車両基地の役割や、機関庫からはじまる歴史・ドクターイエローなどについて、初心者の方にもわかりやすく解説してゆきます!
今回は、車両基地の話題
さあ、今回は鉄道の安全運行を支える車両基地について、そしてその興味深い歴史を、一緒に深く掘り下げてみましょう!
前回も解説した機関区という昔の形から、今の多機能・コンパクトな車両基地へと、歴史的にどのように進化してきたのについて、探ってゆきましょう。
さらには、ドクターイエローのような秘密兵器の役割や、新幹線と在来線の違いなどについて、ワクワクする知識が盛りだくさんです!
こうした知識を学んでおくことで、あなたの鉄道旅行や観光の楽しさも倍増することでしょう!
車両基地とは?
まず車両基地とは、
- 鉄道の列車を停めたり、
- 検査・修理
をしたりするという、いわば「お医者さんの病院」のような場所です。
すなわち、線路から分岐して延びてきたた広い敷地に、鉄道を止めたり治したりするための、たくさんの線路や建物が並んでいるわけです。
したがって、車両基地についてまとめると、
- その日の仕事を終えた列車を休ませる
- 点検や修理をする
という、重要な役割を担っています。
まさに、前回も解説した、昔の蒸気機関車を休ませる・整備をするための機関区とほぼ似ていますね。
車両基地の役割
また、車両基地の主な役割は、列車が事故を起こすことなく、安全に運行できるようにするための「保守と管理」にあります。
すなわち、毎日のように故障が無いかをチェックしたり、安全に保つための取り組みが行われているというわけです。
保守:機械などの状態を、良い状態に常に保つこと。
したがって、
- 日々の小さな掃除
- 短い時間で行う、マイナーな検査
- 数年ごとに行う、大きな分解修理
まで、様々な作業が行われるというわけですね。
そして、この車両基地における、日々の地道(つまり、地味だけどとても重要)な作業があるからこそ、私たちは安心して、電車に乗れというわけですね!
有名な車両基地
有名な車両基地としては、例えば、
- 新幹線の車両を整備するJR東海の鳥飼車両基地(大阪府摂津市)
- JR東日本の東京総合車両センター(東京都品川区・大井町)
などがあります。
これらの車両基地は、イベントで一般公開されることもあり、間近で迫力ある列車を見られる場所でもあるわけです。
鉄道ファンにとっては、まさに聖地ですね!
車両基地の歴史
まさに「鉄道誕生」の瞬間から存在していた車両基地(の原型)
車両基地の歴史は、まさに日本の鉄道が始まった時代にさかのぼります。
つまり、1872年(の新橋~横浜間の開通時)に日本の鉄道の歴史がはじまった瞬間から、車両基地のご先祖様は存在していた、ということであります。
まあ、当たり前といえば当たり前(体操)ですが、車両基地の歴史は、鉄道の歴史とともに始まったといっても過言ではないわけですね!
かつては「機関庫」と呼ばれていた
車両基地は、前回も少し解説したように、昔は機関庫と呼ばれていました。
主に、
- 蒸気機関車の給水
- 燃料補給
- 簡単な点検
を行っていました。
これらは、前回も解説した通りですね。
機関庫:昔、蒸気機関車の時代に、蒸気機関車などの車両を入れておいた、倉庫のような建物のこと。
しかし、時代とともに電車や新幹線が登場し、必要な設備や機能も進化してきたのです。
機関区と機関庫の違い
ちなみに前回も解説した機関区と、機関庫ってどう違うの?って話になるため、以下にまとめておきますね!
まず機関区は、鉄道会社の「支社」や「営業所」のような存在です。
すなわち、人員・設備・運用管理などを統括するための広い拠点ということになります。
そして、それらが存在している広大なエリアになります。
機関庫は、ここの一部に含まれます。
そして機関庫は、上記の機関区の中にある「整備工場」や「車庫」のような役割の存在となります。
すなわち、機関車を格納・整備するための建物になります。
つまり、
みたいなイメージです。
機関区から車両基地へと進化した経緯は?
