機関区の役割や歴史（例：給水塔・扇形機関庫・鉄道の町など）について、初心者の方にもわかりやすく解説してゆきます！
今回は「鉄道の町」機関区についての話題
さあ、今回はかつての鉄道のまちには不可欠な存在であり、また今でも各地にその遺構が残る機関区について、より深く掘り下げていきましょう！
かつての蒸気機関車の「休憩・停泊地」
機関区は、シンプルに機関車を停めておくための場所です。
しかし、その役割は、単にそれだけではありませんでした。
例えば、蒸気機関車が動くためには欠かせない、いわゆる水や石炭を補給するための、旅の中継基地でした。
いわゆる、F1でいうところのピットのようなものですね。
今も各地に、機関区の歴史の跡が残る
したがって、機関区においては、歴史的に転車台や扇形機関庫などいった、現在でも各地に歴史的な遺構として残る、独自の美しい産業遺産を生み出したのでした。
また、こうした機関区の遺構は、今では観光地として残っているものもあるわけです。
すなわち、鉄道ファンにとってはたまらない遺構というわけですね！
歴史を知れば、鉄道への見方も変わる
この「機関区」というものの歩んできた壮大な歴史を知ることで、鉄道へに対する視点や見方が、きっと大きく変わることになります！
それでは、機関区の魅力的・壮大な歴史を、一緒に学んでいきましょう。
「機関区」とは
まず機関区とは、鉄道で機関車が所属し、
- 電車がぶっ壊れて（故障して）ないか・磨耗していかどうかなどの点検
- もし電車に故障・不具合があったり、古くなったりなどにおける修理
- そこで働く乗務員の詰め所（つまり、作業・待機・仮眠などをする場所）
としての役割を持つ施設です。
機関区について、さらに詳しく
また、機関区は、
- 蒸気機関車
- 電気機関車
- ディーゼル機関車
などといった動力車（蒸気機関や電気などのパワーで動く車両のこと）を管理するための、いわば「基地」になります。
つまりこれは、機関車がその日のお仕事（お客様や荷物などを運ぶ）を終えて帰ってくるための、いわば「家」のようなものですね。
機関車：鉄道において、客車や貨車を引っ張る（牽引する）ための動力車のことです。
機関車（蒸気機関車など）とは何か？については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。
機関区の役割まとめ
したがって、機関区には以下の役割があったわけです。
- 機関車の整備・点検：列車の走行に必要な検査や修理をしたりしていたのでした。
- 燃料・水の補給：特に昔の蒸気機関車の時代だった頃には、ここでの石炭や水の補給は必須でした。
- 乗務員の基地：これは、たとえばそこで働く機関士（後述）や機関助士（後述）といった人々の勤務場所になります。
かつて「機関区」が数多く設置された理由
その昔、機関区が数多く設置されたのは、当時の昔ならではの、以下のようなさまざまな技術的な制約が大きな理由でした。
蒸気機関車の航続距離の短さ
その昔、日本で広く活躍していた蒸気機関車は、まさに石炭と水の補給が頻繁に必要なる車両でした。
蒸気機関車が走るためには、
- まず大量の石炭を燃やして、
- 水をわかして、
- たくさんの蒸気を、エネルギーとして生み出す
という必要があるわけなので、それは当然といえば当然でしょう。
ちなみに、蒸気機関車の原動力である蒸気機関についてや、それを実用化したジェームズ・ワットについては、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。
エネルギーを補給するための拠点
したがって、蒸気機関車が長距離を走るためには、たとえば
- 「途中の駅」
- 「要衝となる拠点」
には、必ず補給地点、すなわち機関区が必要であったというわけです。
「拠点となる駅」の例
例えば、東海道線では、御殿場線との分岐点である国府津駅や沼津駅などがまさにそうですね。
その他にも、
などです。
運行ダイヤの拠点として
また、例えば、
- それぞれの路線の区切りとなる場所
- 運行の拠点となる場所
といったような場所に機関区を設置することで、効率的な運用が可能になりました。
時代とともに、機関区の数は減少
しかし、時代とともに電気機関車やディーゼル機関車が登場するようになり、それにしたがって走行距離が延びていくようになると、機関区の数は徐々に減少していくことになっまのでした。
つまり、蒸気機関車のように、頻繁に石炭や水をつぎ足してやる必要が無くなってくるわけです。
電気機関車は、文字通り「電気で走る」わけなので、まあ確かにその通りですよね。
詳しくは、また後程解説します。
機関区で行われた点検について
では、機関区では、どのようなことが行われていたのか？についてみてゆきましょう。
