遠軽駅(えんがるえき、北海道紋別郡遠軽町)を出ると常紋トンネル(じょうもんトンネル)を過ぎて、やがて留辺蘂(るべしべ)・北見(きたみ)方面へと進んでゆきます。
はじめに:注意 今回はちょっと暗くて重い内容が混じっています!
※今回の内容は、「常紋トンネル」「タコ部屋労働」という、北海道の歴史における負の歴史を扱うため、結構むごいものになっています。「奴隷労働」などの話題が苦手な方の閲覧は、やや注意です。
閲覧は自己責任でお願い致します。
せめて後半の「余談・雑談コーナー」だけでも読んでいってください。
遠軽駅を出て、留辺蘂(るべしべ)方面へ
遠軽駅(えんがるえき)を出てしばらく南へ走ると、一気に勾配のきつい区間にさしかかります。
そしてその山岳地帯はすごく奥深くて、民家もほぼない(住んでるのは恐らくクマぐらい)という状態になってきます。
どんどん薄暗く恐い峠道にさしかかり、やがて常紋トンネル(じょうもんトンネル)をくぐります。
もし列車がここで故障したら誰も助けに来ないんじゃないかというくらい、とても深くて心細い山道です。
列車がもし壊れたら(ありえませんが)坂を一気に落ちてゆきそうですし、こんな北海道の山奥で迷うと間違いなくクマやヤブカの餌食(えじき)になります。
後述しますが、昔の人は本当に大変な思いをしながら北海道開拓のために線路を作っていったんだなとすら思います。
ちなみに北海道の普通列車で使用される主な気動車について解説しておくと、大きく分けて以下の通りです。
キハ40系:シルバー+緑色の車両です。(現代の北海道を走る車両としては)最も古い部類の国鉄時代からの車両であり、勾配のきつい区間はなかなかスピードが上がらず、時速30kmくらい出すのがやっとになります。坂道はかなりしんどそうです。
キハ54形:シルバー+赤色の車両です。宗谷本線、石北本線、釧網本線などではお馴染みの車両になります。キハ40系よりもちょっと性能がいいのか、勾配のきつい区間でもあまり速度が落ちず、ぐんぐん登ってゆきます。
H100形:いわゆる「DECMO(デクモ)」と呼ばれる、新型車両です。新しいだけあって車内は広く冬の機関でも快適に過ごせます。延命措置をずっと繰り返し続けてきたキハ40形を置き換えることを目標に造られた車両です。
ちなみに石北本線では、2024年3月16日のダイヤ改正をもって、すべてH100形に置き換えられました。これによって険しい険しい石北本線の旅も、かなり快適になることでしょう。
負の歴史「常紋トンネル」をくぐる
常紋トンネル(じょうもんトンネル)は、常呂郡(ところぐん)と紋別郡(もんべつぐん)の間に作られたトンネルであることから、このような名前になっています。
常呂郡(ところぐん)とは、トンネルの南側の地域のことであり、いわゆる留辺蘂(るべしべ)あたりの地域になります。
紋別郡(もんべつぐん)は、トンネルの北側の遠軽町(えんがるちょう)や紋別市(もんべつし)などがある地域になります。
そして常紋トンネルは、以下の通り負の歴史を持つトンネルになります。以下、心して読んでください。
明治時代の北海道の闇:タコ部屋労働
常紋トンネルは、その歴史から残念ながら悪名高いトンネルとして知られます。
それは明治時代にトンネル建設の際に行われた、「タコ部屋労働」という言葉に帰結されます。
「タコ部屋労働」とは、簡単にいうと奴隷のような労働です。つまり「タコ部屋」という狭すぎる部屋に閉じ込められて、強制労働を強いられるようなイメージです。現代でも、狭い部屋に長時間閉じ込められてやるような過酷な労働のことを、比喩的に「タコ部屋労働」と言ったりします。