また、前回も解説した機関区は、主に蒸気機関車などの動力車と、それらを扱う人たちである乗務員たちが働くための拠点でした。
すなわち、彼らの仕事は、車両の点検や給水、燃料補給などをすることが、主な役割だったというわけです。
しかし、時代が進んで、電車や気動車などの動力分散方式が主流になると、車両そのものの整備が必要になりました。
動力分散方式:列車を動かすためのモーターなどを、複数の車両に分散して搭載する仕組み。
現代の旅客列車は、ほぼこの方式です。
動力分散方式が主流になると、一つの車両全体で整備する方が効率的に
すなわち、時代とともに、
- 機関車+それによって引っ張られ客車・貨車
という形(動力集中方式)から、
- 複数の車両に、モーターなどの動力源を積んだ編成
という形(動力分散方式)へと、時代とともに変化・進化していったわけです。
動力集中方式:例えば機関車などの単一の動力を持った車両が、後ろに繋いだ客車や貨車を、引っ張って動かす仕組み。
蒸気機関車だった昔は、ほぼこれが主流でした。
そのため、それまで分散していた
- 機関車専門の機関区
- 客車・貨車を扱う客貨車区
のそれぞれ機能が、時代とともに一つに統合されていったのでした。
貨車:荷物を載せて運ぶ、自分では動けない車両。
客車:お客様を載せて運ぶ、自分では動けない車両。どちらも、機関車に引っ張られて動きます。
これらのことにより、時代とともに、列車をそれぞれ一元的に管理できる「車両基地」へと進化していったわけです。
動力分散方式については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

動力集中方式については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

動力分散方式への進化が、車両基地への移行を重要にした理由
かつての昔、蒸気機関車が主流だったころの動力集中方式では、
- 機関車(引っ張る側の車両)
- 客車・貨車(引っ張られる側の車両)
は、それぞれ別々に管理されていました。
すなわち、それぞれ
- 機関車の点検・修理は、機関区
- 客車などの点検は、客貨車区
で行っていた、という具合ですね。
時代とともに「動力分散方式」が主流に
しかし、時代とともに動力分散方式の電車や気動車が主流になってくると、
- 列車全体が、まさに一つの動く機械
となってくるようになりました。
そうなってくると、従来のバラバラな修理方式ではなく、車両全体をまとめて一体として、しかも効率的かつ安全に管理・整備する必要が生じてくるようになってきたというわけです。
このことにより、時代とともに両方の機能を統合した車両基地が、必要不可欠となってきたわけです。
そして、時代とともに機関区から車両基地への移行が重要になってきた、というわけです。
色々な車両基地について
西の重要拠点・鳥飼車両基地とは?
JR東海の鳥飼車両基地(大阪府摂津市)は、東海道・山陽新幹線を支える、まさに「西の要衝」です!
すなわち、新幹線で新大阪駅→京都駅に向かうときに、窓の左側に登場する、新幹線がたくさん止まった、あの広大な車両基地です!
この鳥飼車両基地の最大の特徴は、新幹線の中でも特に重要な、台車検査を行うための、大規模な設備があることです。
台車検査:列車が安全に走るための車輪や、バネがついた重要な部分を、専門的に細かく調べる検査のことです。
敷地も広大であり、大阪モノレールの車窓から、ズラッと並んだN700系などの新幹線車両を眺められることでも有名ですね!
JR東日本の重要拠点・東京総合車両センターとは?
