長崎県の大村湾について、「琴の海」とよばれたその海の地理・歴史(針尾瀬戸・早岐瀬戸など)を、わかりやすく解説してゆきます!
今回は、大村湾・大村線の話題

大村湾(大村線の車窓より)(長崎県)
今回は、長崎県の大村湾・大村線の地理・歴史について学んでゆきましょう!
長崎県の美しい内海であり「琴の湖」とも呼ばれる大村湾の地理と歴史に対して焦点を当てつつ、より学びを深めていきましょう。
こうした学びを通して、長崎の魅力をさらに深く感じていただければと思います!
大村湾とは?

大村湾(大村線の車窓より)(長崎県)
波がたちにくい穏やかな「琴の海」(大村湾)
大村湾は、長崎県の中央部に位置する内海のことをいいます。
ちなみに内海とは、周り(四方)を陸地に囲まれており、なおかつ狭い入り口で外の海(外海)とつながっているような海のことです。
この内海は、波が立ちにくく、まるで湖のように静かであることが特徴です。
このように、大村湾は海の入り口が狭いために、潮の干満差がとても小さいという特徴があります。
そのため、大村湾は「琴の湖」とも呼ばれています。
大村湾のたった2つの狭い入口:針尾瀬戸と早岐瀬戸
大村湾が外側の海とつながっているのは、わずか2カ所しかありません。
しかも、どちらも超狭い海の出入口になっています。
大村湾の入口は、
- 大村湾の北西側にある、西海橋・新西海橋があるあたりの針尾瀬戸
- 大村湾の北側にある、早岐方面ともつながっている早岐瀬戸
だけです。
瀬戸:陸と陸にそれぞれ挟まれた、幅が狭くなっている海のことです。
入口がとても狭いため、潮の流れが非常に速くなり、船にとっては「難所」となるが特徴です。
針尾瀬戸(はりおせと)
大村湾の北西にある、佐世保湾に抜けるための海のルートであり、西海橋や新西海橋がかかっている場所です。
ここがメインの入り口ですが、幅はわずか200mほどしかないわけです。
そしてここは、なんと関門海峡よりも狭いと海路となっています。
これだけ狭いと、後述する「ベンチュリ効果」により、海の流れ(潮流)が恐ろしいような速さとなり、船は操縦しにくくなり、事故も発生しやすくなります。
そのため、かつてよりここを航海する人たちにとっては、まさに「針の穴を通すような難所」として恐れられてきました。
大村湾のもう一つの出入口・早岐瀬戸(はいきせと)
一方の早岐瀬戸は、大村湾の北にある、針尾瀬戸と同じく佐世保湾へと抜ける海のルートであり、さらに狭く、まるで川のような細い水路となっています。

大村湾と佐世保湾をつなぐ、早岐瀬戸(大村線)(長崎県)
早岐瀬戸の正体:天然が生んだ奇跡の運河
早岐瀬戸は、人工的に作られたものではなく、天然の海峡となっています。

「早岐瀬戸」の名前にもなっている早岐駅(長崎県佐世保市)
早岐瀬戸の名前となっている早岐駅については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

