安産祈願の歴史・神様や、人類の進化・恋愛といった壮大なテーマまで、旅行初心者向けに、わかりやすく解説してゆきます!
はじめに
今回は、安産祈願の基礎知識から、現代の意義まで、一緒に学んでいきましょう。
出産は、いつの時代も不安を伴う、命がけの大仕事です。
つまり、古来より人々が、いかにして安産を願ってきたのか。
その歴史や、神功皇后などの安産祈願に関連する神様について見ていくと、人類の進化のスゴさや知恵までもが見えてきます。
すなわち、不安を安心に変えるための、精神的な支えの重要性がわかるはずです。
安産祈願の基礎知識
赤ちゃんが無事に産まれてくることを願う「安産祈願」
安産祈願とは、
- 妊娠5ヶ月目に入った、最初の「戌の日」に、
- お寺や神社に参拝し、
- お腹の赤ちゃんが、元気に生まれてくるように願うための儀式
のことです。
妊娠5ヶ月(妊娠16週〜19週)は、妊娠中期にあたります。
安定期となり、お腹が少しずつ膨らむようになり、徐々に妊婦さんらしい体つきになってくるのが特徴です。
戌の日:いわゆる十二支の11番目である「戌」にあたる日であり、12日に一回、この日が訪れます。
この「戌の日」は、多産でお産が軽いことから安産の象徴とされる犬にあやかり、妊婦と赤ちゃんが無事に出産できるよう、安産を願うわけです。
また、多くの人が、この時期から腹帯を巻き始めます。
腹帯:妊娠中に大きくなるお腹の重みを支え、腰への負担を軽減する役割があります。
また、外部からのお腹の冷えや、外部からの衝撃からお腹の赤ちゃんを守るためにも使用されます。
すなわち、安産を願う、日本の伝統的な風習であるというわけですね!💗
安産祈願は、何のためにするのか?
次に、安産祈願の目的についてみてゆきましょう。
- 赤ちゃんが何事もなく、無事に生まれてくること
- お母さんの身体も健康であること
を、それぞれ神様や仏様に祈るために行います。
昔から、出産は命がけでした。
したがって、不安を乗り越え、安心感を得るための精神的な支えでもあります。
つまり、それだけ大切な行事なのですね!
安産祈願では、何をする?
次に安産祈願では、具体的に何をするのか。
それは、妊婦さんとご家族が、神社やお寺に行き、ご祈祷を受けることになります。
儀式の時間は、30分〜1時間程度のことが多いですよ。
つまり、神聖な雰囲気の中で、安産を願うというわけです。
安産祈願の現代的な意味
現代でも安産祈願に行くのはなぜ?
現代では、医療が進歩しています。
しかし、それでも安産祈願に行くのは、
という理由が大きいといえます。
出産は、やはり命がけの大仕事です。
すなわち、科学的な根拠よりも、神様や仏様に対して祈ることで、精神的な安心感を得るという、心理的な効果が大きいと言えるでしょう。
つまり、夫や家族との絆を深め、また前向きな気持ちで出産に臨むための、大切な儀式というわけですね!💗
昔の出産は、危険だった?死ぬ赤ちゃんも多かった?
現代に比べると、昔の出産は非常に危険なものでした。
昔は衛生環境が悪く(つまり、清潔ではなく汚い)、その上で医療技術も未発達だったのでした。
そのため、難産になると母子ともに、命を落とすというリスクが高かったのです。
また、新生児や乳幼児の死亡率も、現在よりもはるかに高かったとされています。
したがって、昔の人々が神様や仏様に対して、必死に安産を祈ったことは、当然のことだったと言えますね。
安産祈願の神様は?
そして、安産にご利益がある神様は、いわゆる子授けや育児に関わる神様です。
日本の神道における代表的な神様には、女性の神様である「木花開耶姫命」などが存在すします。
また、仏教においては、
- 「子安観音」
- 「鬼子母神」
などの神様が有名です。
木花開耶姫命は、日本神話に登場する、美しい女神です。
子安観音:安産・子育て・子授けにご利益があるとされる観世音菩薩のことです。
例えば、全国各地に存在する「子安観音寺」という寺院の御本尊や、各地で崇拝される観音さまを指すことがあります。
鬼子母神(または、きしもじん)は、インド由来の女神です。
もともとは他人の子供を食べていた悪鬼でしたが、お釈迦様の教えによって改心し、現在では安産・子育ての守り神として広く信仰されています。
すなわち、安産を見守ってくださるという、心強い存在がたくさんいらっしゃるわけですね💗
安産祈願にご利益ある神社・お寺は?
そして、安産祈願にご利益のある神社・お寺は日本全国にありますが、特に有名なのは、
- 福岡県・久留米市の「水天宮」
- 奈良県奈良市の帯解寺
- 宮崎県・美里町の山神社
- 埼玉県さいたま市の調神社
などです。
地方にも、地域に根ざした有名な神社やお寺が、たくさんあります。
つまり、お住まいの地域や、旅行を兼ねて選ぶのも素敵ですね!
久留米の水天宮について
久留米水天宮は、福岡県久留米市に存在する、全国各地にも存在する水天宮の全国総本宮です。
御祭神は、安徳天皇など「水」にまつわる神様が多く祀られています。
総本宮:全国各地に存在する同じ名前の神社やお寺の大元となる場所のことです。
特に安産・子授け・子育てについて、ご利益が篤いことで有名です。
鈴の緒の布を安産のお守りとする、独特の慣習も魅力的ですよ!
久留米・水天宮については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