また、JR東日本の東京総合車両センター(東京都品川区、大井町あたり)は、主に
- 山手線
- 京浜東北線
などで使われる通勤電車を中心に、多くの車両の検査と修理を担っている、大規模な施設となります。
この大規模な車両基地は、JR東日本の在来線における、まさに「心臓部」とも言える場所となります。
また、ここでは、短い時間で行っている比較的小規模・マイナーな仕業検査だけでなく、数年に一度の大掛かりな全般検査も行われています。
イベントで公開されることもあり、多くのファンが訪れる人気のスポットとなっています。
全般検査:すべての部品を取り外して行う、大規模な検査と修理。
仕業検査:運行の前に行う、最も基本的な点検のことです。
毎日〜数日ごとに実施し、他の種類の検査よりも、最も頻繁かつ短時間で実施されます。
イベントで公開されることもあり、多くのファンが訪れる人気のスポットとなっています。
大井車両基地とは?ドクターイエローも見られる?
また、大井車両基地(東京都品川区)は、東京と大阪を結ぶ東海道新幹線の、東京側の拠点となる巨大な施設です。
すなわち、JR東海が管理しており、運行を終えた新幹線が停泊し、日常的な検査や整備が行われています。
停泊:列車が運行を終えて、次の出番まで休んでいること。
そして、多くの方が期待しているドクターイエローについても、この大井車両基地にいることが多いです。
ただし、ドクターイエローは走行スケジュールが非公開となっているため、基地にいるかどうかは運次第、ということになりますね!
新幹線と在来線で、車両基地は分かれている?
また、基本的に、新幹線と在来線では、車両基地は明確に分かれています。
その理由は、基本的にそれぞれ線路の幅が違うため、同じ基地に入ることができないわけです。
新幹線と在来線では、そもそもの仕様が全く異なる
例えば、新幹線は、線路の幅が広い「標準軌」を採用しています。
そのため、一般的な在来線の「狭軌」とは、そもそもの規格が異なり、線路の幅も異なるためです。
また、それだけでなく、
- 車両の大きさ
- 検査の内容
もそもそも全く違うため、新幹線と在来線は、それぞれ施設を分けている方が効率的なのです!
標準軌:世界的に広く使われている、スタンダードかつ各鉄道会社や路線で統一された線路の幅(1,435mm)。
狭軌:主に日本の在来線で主に使われている、線路の幅(1,067mm)。日本では初期にコスパが良いため採用された。
標準軌と狭軌については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

鳥飼車両基地と大井車両基地は「対」になる?
まさにその通りで、
- 鳥飼車両基地(大阪府)
- 大井車両基地(東京都)
は、それぞれ東海道新幹線の両端に位置する「対」となる重要な拠点となります!
東の大井・西の鳥飼!?
すなわち、
- 東京側のメインが大井、
- 大阪側のメインが鳥飼
という役割分担をしているわけです。
そして、どちらも
- 新幹線車両を止めておく
- 日常的な仕業検査
- そして定期的な交番検査
を行う、欠かせない存在なのです!
交番検査:先述のより仕業検査よりも、より詳細に点検する検査です(車両は分解せず、あくまで非分解で実施。)
仕業検査よりは頻度は少なく、約1か月ごとに、車両を実際の運用から外して実施されます。
ドクターイエローとは?
ドクターイエローとは、新幹線の区間を実際に走りながら、線路や架線などの設備をチェック・点検するための、事業用車両の愛称(つまり、正式名称ではない・一般のお客様は乗れない車両)です!
珍しい黄色い車体が特徴的であり、しかも実際に走る日(走行日)が非公開であるため、
という都市伝説が存在するほど、人気の高い列車となっています。
また、先述の通り、ドクターイエローとは正式名称ではなく、あくまで愛称になります。
正式名称は「新幹線電気軌道総合試験車」といいます。
すなわち、日本の新幹線の安全を陰で支える、縁の下の力持ちということになります。
ドクターイエローの運行スケジュールが非公開な理由は?
