鉄道唱歌 東海道編 第16番 三島に到着 官幣大社・三嶋大社 そして伊豆箱根鉄道線との分かれ道

まずは原文から!

三島(みしま)は近年(きんねん)ひらけたる
豆相線路(ずそうせんろ)のわかれみち
驛(えき)には此(こ)の地の名をえたる
官幣大社(かんぺいたいしゃ)の宮居(みやい)あり

さらに読みやすく!

三島(みしま)は近年(きんねん)ひらけたる
豆相線路(ずそうせんろ)のわかれみち
駅にはこの地の名をえたる
官幣大社(かんぺいたいしゃ)の宮居(みやい)あり

さあ、歌ってみよう!

♪みしまはきんねん ひらけたるー
♪ずーそうせんろの わかれみちー
♪えきにはこのちの なをえたるー
♪かんぺいたいしゃの みやいありー

(御殿場線)
国府津駅→上大井駅→松田駅→山北駅→谷峨駅→駿河小山駅→足柄駅→御殿場駅→富士岡駅→裾野駅→下土狩駅(旧・三島駅)→大岡駅→沼津駅

※御殿場線は、鉄道唱歌の当時の東海道線
※上記は全駅ではなく、筆者の独断と偏見で主な駅をピックアップしたもの

現代の三島駅は2代目。鉄道唱歌の当時の三島駅は、現在の御殿場線・下土狩駅だった

現在の東海道線三島駅(みしまえき、静岡県三島市)は2代目であり、初代の三島駅は現在の御殿場線下土狩駅(しもとがりえき、静岡県駿東郡長泉町)でした。

三島駅(静岡県三島市)
三島駅(三島市)

伊豆国の中心地・三島 東海道の旅人たちを癒してきた宿場町

静岡県三島市(みしまし)は新幹線も止まる重要な街で、歌詞にあるように伊豆箱根鉄道(いずはこねてつどう)駿豆線(すんずせん)との分岐点でもあります。
駿豆線は、鉄道唱歌の当時は豆相鉄道(ずそうてつどう)と呼ばれていました。
また、三島市は東海道五十三次における、計53の宿場町のうちの1つである、三島宿(みしましゅく)がありました。三島宿では、険しい箱根の山から無事下りてきて一安心した旅人たちや、これから険しい箱根の山に挑もうとする旅人たちの休息の地として賑わいました。

東海道新幹線・三島駅(静岡県三島市)

三島市は、かつての伊豆国(いずのくに)の国府が置かれていた場所となります。「国」とは、現在でいう都道府県のようなものです。「国府」とは、現在でいう県庁のようなものです。
つまり、三島市は伊豆国の行政の中心地域だったともいえます。現在でも、三島市は隣の沼津市と並んで、静岡県の東部を占める主要かつ重要な都市です。

官幣大社・伊豆国一宮 三嶋大社

また、歌詞にあるように三島市には伊豆国の一宮(いちのみや)であり、かつての明治時代において「官幣大社(かんぺいたいしゃ)」の位置づけにあった三嶋大社(みしまたいしゃ)があります。
この三嶋大社に参拝する人々をもてなすために、茶店や食事を提供する店で三島の町は古くから繁盛してきたわけです。つまり、「鳥居前町(とりいまえまち)」という位置づけになります。
現在でも、三嶋大社から駿豆線の三島広小路駅(みしまひろこうじえき)までの道路には数多くの飲食店で賑わっている印象です。

三嶋大社(みしまたいしゃ)は伊豆国の一宮であり、近代社格制度における官幣大社(かんぺいたいしゃ)です。

官幣大社(かんぺいたいしゃ)とは、明治時代の全国の神社のランク付けの仕組み(これを「近代社格制度」といいます)であり、この制度において最も位の高い神社のことです。

なお、日本の全ての神社で最も位の高い神社は三重県の伊勢神宮(いせじんぐう)であるといわれています。
伊勢神宮は官幣大社よりも上の位置づけであるので、社格(ランク)すら付いていません。

また、「官幣大社」と似た表現に、これまで何度も述べてきた「一宮(いちのみや)」という概念があります。
一宮とは、その国で最も格式の高い神社のことをいいます。「国」というのは、先ほど述べたように、現在の都道府県のようなもののことをいいます。
一宮のあとに、二宮(にのみや)、三宮(さんのみや)…と続きます。
「官幣大社」という概念は明治時代からであるのに対し、「一宮」という概念は奈良時代の律令制の時代から存在していました。

