをするわけです。
さらに長野県が、
- 「別荘保養地」
- 「リゾート地」
などとして、リゾート開発をしてゆきたい事業者に対して土地を「貸し出し」していくわけです。
(※「売る」わけではありません。)
法律的には、「地上権の譲渡」になります。
つまり、「この土地で好きなように建物を建てていいよ」という権利を付与してあげるわけです。
こうした「リゾート事業」によって得られた利益から、固定資産税や事業税という形で、自治体(村や長野県など)に対して納めてもらうわけです。
こうして得られた税収により、ダム等といった地域インフラなどの事業費に充てる、というものです。
麻績方式は、リゾート開発手法の先駆けともいわれています。
「菅平方式」がはじめられたきっかけは、農地の干ばつだった
かつて長野県の上田市・東御市の一帯では、水不足による干ばつ・農作物の不作が頻繁に発生していたのでした。
こうした干ばつ・不作防止のために、ダムを建設することになったのでした。
そのため、地元のお金持ちたちが持っていた土地を、長野県へと無料(タダ)で譲り渡したのでした。
リゾート地で得られた利益を、ダム建設費用に
長野県が、その(地元から無償で)譲り受けた土地を、別荘保養地(リゾート地)として、発展させていったのでした。
その無償譲渡された土地を、リゾート地を開発したいという事業者に対して分譲(※)していくわけです。
これによって、リゾート地として、お金を得ていくようになったのでした。
※分譲(ぶんじょう)とは、分割譲渡の略です。
つまり、土地を分割して、譲り渡すことを意味します。
その儲かった利益(から納められた税金)によって、
- ダム建設をしたり、
- 土地を良くしていくための、工事や建設事業
などを実施していったのでした。
さらに、そこから余った利益を、地元に分配・還元してゆき、地元の人々にも恩恵がもたされたのでした。
菅平方式の成果
「菅平方式」によって、上田市周辺の地域の観光地化・リゾート地化が、一気に進んでいったのでした。
その結果として、別荘・ロッジなどがどんどん建っていったのでした。
やがては多くの人々が観光やレジャーでやってくるようになり、地元にお金を落としてくれるようになったのでした。
長野県は標高が高く、夏でも涼しい土地が多いため、これは強みですね。
この「菅平方式」が成功したことにより、長野県の公営による高原・リゾート開発事業の、「モデル」「典型」となったのでした。
「麻績方式」も、これと同じような仕組みによるものになります。
1968年に完成した「菅平ダム」の成功
菅平ダムは、こうして1968年10月に完成したのでした。
菅平ダムは、近隣の神川という川を塞き止めて水を貯めてゆき、そこから水を取ってきて、周辺の農家などに水を供給していく、というわけです。
このようにして、長野県上田市周辺地域に存在する、約1,200ha(東京ドーム約250個分)にもおよぶ農地をうるおしているというわけです。
「上水道」「水力発電」にも役立っている、菅平ダムの役割
また、菅平ダムの水は
- 上水道
- 発電の利用(水力発電)
にも役立っています。
「上水道」とは?
ここでいう上水道とは、いわゆる「飲み水」「洗濯用水」に使われる水のことです。
対義語は、「下水」です。
水力発電とは?
また、水力発電とは、ダムから水が大量に落ちてくるときの位置エネルギーを利用して発電を行う方式です。
水力発電について詳しくは、以下の記事をご覧くださいね。

聖高原における、麻績方式(改めて解説)
麻績方式は、まとめると
- 麻績村(おみむら)が持っているリゾート地における、土地の所有権を、
- あくまで地上権(※)のみを提供することによって、
- 個人や法人のみなさんたちが使う「別荘用地」として提供する方式
のことです。
※地上権とは、文字通り、地上の土地を使っていいよ、という権利のことです。
民法265条によって「地上権の内容」が定められています。
つまり、他人の土地において「どうぞ建物を、自由に建てていいよ」といった、土地を使用するための権利を与えてあげる、という権利のことです。
つまり、土地を使いたいという人に対しては決して「譲る」・「売る」というわけではないということですね。
地上権といって、あくまで「土地を使う権利」を与えるのみ、ということになるわけです。
ここから、姨捨駅・冠着山方面へ

聖高原駅(長野県東筑摩郡麻績村)
聖高原の観光を終えたら、今度は姨捨駅に向けて移動します。
次回の記事をご覧くださいね!
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