奈良県の帯解寺について
奈良県奈良市に存在する帯解寺は、日本最古の安産祈願所と言われる、由緒あるお寺です。
その歴史は、かつて文徳天皇の皇后が、子宝に恵まれなくて困っていたときに、帯解寺でお祈り(祈願)し、無事出産できたことが起源とされています。
文徳天皇(在位850年〜858年):平安時代前期の第55代天皇です。
帯解寺におけるご本尊は、腹帯を巻いた珍しい姿の「帯解子安地蔵菩薩」になります。
御本尊:そのお寺などにおいて、最も重要な(信仰の)対象として祀られる仏像などのことです。
また、帯解寺はかつて皇室にも腹帯を献納したことがあるなど、格式の高いお寺なわけですね。
帯解寺については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

宮城県・小牛田駅近くの山神社について
宮城県遠田郡美里町にある山神社は、「小牛田のやまの神さま」として親しまれている神社です。
宮城県・美里町:仙台市から約40キロメートルの距離にある町です。
東北本線・陸羽東線・石巻線がそれぞれ交わるという鉄道の結節点であり、交通の便利が良い町です。
東北本線・小牛田駅からも近く、アクセスが良いのが嬉しいポイントです。
山神社については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

安産・子授けこさずの神様である木花之佐久夜毘売命が祀られています。
木花咲耶姫命:日本神話に登場する女神です。
絶世の美女とされながらも、夫の疑いを晴らすために火中で出産するという強い意志と母の愛を持つ、気の強い女神でもあります。
すなわち、ここでは「神枕」という、安産を願う特殊なお守りが授与されるのが特徴的ですよ!
安産にご利益のある神様・詳細
神功皇后は、出産にご利益ある?
また、日本神話に登場し、また日本各地の神社において祀られている神功皇后も、安産の神様として非常に強いご利益があるとされています。
神功皇后:『日本書紀』や『古事記』に登場する伝説的な(実在したかどうかもわからない)、神話の中の人物です。
第14代・仲哀天皇の皇后であり、第15代・応神天皇の母とされています。
神功皇后は、なんとお腹に赤ちゃんがいる状態で、大陸への出兵に臨みました。
そして、日本への帰国後に無事応神天皇を出産したという伝説があります。
すなわち、お腹の赤ちゃんを身につけたまま、なんと妊娠15ヶ月まで長期間活動し、出産をコントロールしたとのことです。
妊娠期間は、「十月十日」という言葉があるように、約10か月、約40週(280日)とされています。
それらの超人的な逸話から、安産や育児の守り神とされているのですね。
木花咲耶姫が出産にご利益あるのはなぜ?
木花咲耶姫命は、「火中出産」という驚きの逸話から、安産の神様として信仰されています。
火中出産とは、文字通り、火をつけた小屋の中で出産することです。
夫のニニギノミコトに浮気を疑われたとき、自ら産屋に火を放ち、その中で無事に出産しました。
ニニギノミコト:日本神話に登場する神です。
天照大御神の孫にあたる、日本神話における天孫降臨の物語の主人公です。
神々が暮らす天空の世界・高天原から地上に降りて、日向(宮崎県)の高千穂峰に降臨したとされています。
ニニギノミコトの天孫降臨については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