前回も解説したとおり、明治時代の北海道は、ロシアの南下政策に備えて、急ピッチで鉄道建設することが求められました。
冬のロシアは極寒の土地であり港はみな凍ってしまうため、暖かい土地を求めて南方に進出してくるという南下政策をとっていました。
そのため、南進してくるロシアに対して「いつ北海道が乗っ取られるかもしれない」という恐怖が、当時の日本には常にあったわけです。
しかし、未開のまったく手付かずの北海道の山々を切り開いて鉄道を建設するには、甚大な労力と人手が必要になり、また労働者にとっては「危険」以外の何者でもありません。
というか、ただでさえ極寒で過酷な北海道の山林で、しかもクマやヤブカなどが出てくる険しい山林で働きたいという人なんて、普通に考えて誰もいません。
「そんな場所で働く=死」か、あるいは「伝染病のリスク」もあり、命の保証はまずありません。
ちなみに現代の危険な仕事であれば、「危険手当(特集勤務手当など)」がつき、高給だったりします。例えば、高所作業・坑内作業・爆発物取扱作業・放射線取扱作業・疫病に感染するリスクのある作業など、こうした「危険」かつ人々が敬遠しそうな特定の作業・職種に関しては、「危険手当」に該当する追加加算が(給料に対して)なされるようになっています。
話を戻します。
こうした人々が憚(はばか)るような危険な鉄道線路の建設ですが、日本政府にとっては先述の通り南下してくる(かもしれない)ロシアの脅威を、黙って見過ごすわけにもいきません。
そのため日本政府は、線路建設の作業員たちを集めるために、ヤバい方法を思いつきます。
つまり人権を無視したヤバすぎる手法で、トンネル・線路建設に携わる人々を集めることにしたのです。
「北海道でめっちゃ給料のいい仕事があるよ!」などと嘘をついて、本州からたくさん人を騙して北海道に連れてきました。
それに加え、前々回も少し解説した網走監獄(あばしりかんごく)の囚人たちをも連れてきて、線路建設の労働に従事させたのでした。
網走監獄には、明治政府のやり方に反対・批判した人達が国家反逆罪として逮捕され、北海道の網走まで連れて来られた人達(囚人)がたくさんいたのでした。
そして連れて来られた人達は、「タコ部屋」と呼ばれる窮屈かつ雑多な小屋に閉じ込められ、さらには鎖で繋がれ、クマやヤブカも出るような未開の山林を切り開いていったのでした。
ろくな食事も与えられず、脱走しようものならムチで袋叩きをされるという過酷な状況であり、作業の途中でクマに襲われて死亡する人や、ヤブカに噛まれて伝染病が蔓延するという始末でした。
過酷すぎる労働で、次々倒れていく人々
もちろんそんな過酷な状況なので、人々は次々に過労・餓死・病気・衰弱などが原因で死亡してゆきました。
しかも酷いのが、その亡くなった人々の遺体を、その辺りに(線路の近くに)投げて放置したり、あるいは常紋トンネルの内部に人柱(じんちゅう)として埋められたともされています。
人柱(じんちゅう)とは、昔の日本でよく行われていた儀式の一つであり、人を建物などに埋めることによって、自然災害を軽減して建物の安全を図ろうとしたという、宗教的な慣習です。
しかし今だったら普通に考えて、人権を完全に無視したかなりむごいものです。
そのため、常紋トンネルには「人柱」が埋まっているという伝説が長年にわたって広まってはいましたが、それらはあくまで「都市伝説」「噂」レベルでした。
しかし1960年代における縄文トンネルの改修工事の時に、工事中にトンネル内から本当に埋められた人骨が出てきたとされています。
この事によって、人柱の伝説は「噂」ではなく「事実」だったことが明らかになったわけです。