したがって、一宮と官幣大社は似ているようで異なるため、必ずしも「一宮=官幣大社」ではないこともあります。(ただし、ほとんどの官幣大社は一宮であることが多い。)
例えば、越後国(えちごのくに)一宮は新潟県弥彦村の弥彦神社(やひこじんじゃ)ですが、こちらは官幣大社ではなく国幣中社(こくへいちゅうしゃ)となります。これは鉄道唱歌北陸編第38番でも歌われている通りです。
また、名古屋市熱田区の熱田神宮(あつたじんぐう)は、草薙剣(くさなぎのつるぎ)を祀る官幣大社ではありますが、こちらは一宮ではなく三宮(さんのみや)になります。
なぜ熱田神宮が三宮なのかは諸説あり、ここでは深追いはしません。

富士山から大量にわき出る、三島をうるおす水

三島市は、富士山からの湧き水のため、昔から水が豊富に出る場所でした。
また、多くの文豪から愛されてきた街でもあります。
三島駅から三嶋大社に向かう途中に「水辺の文学碑」というものがあり、多くの文豪による三島関連の一節が掲げられています。
私は太宰治(だざい おさむ)のファンなので、特に以下のものが印象的でした。

…(略)三島の人は、台所に坐(すわ)ったままで清潔なお洗濯ができるのでした。
太宰治

これは太宰治が1942年に発表した「老(アルト)ハイデルベルヒ」という小説の一節です。
生まれつき精神的にも弱かった太宰治はリラックスできる環境で執筆に集中するために、三島や沼津、熱海といった風光明媚な地域を特に好んだのでしょう。

伊豆箱根鉄道・駿豆線(豆相線路)との分岐駅・三島

伊豆箱根鉄道駿豆線は、元々は1890年代の開業時は豆相線(ずそうせん)といい、三島市に東海道線が来なかったことによる街の衰退の回避のために造られた路線でした。
元々は初代三島駅であった下土狩駅(しもとがりえき)からまっすぐ南に延びる線路でしたが、三島駅が現在の位置に変更されたため、三島駅から三島広小路駅(みしまひろこうじえき)にかけて、とても大きなカーブを曲がることとなっています。

「伊豆の踊子」やAqoursと旅する、伊豆の道 「HAPPY PARTY TRAIN」のメロディーとともに

また、川端康成(かわばた やすなり)の小説である「伊豆の踊子(おどりこ)」の舞台となる修善寺(しゅぜんじ)・湯ヶ島(ゆがしま)・天城(あまぎ)方面へも、この駿豆線で向かうことになります。
東京を出発して伊豆箱根鉄道駿豆線に乗り入れ、修善寺方面へ直通する特急「踊り子」号も、川端康成の小説「伊豆の踊子」が由来となっています。

伊豆箱根鉄道・駿豆線 三島駅 アニメ「幻日のヨハネ」ラッピング列車(2024年2月)

伊豆箱根鉄道駿豆線(すんずせん)の発車メロディーにはAqoursの楽曲である「HAPPY PARTY TRAIN」が使用されており(通学・通勤時間を除く)、またHAPPY PARTY TRAINのラッピング車両が2023年現在も運行されています。これは私のような根強いファンにとっては嬉しい限りです。

HAPPY PARTY TRAIN」は、Aqours(アクア)が2017年4月5日に発表した3rdシングルです。
Aqours(アクア)とは、三島市の隣の沼津市(ぬまづし)を舞台としたアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」に登場する9人の女子高生アイドルグループ、およびその声優からなる9人のグループです。

「HAPPY PARTY TRAIN」のPVには主に大分県玖珠郡玖珠町(くすまち)にある久大本線・豊後森駅(ぶんごもりえき)の近くにある豊後森機関庫(ぶんごもりきかんこ)がメインであり、また伊豆箱根鉄道駿豆線の三島駅のホームや、また駿豆線沿線のシーンも登場します。

「HAPPY PARTY TRAIN」のPVの舞台となった、大分県・久大本線にある「豊後森機関庫(玖珠郡玖珠町)」。

私は伊豆箱根鉄道駿豆線に乗るときは、頭の中で必ず「HAPPY PARTY TRAIN」の楽曲が流れます!
いずっぱこ」に乗って、「伊豆の踊子」と、Aqoursの9人に会いに行く旅は、本当にワクワクします。

名所だらけの、「いずっぱこ」沿線の鉄道旅

私個人としては、「いずっぱこ」の最大の魅力は、韮山駅(にらやまえき)~伊豆長岡駅(いずながおかえき)間の、田園風景と富士山をバックに走る区間であると思います。
また、この富士山をバックに走るHAPPY PARTY TRAIN号はとても写真映えすると思います。

