今回は、電車を動かすために必要な、「電気」についての話題になります!
完全に「理系」の話ではありますが、なるべく「文系」みたいな感じでわかりやすく話してゆきます!
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電車を動かすのに必要な「電気」
電気は、当たり前ですが電車を動かすのにはなくてはならない存在です。
我々が普段乗っている電車は、当然ながら電気によって走っています。
一方、気動車はディーゼルエンジンで走っているため、正確には「電車」ではありません。ディーゼルエンジンは軽油で動きます。
直流・交流とは?
電車はいうまでもなく「電気」で走っているわけですが、その電気には「直流」「交流」の二種類があります。
それぞれ長所・短所があるので、その状況や地域によって使い分けられているわけです。
直流(ちょくりゅう)は、一方にしか流れない電気です。Direct Currentというので、「DC」ともいいます。
これを水とホースで例えると、水が同じ方向に、ずっと同じ強さで同じ方向に流れるというイメージです。
しかし水の場合は、蛇口のきつさを変更すれば、水の強さ加減を調節することはできます。
理科の授業のときにやった、豆電球と乾電池を使った回路(サーキット)がありましたよね。あれは、電気がずっと同じ方向・同じ強さで、まるでサーキットのようにグルグル回るというわけです。あれがまさに直流のイメージです。
交流(こうりゅう)は、時間と共に流れる方向と力が変わる電気です。英語で”Alternating Current”というので、「AC」とも表記します。
水とホースで例えたいところですが、もちろんこんな水の仕組みは存在しません(ただし蛇口のきつさを変更すれば、水の勢いを変更することは可能です)。
しかし電気の分野においては、これを特殊な仕組みで実現させています。
交流では、周期的に電圧を上げたり下げたりすることができます。
つまり、例えば
6,600V→100V→0V→-100V→-6,600V
などのように、電圧を上げたり下げたり、また逆方向(-)に変えたりできます。
実際にはマイナスのボルトなんてものは存在しないのですが、これは電気が流れる向きが逆向き(-)になるという意味になります。
直流の場合だと、常に同じ電圧で同じ方向(+)にしか流せません。
しかし、交流の場合であれば特殊な技術を使うことで、電圧の大小を調整できたり、また逆方向にも流せたりします。
その代わり、交流には後述するような、それこそ「数学」や「物理」の知識がからんでくるような複雑な技術を必要とします。

電気を押し出す「電圧」
電気を押し出すための力のことを、「電圧」といいます。
この電圧が高ければ高いほど、より遠くへ電気を送ることができます。逆に電圧が低いと、あまり遠くへ送ることができません。
しかしこの「電圧」は、安全のためにはうまくコントロールしないといけません。
もし誤って電圧が高すぎると火災などの大事故につながる可能性があるので、電圧はくれぐれも適切に扱わなければなりません。
電圧の単位は、ボルト(V)で表します。
電気や「電圧」の話をするときは、水とホースの関係に置き換えて考えるとわかりやすいです。
「水の動き」と「電気の動き」は、とてもよく似ているのです。
電圧は、「水圧」と同じだと思ってください。
電圧とは、電気を押し出そうとする力のことです。
水圧とは、水を押し出そうとする力のことです。
これを水とホースで例えると、水をより遠くへ送るためには「水圧」を高くすればいいのと似ています。
しかし、もし水の勢いが強過ぎると「水浸し」という大惨事になるため、それを防ぐためにも「水圧」は蛇口で適切にコントロールしなければならないのと似ていますね。
なぜ「直流」と「交流」を使い分ける必要がある?
直流と交流には、それぞれメリットとデメリットがあります。
なので、世の中で我々が電気を使いこなすためには、直流と交流の仕組みをうまく理解し、うまく使い分けることが必要になってくるのです。

高校で習った「三角関数(sin cos)」が役に立つ
交流の仕組みを理解するには、数学と物理の知識が必要となってきます。
高校のときに「三角関数」って習いましたよね。
サイン(sin)、コサイン(cos)、タンジェント(tan)のアレです。
例えば、以下のようなものを覚えているでしょうか。
- sin0度=0
- sin90度(Π/2)=1
- sin180度(Π)=0
- sin270度(3Π/2)=-1
- sin360度(2Π)=0
(「Π」は、「パイ」という記号です)
あの波形を思い出してください。
周期的に上がったり下がったりする、あの曲線です。
これは、定期的に上下を繰り返す様子を表したものです。これを交流に置き換えると、時間とともに電圧が変化するというものです。
このときの「時間」のことを、物理では「位相(フェーズ)」といいます。
高校のとき「サインコサインなんか覚えて何の役に立つんだ?」と思われた人も多いかもしれませんが、実はあれって、電車を走らせるためにすごく役に立っているんですよね。
高校や大学などで勉強する「物理」「電気工学」などの知識は、こういう隠れた部分で役に立っている、ということですね!