まず機関区では、機関車が事故を起こすことなく安全に運行することができるようにするために、非常に綿密な点検や整備がそこで行われていました。
具体的には、以下のような作業が必要でした。
機関区で行われた点検：日常点検
まず、機関車が走る前・走り終えた後に、
- ボルトの緩みがないか→事故の原因となる
- 列車のブレーキの利き具合は大丈夫か
- 車輪に摩耗などはないか
などといった、まず基本的な安全確認をするというわけです。
機関区で行われた作業：給油・給水
また、蒸気機関車の場合、最も重要だったのが、水を補給することでした。
蒸気機関車は、石炭をバンバン燃やし、たくさんの水を沸かしたときに出る蒸気で動くわけなので、この水は絶対に必須なわけです。
そして、今はその多くが姿を消しましたが、機関区には大規模な給水塔が設置されていたのでした。
早岐駅（長崎県佐世保市）に現在でも残る、巨大な給水塔。これによって蒸気機関車に、大量の水を素早く供給していた。
したがって、これらの作業は列車が事故をすることなく走るための、まさに安全運行を支えるための「生命線」だったというわけです。
また、列車がかなりの距離を走り、ある程度の走行距離の段階に達すると、機関区ではより大規模な分解検査や修理も行われていたのでした。
すなわち、機関区は単なる車庫ではなく、機関車のコンディションを保つ「総合病院」のような存在だったと言えますね。
動輪：鉄道の機関車で、レールを蹴って走るための駆動輪のことです。
機関区での水と、石炭の備蓄について
かつての昔の機関区には、蒸気機関車が走るためには不可欠だった、水や石炭が豊富に蓄えられていたのでした。
水の重要性（蒸気機関車）
蒸気機関車は、先述の通り、水をボイラーによって（石炭を燃やすことで）熱して蒸気を作り、その力で動くわけです。
そのため、蒸気機関車は長距離を走っている途中で水がなくなると、機関車はその場で動けなくなってしまいます。
自動車だって、ガソリンが無くなってしまうと動けなくなりますよね。
したがって、機関区には先述の通り、巨大かつ大規模なインフラである給水塔が設置されており、そこから常に、大量の水が（しかも高速・迅速に）注ぎ足されていたのでした。
機関区の役割の一つ：石炭の備蓄
また、昔の蒸気機関車を動かすためには、水を蒸気にするための燃料である石炭も大量に必要だったのでした。
そのため、機関区に設置された大規模なインフラである石炭庫には、そこにはまさに大量の石炭が山積みされていたのでした。
そして、これらの石炭を機関車に積み込む作業が、かつては毎日のように行われていたのでした。
すなわち、こうした燃料などの補給能力こそが、かつての昔の機関区における、重要な機能の一つであったと言えるでしょう。
機関区には不可欠な、扇形機関庫・転車台とは？
機関区の象徴とも言えるのが、
- 扇形機関庫
- 転車台
です。
「扇形機関庫」と「転車台」のある、豊後森機関庫（大分県玖珠郡玖珠町）
放射状に伸びるあの線路ですね。
扇形機関庫と転車台は、蒸気機関車が主役だった時代の機関区にとって、絶対に欠かせない施設でした。
転車台とは？
ここで転車台とは、機関車の向きを変えるための設備です。
かつての蒸気機関車は、進行方向が一方向にしか進めないことが多かったのでした（一応逆に進めないこともありませんでしたが、高度な技術を要しました）。
現代の電車なら、どちらの方向にも進めるような設計になっていることが多いと思います。
そのため、終着駅や機関区では、必ず蒸気機関車の向きを変えてあげる必要がありました。
したがって、機関車をこの台に乗せ、回転させることで、方向転換を行うわけです。
転車台：機関車の向きを変えてあげるための、巨大な回転装置のことです。
扇形機関庫とは？
また、扇形機関庫とは、転車台を中心に、その扇のような形に沿って、放射状に設けられた車庫のことです。
なぜ扇のような形をしているのかというと、それはたくさんの機関車を効率よく格納し、整備できるように考えられた構造だったから、というわけです。
すなわち、この「扇形機関庫」と「転車台」の二つはセットで機能するという、まさに機関区の心臓部だったのです！
これらが今でも残る、有名な場所
また、今でも転車台と扇形機関庫が残っているような場所は、貴重な観光地となっています。
例えば、
- 京都府の梅小路にある京都鉄道博物館の扇形機関庫
- 大分県の豊後森機関庫
日本で最も有名で美しい現存例の一つですね！
これらの施設は、まさに「鉄道の黄金時代」を今に伝えるという、貴重な産業遺産となっています。
機関区と「町の賑わい」の関係について
そして、かつて機関区が存在していた町は、本当に多くの人たちで賑わったのでした。
現在でも、かつての機関区のあった町には、
- 大規模な線路の跡
- たくさんの人々が働いていたと思われる、昔の建物
- 大規模な駐車場（＝かつて蒸気機関車が止まっていたスペースが、用済みとなって転用されたもの）