話をもとに戻します。
このエピソードは、燃える炎の中でも無事に赤ちゃんを産んだという、まさに「火のようにスムーズなお産」を象徴しています。
つまり、非常に軽く、安全にお産を終えるご利益があるとされているわけですよ!
安産の象徴と、昔の出産事情
犬と安産は、関係ある?
犬は、古くから安産の象徴として、非常に深い関係があります。
犬は一度に、たくさんの子犬を産みます。
しかも、お産が比較的「軽い」とされています。
このことから、犬にあやかって、妊婦さんが「多産」で「安産」であることを願うようになりました。
したがって、このことが妊娠5ヶ月目の「戌の日」に安産祈願に行く風習が生まれたのですね。
うさぎと安産は、関係ある?

安産祈願というよりは、むしろ「子宝」にご利益のある「うさぎ」(写真は広島県・大久野島)
また、よく「子宝祈願」のご利益で知られるうさぎは、直接的な安産祈願の象徴としては、犬ほど一般的ではありません。
しかし、うさぎが安産祈願と関係があると捉えられることもあります。
うさぎも犬と同様に、一度にたくさんの子を産む「多産」の動物です。
すなわち、子孫繁栄の象徴として、子宝や豊穣にご利益がある神社やお寺は存在します。
しかし、安産祈願で最も主流なのは、やはり「戌」の方です。
すなわち、うさぎは「安産」よりも「子授け(子宝祈願)」の象徴とされることが多いようですよ!
うさぎの楽園・大久野島(広島県)については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

動物の多産性と、神社の関係
うさぎや犬が、たくさんの子作りをするのはなぜ?
犬やうさぎが多産であるのは、彼らが自然界では、「獲物」であること、すなわち食べられる側の動物だったからです。
そのため、たくさん子を産むことで、たもえ子の多くが
捕食
されてしまっても、種を絶やさないようにしています。
彼らは妊娠期間が短く、一度の出産で多くの子を産むことができます。
したがって、この「種の保存」のための戦略が、結果として安産の象徴となったのですね。
埼玉県さいたま市・浦和の調神社
調神社にはうさぎがたくさんいるけど、子宝・安産祈願と関係ある?
埼玉県さいたま市・調神社と安産・子宝祈願は、深い関係があると言えます。
この神社の名前の「調」が、「月」に通じると考えられています。
そして、月の満ち欠け(みちかけ)が、女性の身体のリズムと関連していることから、安産や子育てのご利益があるとされてきました。
境内にいるうさぎは、いわゆる「多産」の象徴でもあるため、安産祈願にはぴったりの存在です。
すなわち、うさぎが多いのは、この神社の性格とご利益に深く結びついているのですね!
浦和・調神社については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