電圧が下がる「電圧降下」と、それに対応する仕組み
発電所から送られてくる電圧は、数十万ボルトという超がつくほどの高圧で流れてきます。
しかし、家電製品で使われる電圧はせいぜい100ボルトです。
つまり、発電所から流れる数十万ボルトの電気をそのまま家電製品に使ってしまうと、あっという間に壊れてしまいます。下手したら大事故にもなるでしょう。
ではなぜこんな高い電圧で送るのかというと、電圧は距離が遠ければ遠くなるほど弱くなるという「電圧降下」という現象が起こるからです。
ではなぜ「電圧降下」が起こるのかというと、それは電気が通る道にはどうしても「電気抵抗」が生まれてしまうからです。
たとえ一見したら何もないような綺麗な伝送路であっても、実際には小さなゴミや微粒子、原子などといった様々な障害物などが存在したりします。そうした「電気の力を減少させる要素」は、自然界にたくさん存在しているわけです。そして、地球上ではそれらを完全に取り除くことは出来ません。「どれだけマシにできるか」なのです。
そのため、電気を送る距離が遠くなればなるほど、この「電気抵抗」などの要素により「電圧降下」が起こってしまうわけです。
これは水とホースに例えると「勢いよく(高い水圧で)流さないと遠くまで流れてくれない」という現象と似ています。水が遠くへ行けば行くほど、水圧は低下してヒョロヒョロになってしまいます。
最初はこの「電圧降下」を考慮して、それだけ高い電圧で流すため、各地の「変電所」とよばれる設備において、元々は数十万Vもあった電圧を、徐々に電圧を下げてゆきます。
そして、数百~数千Vなどの実用的な電圧にまで下げてゆきます。
やがて最後には家庭・家電や電車などに対して供給されていく、というわけです。
直流電化ではこうした「電圧降下」に対して電圧を再び上げるため、たくさんの「変電所」を必要とします。そのため、その変電所の(設備や人件費などの)ためにも、維持・管理コストがかかってきます。
ちなみに変電所とは、先述の通り電圧を上げたり下げたりするための設備のことをいいます。
一方、交流電化は変電所を(直流電化ほどは)必要としません。
なぜかというとトランス(変圧器)というものを用いて電圧の変更・増減が行える(いじれる)ため、直流に比べると電圧のロス(電圧降下)の影響を受けにくくできるためです。
なので交流電化は、変電所をたくさん建てたり維持管理しなくてよい分、コストがかかりません。
しかし電車の車両本体に変圧器を積む必要があるため、車両一体あたりのコストや重量が上がるというデメリットがあります。つまり、交流もいいことばかりではないのです。
したがって、列車本数がめちゃくちゃ多い都市部では、車両コストを下げられる直流電化が向いています。
これにより変電所の数も増えますが、そもそも利用者の多い都市部においては充分に(設備投資にかけたコストの)元が取れるため、問題ありません。
一方、人や列車本数が少ない都市部以外では、変電所の数が少なくてすむ交流電化の方がコスパが良いといえます。
ただし、そもそも人が少ない地域では、「電車」ではなく「気動車」で動く非電化区間になっていることが多いです。
乗客数があまり見込めないような地域では、コストをかけて電力設備を導入しても元が取れにくいため、最初から「電化」はせずに「非電化」になっているというわけですね。
交流のメリット:送電ロスが少なくできる
もう少し難しい話をしましょう。
「同一電力を送電する場合のロスは、おおむね電圧の2乗に反比例する」
という法則があります。
ちょっとわかりにくいですね。
これをわかりやすく意訳すると、
「電圧が小さいほど、電力損失(ロス)が大きくなる」
ということです。
しかし、これでもまだわかりにくいですね。
例えばホースで水を送るとき、水圧が高い方が勢いよく水を送ることができ、また遠くまで送ることができます。
まあ、当たり前(体操)ですよね。
そして蛇口をいっぱいに捻(ひね)れば、水が勢いよく出てきます。
まあ、当たり前田のクラッカーですね(←こちらはやや古いギャグ。知ってる人います?笑)。
まあ冗談はさておき、同じ量の水を送るときであっても、水圧が大きければ「こぼれ落ちる量」は少なくなります。
しかし、水圧が小さければ遠くまで届かず、水が途中で止まったり溢れたりして「台無し」になってしまいます。
水がもったいないですね。
この「台無し」こそが、電気でいうところの「電力損失」になります。
まあ、これがわかればOK牧場です。
(↑このギャグ分かる方います?)