見た目は川、中身は海
また、早岐瀬戸は全長は約11kmもあり、非常に細長いため、一見するとまるで「川」のように見えます。
しかし実際には、お互い離れた大村湾と佐世保湾をそれぞれ結ぶという、まるで運河のような「海の道」となっているというわけです。
元々、2つの島がくっつきそうになりかけた「わずかなスキマ」(早岐瀬戸)
また、この早岐瀬戸は、
- 二つの島(「本州」と「針尾島」)でそれぞれ分かれており(今もそのまま)、
- それぞれ海を隔てて分かれていた(今も分かれている)場所が、
- 地殻変動などによってお互いが陸続きになりかけたときに、
- 完全にはお互いの島がつながらず、
- 間にわずかな海(というかほとんど「川」)の部分だけが残った「隙間」である
と言われています。
すなわち、もしこの「地殻変動」において、完全にこの「隙間」が無くなっていたとるすると、早岐瀬戸は存在しなかったというわけです。
したがって、完全な「陸地」になっていたというわけですね。
このように、大村湾を囲むそれぞれの地形は、まるで地球の圧倒的なパワーが凝縮されたような場所ですね!
また、ここも「潮の満ち引き」によって、海の流れの向きが逆転する(すなわち、月の引力がある方向に海の流れが引っ張られる)という、非常に珍しい場所であるというわけです。
佐世保湾と大村湾をつなぐルートは、実質的に「針尾瀬戸」のみ
このように、早岐瀬戸がこれだけ狭いため、佐世保湾と大村湾をそれぞれつなぐルートとしてまともに大きな船が通れるのは、実質的に針尾瀬戸だけと言えます。
そして、実際に西海橋から渦潮を見てみると、その音と迫力に圧倒される景色がそこにあるようです。
航行規制も特に厳しい、針尾瀬戸
針尾瀬戸の航行規制についても、全国屈指の厳しさとなっています。
すなわち、これだけ狭い・また海の流れが激しいような海においては、一歩間違えると、
- 船どうしがすれ違いに失敗して、衝突事故を起こしたりする
- 舵を波に取られてしまい、操縦不能になったりする
- 座礁(岸に乗り上げるなど)してしまう
などといった、様々な危険が存在します。
したがって、ここ(針尾瀬戸)を通る船は決められたルールにしたがって、厳格に航行しているというわけですね。
早岐瀬戸の正体:川のように見えて「海」

大村湾と佐世保湾をつなぐ、早岐瀬戸(大村線)(長崎県)
また、この早岐瀬戸は見た目は完全に「川」ですが、その中身は驚くべきものです。
潮の香りがする理由
早岐瀬戸は、地図で見るとまるで「細長い川」のように見えます。
しかし、実際には佐世保湾と大村湾という2つの海をつなぐ「海峡」です。
すなわち、この早岐瀬戸を流れているのは飲めるような真水ではなく、塩のきつい海水であるというわけです。
このように、早岐瀬戸はまるで川のような景色なのに、まるで海のように(いや、本当に海なわけですが)潮の香りがし、しかも舐めれば塩辛いという、なんとも不思議な体験ができるというわけです。
「逆流」する流れ 早岐瀬戸
また、この早岐瀬戸は、潮の満ち引きによって、流れの向きが1日に何度も変わります。
すなわち、満潮の時は大村湾へ、干潮の時は佐世保湾へと海水が移動するというわけですね!
早岐瀬戸での川遊び:見た目に騙されると大変!
また、早岐瀬戸での川遊びは、その見た目に騙されると、とても大変なことになります。
すなわち、ここで普通の「川遊び」をしようとすると、少し驚くことになります。
ベタベタする塩水・早岐瀬戸 「ベンチュリ効果」による猛烈な潮の流れ
確かにこの早岐瀬戸は、見た目はまるで穏やかな川のようになっていまです。
しかし、その中身は完全な(塩からい)海水となっています。
そのため、もし泳いだ後は体が塩でベタベタになってしまいますし、真水の川だと思って飛び込むと、塩によって目が痛くなってしまいます。
また、後述する「ベンチュリ効果」の影響で、場所によっては川とは思えないほど、流れが速くなっついます。
すなわち、流されてしまうリスクがあるため、安易に飛び込むのは危険であり、地元の子供たちも泳ぐ場所には細心の注意を払っているというです。
針尾瀬戸 vs 関門海峡:どちらが狭い?
さて、この針尾瀬戸と山口県・福岡県の関門海峡、果たしてどちらが狭いのでしょうか。
結論から言うと、針尾瀬戸の方が圧倒的に狭いです!
幅の比較 日本屈指の「狭き門」
関門海峡の一番狭いところ(早鞆の瀬戸)は約600メートルあります。
それに対して、大村湾の入口である針尾瀬戸の幅はわずか200メートルほどしかありません。
すなわち、針尾瀬戸は関門海峡の3分の1の幅しかないため、船が通るためには非常に高度な技術が必要となっています。
水の勢いが増す理由:ベンチュリ効果
「ホースを絞ると水が勢いよく出る」という直感は、物理学的に大正解です!
流速が上がる仕組み 巨大なエネルギーの集中 「ベンチュリ効果」
ちなみに、海の流速が上がる仕組みとは、果たしてどのようなものでしょうか。
まず、「広い場所」から「狭い場所」へと大量の水が通り抜けようとすると、そこにはものすごい力が加わってしまうため、水の勢いとスピードが上がってしまうようになります。
これを専門用語でベンチュリ効果と呼びます。
ベンチュリ効果:水や空気などの通り道が狭くなることで、流れの速さが増してしまう現象のことです。
また、この狭い海では、大村湾という広大な面積の海水が、たった200mほどしかない海の隙間(スキマ)に対して、一気に大量の水が押し寄せてくるというわけです。
したがって、針尾瀬戸においては時速約17km(9ノット)という、海なのにまるで川のような、猛烈な速さの潮の流れが発生するというわけですね!
ベンチュリ効果については、以下の山口県・大畠瀬戸の箇所でも解説していますので、ご覧ください。