なのどといった、当時を思わせる名残が存在しているわけです。
機関区の町へのメリット：雇用の創出
そして、機関区がその町にあることのメリットは、多くの雇用が創出されることにありました。
機関区は、いわば機関車を扱う「プロフェッショナル」の人たちが集まる場所でした。
例えば、
- 機関士：すなわち、蒸気機関車を運転する運転士のこと。
- 機関助士：機関士ともに蒸気機関車に乗って働き、石炭をボイラーに対して投げ入れる（これを「くべる」「投炭」などといいます）などの作業をする人のこと。
- 検修員：車両のメンテ・部品の交換などを行う整備士
- 給炭・給水作業員：蒸気機関車に石炭や水を供給する人たちのこと
など、多くの人が機関区で働いていました。
すなわち、機関区は町の最大の「職場」の一つだったのです。
今の電車と異なり、危険も多かった昔の蒸気機関車の運転
また、蒸気機関車は今の電車と異なり、常に高温・火災・事故・熱中症・粉塵などと戦うような、常に危険と隣り合わせの乗り物でした。
すなわち、機関士や機関助士の判断ミスで大事故につながりかねないほどデリケートな乗り物だったため、彼らの技はまさに職人技であり、本当に「選ばれし者」しかなれないような職業だったのです。
運転士になるには？については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。
人口増加と経済効果
話を戻します。
また、機関区がある町においては、多くの働く人たちが家族を連れて移住してくることになります。
そのため、町の人口は自然と増加してゆきました。
人口が増えれば、その町で彼らの生活を支えるための商業施設が必然的に増えていくことになります。
例えば、商店、飲食店などが主に発展していくわけです。
したがって、
- これらの経済活動・消費活動によって税収が増えてゆき、
- 町が経済的に発展・栄えていくという「鉄道の恩恵」を直接受けていた
というわけです。
しかし、
- 鉄道の技術が向上してゆき電車となり（電化され）、
- 「給水塔」「給炭塔」「転車台」などが不要になり、
- 設備インフラがよりコンパクト・小さくスッキリするという合理化によって、
- 機関区が廃止される
ようになると、その町は一気に活気を失い、町が衰退してしまうことも少なくありませんでした。
機関区が栄えた町の具体例
また、かつて機関区で栄えた町は、全国にたくさん存在していたのでした。
先述の通り、機関区があった駅の周辺は、多くの鉄道職員とその家族が集まり、町全体が「鉄道のまち」として栄えました。
具体的には、長距離路線の拠点や、難所を控える中継地点に設けられていました。
御殿場線の例
山北駅（神奈川県足柄上郡山北町）
山北駅は、まだ御殿場線が東海道本線だった時代に、いわゆる『箱根越え』のための補助機関車を連結するため基地でした。
したがって、この山北の機関区には、最も多かった時代に700人以上が働いており、その駅前は大変な賑わいを見せていたのでした。
もちろん、前後にあった国府津駅や沼津駅も重要な拠点でした。
しかし、特に山北という場所は、目の前がとてもきつい傾斜区間であったこともあり、このおかげでまさに機関区が町の中心となりました。
東海道本線は、現在の御殿場線の区間は、かつては東海道本線の一部でした。
1934年に丹那トンネルができたことで、現在の熱海経由となりました。
また、箱根の険しい山越えルートとして知られていました。
山北駅・御殿場線などについて詳しくは、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。
北海道の例
また、北海道の追分駅（室蘭本線・石勝線）も、石炭輸送の大動脈の中継地として、追分機関区を擁していたのでした。
すなわち、現在の安平町にあたるこの町は、かつては鉄道中心に栄えていたという、まさにその代表的な例ということになります。
その他の例
また、先述の
- 大分県の豊後森駅
- 新潟県の新津駅
なども大規模な機関区があり、「鉄道の町」としても知られています。
時代とともに電化が進むにつれ、「鉄道の町」は衰退
しかし、
- 蒸気機関車から電気・ディーゼル機関車への転換（動力近代化）が進んでいくと、
- 機関区は次々と廃止されてゆき、
- そこで働いていた人々は、新たな職場（異動または転職など）により町を出ていくことを余儀なくされ、
- 町の活気が失われていった
という、少し残念な歴史もあるというわけです。
補助機関車連結時の「楽しみ」について
また、例えばキツイ坂道の上にある急勾配の駅においては、機関車の交換または増結するための時間が、旅行者にとっては楽しい休憩時間となっていました。
それは、待ち時間のうちにそば・釜めしなどを食べるなどの娯楽が存在していたかでした。