伊豆箱根鉄道駿豆線は、とにかく沿線に観光資源が豊富です。狩野川(かのがわ)の景色や「伊豆の踊子」「鎌倉殿の13人」「ラブライブ!」などのゆかりの地も多いため、多くの駅で下車する価値があります。
「旅助け(たびだすけ)」という1日フリー乗車券を1,040円で購入すれば、三島~修善寺間を往復するだけで元が取れるため、お得に旅ができます。

以下、「いずっぱこ」大好きな筆者が、個人的な趣味になりますが沿線のお気に入りの駅をいくつか紹介します。

三島田町駅(みしまたまちえき、静岡県三島市)」
駅近くにはイトーヨーカドーがあり、買い物や飲食の休憩などには便利です。

大場駅(だいばえき、静岡県三島市大場)」
伊豆箱根鉄道の本社の最寄駅となります。

伊豆仁田駅(いずにったえき、静岡県田方郡函南町)」
函南町(かんなみちょう)の中心駅です。函南町役場も、この駅が最寄駅となります。
JR東海道線の熱海駅~三島駅間にある函南駅(かんなみえき)は、どちらかというと函南町の北端部分にあたります。
駅周辺は穏やかな町・平野で心が落ち着くほか、駅南の柿沢川の土手の眺めも壮観です。

韮山駅(にらやまえき、静岡県伊豆の国市四日町)」
旧韮山町時代からの駅ではないかと思われます。
源頼朝が1160年の「平治の乱」で敗れて伊豆に流されたときに、たどり着いて北条政子と出会った「蛭ヶ島(ひるがしま)」もここが最寄駅となります。
また、北条氏の拠点もこの辺りであり、ドラマ「鎌倉殿の13人」ゆかりの地を巡りたい方には最適の駅でしょう。

伊豆長岡駅(いずながおかえき、静岡県伊豆の国市南條)」
旧長岡町時代からの駅であると思われ、現在の伊豆の国市の主要駅となります。
「HAPPY PARTY TRAIN」の舞台でも登場したので、駅舎は「ラブライブ!サンシャイン!!」のファンのための装飾やおもてなしが沢山あります。
この駅からはアニメのメイン舞台の海辺の町である内浦三津(うちうらみと)方面へバスで行けるほか、世界遺産となった「韮山反射炉(にらやまはんしゃろ)」もここが最寄駅となります。狩野川(かのがわ)の土手も、この駅からは近いです。

伊豆の国パノラマパーク(静岡県伊豆の国市)

大仁駅(おおひとえき、静岡県伊豆の国市大仁)」
この駅も狩野川の土手に近いので、雄大な景色が楽しめます。また、狩野川のほとりにはミスター・プロ野球の長嶋茂雄(ながしま しげお)さんが、現役時代にトレーニングを行っていたという「長嶋茂雄ロード」が存在します。

長嶋茂雄さんがかつて練習で走っていた、大仁の狩野川沿いの道(静岡県伊豆の国市大仁)

修善寺駅(しゅぜんじえき、静岡県伊豆市)」
かつての修善寺町の中心駅であり、現在は合併後の伊豆市の中心駅となります。
また、「いずっぱこ」の終着駅となります。
近くには、鎌倉幕府二代目将軍の源頼家(よりいえ)が、後に三代目となる源実朝(さねとも)によって幽閉された修禅寺(しゅぜんじ)があります。
また、この駅から東海バスによって虹の郷(にじのさと)・湯ヶ島(ゆがしま)・天城(あまぎ)・河津(かわづ)・戸田(へた)・西伊豆松崎町方面へバスが出ており、本格的な伊豆への旅の入り口となります。
ともかく、川端康成の「伊豆の踊子」の旅をしたい人は、まずこの修善寺駅へ。

そして、修善寺駅はアニメ「ぽんこつポン子」の舞台となった沼津市戸田(へた)地区、土肥金山(といきんざん)で有名な伊豆市土肥(とい)地区、「伊豆の松島」ともよばれる景色に優れた堂ヶ島(どうがしま)で有名な西伊豆へのバスでのアクセス拠点となります。

本当はもっと「いずっぱこ」沿線や伊豆の旅について書きたいことは山ほどあります。
しかし、今回はメインではないためまた別の機会に書いていきたいと思います。

次は、隣の沼津市の解説をします!

注意
この記事は、「小学生の頃の私(筆者)に教える」というイメージで書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
もし内容の誤りに気付かれた方は、「お前は全然知識ないだろ!勉強不足だ!」みたいなマウントを取るような書き方ではなく、「~の部分が誤っているので、正しくは~ですよ」と優しい口調で誤りをコメント欄などでご指摘頂ければ嬉しく思います。再度こちらでも勉強し直し、また調べ直し、内容を修正致します。何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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