昔の制度と出産リスク
かつて日本で「側室制」や「分家」(徳川御三家など)が認められていた理由
昔の子は、死ぬリスクが高かったため
かつての日本で側室制や徳川御三家などの制度は、昔の子どもの死亡率が高かったことと深く関係しています。
江戸時代以前は、医療や衛生環境が悪く、乳幼児が大人になる前に亡くなるリスクが非常に高かったのです。
したがって、権力や家系を絶やさないためにも、「世継ぎ」、つまり家を継ぐ子どもを一人でも多く確保する必要がありました。
側室制:正室(メインのお嫁さん)以外にも子どもを産んでもらうための仕組みです。
つまり、君主や貴族が、正妻以外の女性を妻に近い地位に置く制度です。
また、徳川御三家のような分家も、もしも将軍家に万一のことがあった際に、血筋を絶やさないための「予備(バックアップ)の家」としての役割を果たしていました。
すなわち、これらの制度は、当時の高い死亡率に対する「危機管理の策」だったとも言えるでしょう。
徳川御三家については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

人間の出産・育児の特殊性
人間の子が、他の動物と比べて出産が大変で、育つのに手間や時間がかかる理由
これは、人類が進化の過程において、
- 「二足歩行」を始めたこと
- 「脳の巨大化」
という、二つの大きな変化が原因です。
二足歩行により、骨盤の形が変わり、産道が狭くなった
まず、人類は進化して二足歩行になったことにより、骨盤の形が変わってしまったのでした。
これにより、赤ちゃんが産まれてくるときに通る道である産道が狭くなってしまいました。
産道:赤ちゃんが生まれてくるときに通る道のことです。
人類は「頭が大きく」なりすぎた
次に、脳の巨大化も原因の一つです。
人間は脳が大きいため、赤ちゃんの頭も大きくなりました。
したがって、まとめると、
- 狭くなった産道に対して、
- ここを「大きな頭」が通ることになったため、
- 他の動物と比べて、難産になりやすい
という宿命を背負うことになりました。
また、頭が大きくなりすぎる前に産まれるてくる必要があるため、人間は未熟な状態で生まれてきます。
すなわち、そのため、一人立ちするまでに長期間その手間と時間がかかるのです。
これは、人間特有の進化の代償とも言えますね。
人類の恋愛と進化の役割
人類に「恋愛」があるのは、脳をバグらせ、大変な出産や育児に向き合わせるため!?
人間に特有の「恋愛」の感情は、なぜあるのか考えたことがありますか?
恋愛感情には、あえて冷静な判断力を失わせることで、
- 難産や、長期間にわたる大変な育児に対して、
- 意図的に「脳にバグ」を引き起こさせ、
- 「あなたとの子どもが欲しい!」という感情を引き起こさせ、
- 親が向き合い続けるための「仕組み」としての役割がある
という説があります。
恋愛は、
・・・みたいな感じで、脳内においてドーパミンなどの快感物質を、大量に放出させます。
すなわち、この「脳のバグ」のような強烈な結びつきが、子育ての苦労を乗り越えるモチベーション(やる気)を維持させる、というわけです。
ドーパミン:「気分のいい快感」や意欲に関わる、いわゆる脳内物質の一つです。
つまり、種を存続させるための、進化の戦略とも言えるのですね!
もし人間に恋愛が無くて理性のみだと、出産はコスパ悪いと判断するため!?
そう、もし人間に恋愛の感情がなく、理性だけで行動する動物だとしたら、
と判断される可能性が高いでしょう。
人間の出産は命がけであり、そのうえ育児には約20年もの時間と、莫大な労力と費用がかかります。
したがって、人類が常に冷静・合理的なだけに考えるような動物だと、
- 出産や育児は大きなリスク(危険性)があるため、長期の負担には見合わない
と判断されかねません。
すなわち、恋愛や愛情こそが、理性を超越して、大変な「子育て」というミッションを実行させるための、強力な力になっているわけですね!
おわりに・まとめ
安産祈願の歴史や、木花咲耶姫などの神様について学んでみて、いかがだったでしょうか。
出産の危険と安産祈願は、昔も今もいつの時代も変わらない、切実な願いの出発点でした。
したがって、現代でも安産祈願が大切にされるのは、医学を超えた「心の安定」を求めているからなんですね。
つまり、安産祈願とは、家族の絆を深め、新たな命を迎える準備をする、素晴らしい文化だと思います!
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