特に急な坂（勾配）の手前にある主要駅においては、補助機関車を連結したり、切り離したりするといった作業が行われていました。
そしてこの作業には、どうしても時間がかかっていました。
休憩時間の提供
この列車が停車している間に、お客さんはみんなホームに降りて、その食事を楽しむなどの「間の時間」を楽しんでいました。
このように、停車時間が長くなったことでグルメを味わうという行為は、当時の鉄道旅行における「名物」の一つだったというわけです。
名物グルメの誕生
そのため、昔はこの長い停車時間を利用して、
- 駅の立ち食いそば
- 駅弁、すなわちお弁当
を買って食べるというのが定番でした。
例えば、群馬県の横川駅で現在も名物として有名な「峠の釜めし」は、まさに目の前に控える碓氷峠の急勾配に備えて、（列車を引っ張るための）補助機関車を連結している間に食べる、というために誕生したわけですよ！🍱😋。
すなわち、この作業時間こそが、旅の思い出や、その町のグルメ文化を育んでいたという、大切な機会となっていたわけです。
補助機関車（補機）とは、
- 急な坂道（勾配）を上るために、
- 本務機関車（本機）の後ろや前に連結して、
- 列車を後ろから押したり、前から引いたりする手助けをするための機関車
のことです。
しかしながら、時代と共に列車の性能は向上してゆきます。
そうなると、たとえ補助機関車（補機）を連結しなくても、列車は坂道をどんどん登っていくようになるため、補助機関車の連結・取り外しのための作業は不要になってきます。
さらにそうなると、乗客が降りて食事をすることも無くなるため、こうした駅弁などのグルメも衰退し、次第に姿を消していくことになるわけです。
時代（電化）とともに、機関区の各設備は不要・撤去に
また、機関区も、電化とともに
- 扇形機関庫
- 転車台
- 給水塔
- 給炭塔
などの大規模なインフラ設備は撤去され、姿を消していくことになりました。
そのため、かつてそれらがあった跡地には、
- 大規模な駐車場
- 住宅地
- 都市開発のために、大規模なオフィスビル
などの用途に転用されているケースが数多くあります。
もし「かつて機関区があった場所」に大規模な駐車場があったりすると、そこはかつてたくさんの蒸気機関車が止めてあった場所である可能性があるのです！
時代とともに、インフラはコンパクト・小さくなっていく
このように、設備などのインフラは、時代・技術の向上とともに、小さく・コンパクトになっていくわけです（合理化）。
例えば、
- 電話：昔の大規模な交換設備→ルータやサーバなどのコンパクトな機器
- 病院：大規模な医療設備→コンパクトな医療機器
- コンピューター：一つの部屋を占拠するほどの大規模な機器→パソコンなどのコンパクトな機器
鉄道の場合も、かつての大規模な機関区のインフラは不要になってゆき、余った土地は先述の通り、駐車場・住宅地・オフィス街などになっていったわけですね！
衰退した鉄道の町の復活に向けた取り組みについて
このように、動力近代化や合理化によって一度は衰退した鉄道の町ですが、その歴史を活かして活気を取り戻そうと、現代でも頑張っている地域がたくさんあります！
歴史遺産の活用
例えば、かつての機関区の扇形機関庫や転車台といった産業遺産が維持・保存され、それらはミュージアムや公園として公開されています。
観光列車やSLの誘致
また、かつての鉄道の町（機関区などがあった町）では、
- かつてその地を走っていた蒸気機関車（SL）を復活させたり、
- 観光列車を走らせる
などの様々な取り組みをしたりして、鉄道ファンや観光客を呼び込んでいるというわけです。
したがって、こうした「鉄道のまち」としての歴史そのものが、地域の最大の観光資源となっているというわけです。🚂✨。
すなわち、昔の「蒸気機関車」が活躍していたころの「鉄道の町」の賑わいを知らない世代に対しても、
- こうした鉄道の歴史を楽しく伝えてゆき、その地域の魅力を再発見してもらう
ということこそが、これらの町の復活の鍵となっているというわけです。
おわりに・まとめ
機関区とその歴史を学んでみて、いかがでしたか。
機関区は、
- 機関車の整備・運行を支える技術の拠点であること
- また、そこで働く多くの人々の生活と、町の経済・発展を支えるための「生命線」だったこと
などが分かったことと思います。
また、山北駅や追分駅など、かつてそこに機関区があった町は、賑わいの歴史と、そして衰退という切ない2つの歴史を持っているわけです。
したがって、今も一部の各地に残っている扇形機関庫などの産業遺産は、単なる古い建物というだけでなく、日本の近代化の記憶であるというわけです。
これらの知識が、あなたの鉄道の旅を、もっと豊かなものにしてくれると嬉しい限りです！
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