そして今でも、石北本線の沿線のあちこちには、投げ捨てられた未発見の人骨が埋まっているともされています。
そして常紋トンネルの南側には、殉職者の霊を慰めるための「常紋トンネル殉難者追悼碑」が建てられています。
常紋トンネルの「負の歴史」を、繰り返さないために
現代の日本でこのような事をやれば、「労働基準法」「労働安全衛生法」「労働契約法」などの関連法規に、何もかも違反することになります。
こうした行為はパワハラという次元を完全に逸脱した「違法行為」となります。
なので万が一・億が一、こんな職場や工事現場などが存在すれば、即座に逃げ出して、録音や録画などの証拠とともに労働基準監督署や、弁護士・裁判所・行政などのしかるべき場所に持ってゆきましょう。
管理監督者は、いかなる場合も労働者の安全に配慮する義務(安全配慮義務)があります。
また不当な「不払い労働」や、労働者の安全や人権を無視した労働は、決して行われてはなりません。また契約時とは異なるような、詐欺のような労働条件も違法です。
今回の場合は労働人は、騙して北海道に連れてこられているので、詐欺罪(刑法246条)にも該当するかもしれません。
このように、現在では労働者を守るために、関連法規(法律)がものすごく厳しくなっているのです。
ただし、このように労働者が法律でガチガチに守られすぎることで部下の発言力が増し、部下が上司に対して何でもかんでも「それはパワハラです!」などと主張し、上司がかえって萎縮したりすることで、管理職の人々が鬱病などで倒れたり、また管理職を希望する若手社員が減少する、などという事態も起きています。
このあたりの労働者と管理職のパワーバランス(力関係)の調整は複雑で難しいですね。
留辺蘂(るべしべ)に到着!「る」で始まる珍しい地名
そんな険しい常紋トンネルをくぐり抜けて坂道をずっと降りていくと、西留辺蘂駅(にしるべしべえき、北海道北見市留辺蘂町)を経て、やがて留辺蘂駅(るべしべえき、北海道北見市留辺蘂町)に到着します。
留辺蘂(るべしべ)は元とは「留辺蘂町(るべしべちょう)」でしたが、今は北見市(きたみし)の一部となっています。
留辺蘂とは後述の通り「る」で始まる珍しい地名であり、その由来はもちろんアイヌ語です。しかしその語源や意味については、諸説あるようです。
なお、アイヌ語で「別(べつ、ペッ)」「部(ベ、ペッ)」とは「川」という意味なので、町内を流れる無加川(むかがわ)とも関係あるのかもしれません。
人類の長い歴史において、寒冷でお米がずっと育たなかった北海道(蝦夷地)においては、「魚」「川」の存在は重要でした。つまり、アイヌ民族にとっては、「魚」と「川」の存在は、神様と同じくらいとても重要だったのです。
なので北海道では「川」に由来する地名が多く、「川」はアイヌ語で「ペッ(別)(部)」「ナイ(内)」というので、北海道には「~別」「~部」「~内」という地名がとても多いです。
そして留辺蘂は、残念ながら上記のタコ部屋労働に駆り出された人たちの拠点にもなっていたのでした。
余談・雑談:しりとりで有利!数少ない「る」で始まる地名 あなたの語彙力を鍛えよう
留辺蘂(るべしべ)は、数少ない「る」で始まる言葉です。この「る」で始まる言葉は、「しりとり」で特に有利になります。
なぜなら、しりとりでもし相手が「る」で終わる言葉で攻めてきたときにも、対処・対応しやすいからです。
しりとりで負けそうになったら、留辺蘂(るべしべ)は絶対覚えておきましょう!
「る」で始まる言葉は、しりとりの時には意外と出てこないものです。
以下を最低限覚えて、皆さんの語彙力(ボキャブラリー)を鍛えましょう!