時速17km(9ノット)の速さとは
また、海の上で時速17kmというのは、想像以上に恐ろしい速さとなります。
身近な例え「100mを21秒」 これは海の上では「激流」
これは、身近な例だと自転車の全力疾走に近い速さです。
または、100mを約21秒で駆け抜ける速さです。
大きな船であっても、この速さの潮に横から押されると、コントロールを失ってしまいます。
すなわち、針尾瀬戸という難所において船を操縦して通るということは、例えるなら「動く歩道の上で、細かい精密な作業をする」というような難しさがあるというわけです。
潮の満ち引きと月:宇宙規模の引っ張り合い
ちなみに、潮の流れの根本的な原因は月の存在にあります。
満ち欠けとの関係 月の引力が海水を引っ張る
月が地球の周りを回っているため、その重力(引力)によって、地球の海水が「ぷくっ」と膨らむという現象が起きます。
すなわち、地球が自転することで、その膨らんだ部分(満潮)が(潮の流れが月の方向へ向けて)移動していくというわけですね。
また、月と太陽が一直線に並ぶ「新月」や「満月」の時には、引力が重なってしまうことにより、さらに潮の動きが激しくなります。
この「さらに潮の流れが速くなった状態」のことを大潮と呼び、針尾瀬戸の渦潮もこの時期が最も見応えがあるということです。
なぜ大村湾は「琴の湖」と呼ばれるのか?

「琴の海」とも呼ばれる大村湾(長崎本線・長与経由)(長崎県)
また、大村湾が「琴の海」と呼ばれる理由は、
- 波音がまるで、琴の音色のように美しく響く
ということから、江戸時代の文人がそう名付けたことがきっかけであるとされています。
文人:詩や書画などの風流な道に親しんでいる・極めているような人のことをいいます。
大村湾の地形の「デメリット」
しかしながら、その閉鎖的な地形ゆえに、「汚い海水」と「キレイな海水」がそれぞれ入れ替わりにくいような構造になっています。
これは先述の大村湾の特有の地形からくる、内側と外側の海の通り道が狭くなっていることによって生じるという、最大のデメリットというわけですね。
そのため、大村湾においては環境保全への取り組みが重要であるとされています。
大村湾は、ほとんど塩の匂いがしない?真水に近い感じ?
また、大村湾は先述の通り内海であるため、外洋(つまり外の海)との水の入れ替わりの度合いが、非常に少なくなっています。
そのため、一般的な海に比べて塩分濃度はやや低い(薄い)傾向にあります。
つまり、湖ではなく海でありながら、あまり塩っぽい海ではないというわけですね。
完全な「真水」ではない しかし「塩の匂い」はやや薄い(大村湾)
しかし、完全に真水に近いわけではありません。
もちろん大村湾は「海」であるため、当然のことながら「塩味」「塩の匂い」することでしょう。
しかしながら、先述の通り大村湾は湾口が狭いことから、海ほどまでの強い「潮の匂い」までは感じにくいかもしれませんね!
その穏やかな雰囲気が「琴の湖」と呼ばれるわけです。
今回はここまで 続きは次回
おわりに:大村湾の地理・歴史について学んでみていかがだったでしょうか。
次回は、大村湾のすぐそばを走る鉄道路線である、大村線の観光・歴史や、さらには長崎街道の歴史などについて、深く解説してゆきます!
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