ドクターイエローの走行スケジュールが非公開である理由は、主に運行計画の安定性を守るためです。
点検作業は、新幹線全体の安全に直結する極めて重要な業務となります。
また、ドクターイエローが走る日程は、他に多く存在する営業のための列車の運行計画と、密接に連携しながら走っています。
なので、うかつ・安易には簡単に走ってはいないというわけです。
そして、もしドクターイエローが走るスケジュールが公開されてしまうと、
- 運行上の機密情報が漏れるリスク
- 鉄道ファンが集まりすぎることで、安全上の問題が発生する
という事態を避けているというわけです。
こうした事情から、見られたらラッキーというわけなので、ドクターイエローは「幸運を呼ぶ」と呼ばれているわけですね。
走りながら、具体的にどんなことをチェックしている?
ドクターイエローは、高速で走行しながら、新幹線の安全に欠かせない、以下の3つを主にチェックしています。
- 電気設備:架線の摩耗状態や電圧、電流に異常がないか。
- 軌道設備:線路のゆがみや高低差(デコボコが出来てないか)、幅が正確に保たれているか。
- 信号・通信設備:列車間の信号や、運行に必要な通信設備が、正常に機能しているか。
したがって、これらの検査項目を瞬時に、かつ高精度で計測している、まさに走る検査室であるというわけです。
架線:電車が走るのに必要な電気を送るための、列車・線路の上空に張られた電線のことです。
チェックしたデータは、どのように利用されている?
そして、ドクターイエローが収集した膨大なデータは、新幹線の予防保全のために利用・大きく活用されています。
もちろんこれは、「線路や設備が故障する前」に、異常の兆候をいち早く察知するためです。
例えば、線路のゆがみのデータをもとに、これらが大きな問題になってしまう前に、現場で補修作業を行うことになります。
こうした日々のチェック・点検により、常に
- 最高レベルの安全性
- 安定したダイヤ運行
が守られているわけですね!
予防保全:設備や機械などが壊れる前に、あらかじめ点検・修理をしておくことで、故障が起こるのを防ぐこと。
入社後の業務経験について
最後に、鉄道会社に入社した場合の、車両基地の業務を経験する可能性についてです。
これについては、十分にありえます。
例えば、技術系の職種についたのであれば、車両検査や修理を担当することが多くなるでしょう。
すなわち、現場において車両の構造を深く理解するということは、将来のキャリア(夢の運転士になるなど)にとって非常に貴重な経験となるはずです!
車両基地業務を経験するメリットと運転士への必須性は?
そして、先述の通り、車両基地での業務経験は、運転士になるための「最高の予習」になるものだと言えます!
車両基地で働くことのメリットは、何と言っても「車両構造の深い理解」が得られることにあります。
運転中に異常が起きた時に、役に立つ知識・経験
したがって、車両基地における列車の整備を行うことで、列車の仕組みや、故障が起きやすい箇所などについての知識が身に付くことになります。
これは、もし列車の運転中に異常が発生したときに、素早くかつ正確に状況判断を行うためにも、不可欠な知識となります。
必須ではないが、有利な経験に
もちろん、これは運転士になるためには必須の知識・経験というわけではありません。
運転士になるためのキャリアパス(道筋)は会社によって異なるわけです。しかし、これらの車両基地での業務経験は、列車が安全運行に直結するためにも、(必須ではないにせよ)身につけておくと、非常に有利な、重要なステップと位置づけられているというわけです。
運転士になるには?については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

おわりに・まとめ
以上、今回は車両基地と、その進化の歴史を学んでみて、いかがだったでしょうか。
まず、かつての蒸気機関車の時代の機関区から、時代とともに車両基地へ移行したことについては、動力分散方式という技術の進歩によって生まれた、必然だったことが分かったことと思います。
また、鳥飼(大阪府)や大井(東京都)などの巨大な基地が、ときにはドクターイエローのデータも活用しながら、私たちの安全を陰で守っているという事実に、感動することもあったのではないかと思います。
鉄道の奥深さをまた一つ知ることができて、鉄道への見方が変わり、今後の鉄道博物館などの観光・見学などがより楽しくなればいいですね!
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