・留萌(るもい):同じく北海道の地名です。今や廃止となった留萌本線(るもいほんせん)には、かつて「増毛駅(ましけえき)」がありました。
・類語(るいご):「語彙力」「ボキャブラリー」「言葉のレパートリー」などはみな類語です。
・流布(るふ):広く世界に知れ渡ることです。
・ルクス:明るさの単位です。晴れの日は10万ルクス、曇りの日でも3万ルクスはあります。部屋の明るさは500ルクス程度なので、やはりたまには外に出て日光浴をすることが健康維持には重要です。
・ルター:16世紀のドイツの人物で、宗教革命を行った人です!つまり「免罪符」を販売しまくって儲けていた従来の教会や宗教を批判したのがルターということです。
・ルイージ:マリオの弟です。ちなみに「ルイジー」ではないですよ!しかし未だに「ルイジー」と言う人が一定数います。ちなみにルイージとはイタリア人の名前であり、「マリオと類似しているから”ルイージ”だ」という説は俗説です。
・累進課税制度(るいしんかぜいせいど):年収が上がるにつれ、税金(税率)も上がってゆく制度のことです。ちなみに年収900万円を越える(=税率が33%にはね上がる)よりも、少し低い年収である899万円(=税率が23%で済む)に(経費で落とすなどして)抑えた方が、税金が安くなってコスパ良い?金持ちになればなるほど、税金でもっていかれます・・・
・涙腺(るいせん):「涙腺がもろい=泣きやすい」という意味です。
・ルーティン:繰り返し作業のこと。1日のルーティン。
・ルーティング:IPパケットを転送することです。BGPやOSPFなどのプロトコルがあります。
・ルーター:上記の「ルーティング」を行う装置です。しかし現代は機器ではなく、クラウド(仮想的なデバイス)に置き換えられています。
・ルックス:「人は見た目じゃない!」といいつつも、結局見た目を重視し相手の価値を評価するような心理的効果を、ハロー効果といいます。
・ルッキズム:ルックス至上主義の風潮のことです。
・ルイジアナ州:アメリカ南部にある、テキサス州の東隣にある州です。最大の都市はニューオリンズです。
・ルソン島:フィリピンの島です。フィリピンで7,641もある島のうち、最大の島です。首都マニラもこの島にあります。日本でいう「本州」にあたる島ですね。
・ルネサンス:「復活」を意味する言葉で、アニメ「タートルズ」に出てくるレオナルド、ドナテロ、ラファエロ、ミケランジェロは、すべてルネサンス期の画家の名前です。
・ルーマニア:ウクライナの南、オーストリア・ハンガリーの東、そして黒海の西に接する位置に存在する国です。
・ルワンダ:アフリカ大陸の中部、コンゴ共和国の東隣にある国です。
・ROUAGE(ルアージュ):日本のV系ロックバンドです。私(筆者)は「Cry for the moon」という曲が好きでした。
・LUNA SEA(ルナシー):日本のV系ロックバンドです。河村隆一(RYUICHI)さんの声やSUGIZOさんのギターがサイコーです。「ROSIER」や「DESIRE」は神曲ですね。
・ルビー:赤い宝石です。「RED GEM(赤い宝石)」ともいいます。アジアでしかなかなか採れない珍しい宝石のため、希少性が高く値段が高いです。
・ルビィ:筆者が好きなアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」に登場する、Aqoursのメンバー、黒澤ルビィちゃん。また「幻日のヨハネ」にも登場する妖精族です。気が弱くて臆病なので、「ピギィィ」と鳴きます。
・Lucy in the Sky with Diamonds:ビートルズが1967年に発表した、アルバム「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」の3曲目に収録されている楽曲です。ジョン・レノンが作った曲で、当時はコンサート活動を停止していたビートルズがライブでの再現性を無視した芸術性の高いアルバムを代表する曲です。
・るんるん♪:嬉しいときの様子を表す擬態語(ぎたいご)です。
以上、こんなにあるんですね!
(ちょっとマニアックなものも入っています)
あなたは「る」で始まる言葉、他にいくつ知っていますか?
これだけ語彙力を鍛えておけば、「しりとり」では無敵です!!
今回は「常紋トンネル」「タコ部屋労働」などというちょっと重くてダークな話題がメインだったので、正直この本題と全然関係ない「る」で始まる言葉特集をやってよかったかなぁ、と思っている次第です。
「留辺蘂(るべしべ)」の話題からここまで派生したというわけですね。
正直今回は、本編よりもこの余談・雑談コーナーを書いているときの方が面白かったです(笑)
次は、北見(きたみ)に止まります!
【注意】
この記事は、「旅行初心者に教える」ことを目的地として書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
もし内容の誤りに気付かれた方は、「お前は全然知識ないだろ!勉強不足だ!」みたいなマウントを取るような書き方ではなく、「~の部分が誤っているので、正しくは~ですよ」と優しい口調で誤りをコメント欄などでご指摘頂ければ嬉しく思います。再度こちらでも勉強し直し、また調べ直し、内容を修正致します。何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
コメント