ここまでのギャグまとめ
- 当たり前体操:吉本のお笑いコンビ・COWCOW(カウカウ)によるギャグ。
- 当たり前田のクラッカー:1960年代に、故・藤田まことさんによって流行ったギャグ。
- OK牧場(おっけーぼくじょう):1990年代、ガッツ石松が使っていたギャグ。
話が逸脱してしまいましたが、話を元に戻します(たまにはボケさせてください・・・)。
以上のことから、電圧はできるだけ高くして送った方が、送電のときにはより遠くへ届いてくれるため有利となります。
交流では、先述の通りトランス(変圧器)によって電圧の強弱の調整をすることが出来ます。
そのため、電圧降下によって一度下がった電圧を、再び上げることができます。
これにより、適正な電圧を保つことができるため、電圧が足りないことによる電力損失(ロス)の影響を下げることができるというわけです。
九州と東北以北では「交流方式」になっている
日本では、在来線では直流1,500Vまたは交流20,000Vの電圧が採用されています。
在来線の場合は、さらに「直流区間」と「交流区間」の両方が存在(混在)しています。
また交流方式の方が大容量送電ができるため、直流方式よりもより大きな電力が得られるという特徴があります。そのため、新幹線のような高速運転のときには交流方式が採用されているわけです。
在来線の交流電化で走っている区間としては主に、
- 九州すべての地域
- 東北以北のすべての地域(北海道含む)
などの列車エリアがあります(もちろん、他にも交流区間はいくつかあります)。
例えば九州~山陽、あるいは関東~東北などのように、直流区間と交流区間を同じ列車・同じ方式でまたぐことは、そのままでは不可能となります。
そのため「方式の切り替え」が必要となります。
その際、デッドセクションと呼ばれる、電気が通らない区間を通ります。電気が通っていない間に、直流と交流を切り替えるというわけです。
富士川を境に、交流の周波数は分断される
さらに交流方式の周波数は、静岡県の富士川(ふじかわ)を境に、東側が50Hz、西側が60Hzに分かれています。
ちなみに周波数(frequency)とは、交流において「+」と「-」が入れ替わる頻度のことです。sin・cos(三角関数)の曲線でいうと、この「曲線の波の頻度」のことです。
この頻度が多いと、周波数が高いというわけです。逆に、周波数が少ないと、ゆるやかな波(曲線)を描くようになるというわけです。

この「富士川を境に周波数が異なる」というのは、明治時代に日本でも電気事業が始まったときに、
- 関東地域では、ドイツから50Hzの発電機を導入
- 関西地域では、アメリカから60Hzの発電機を導入
したという歴史的経緯があるためです。
そして、その時から元々の仕様が変えられることなく、現在に至っているというわけです。
なので九州は60Hz、東北以北では50Hzの周波数になっています。
ちなみな世界中のほとんどの国は「50Hz」か「60Hz」のどちらか一方のみだそうですが、両方の周波数が混在している珍しい国は日本くらいだそうです。
そして交流の周波数が異なると、同じ車両で走らせることができません。ただし、静岡県を走る東海道本線の場合は直流方式なので、そもそも関係ありません。
なお富士川をまたぐ東海道新幹線(=交流方式)では、全区間で60Hzの周波数が採用されています。これは、富士川よりも東側の50Hzを、60Hzに変換して走っているためです。
このため、極端な例にはなりますが青森から走ってきた列車が、一度も乗り換えることなく鹿児島まで行くことは、絶対不可能です。青森を走る列車は50Hzの交流方式にチューニングされているため、関東~山陽までの直流区間を走ることができません。さらに九州の60Hz区間を走ることもできないため、青森から鹿児島まで、全く同じ電車でたどりつくことは出来ないわけですね。当然ですが必ず「乗り換え」が必要になります。
新幹線では、交流方式のみが用いられる
新幹線の場合は25,000Vの交流方式が採用されています。先述の通り、交流方式の方が直流方式よりも、より大きな電力を得ることができます。そのため、高速運転が必要となる新幹線には、はじめから交流方式が採用されたわけです。
新幹線は時速200km以上での高速運転が求められるため、在来線よりもより大きな電力が求められます。なので新幹線の方が、電圧が高くなっているというわけですね。
新幹線の電圧は、先述の通り25,000Vの交流方式になっています。
これは、在来線の交流20,000Vよりも高圧になっており、これによって高速で走れるようになっています。
新幹線の変電所では、電力会社から送電されてくる20万V以上にもおよぶ非常に高圧な電気を、新幹線にも使えるような電圧に下げて調整し、25,000Vの電圧に変換して走らせているというわけです。
なぜ在来線は、直流区間と交流区間が混在しているのか?
では、なぜ在来線は「直流区間」と「交流区間」が混在しているのでしょうか。
元々の日本の鉄道では、直流電化が主流(先)であり、交流電化は後から入ってきた方式でした。
1950年代~1960年代くらいになると、交流の方が直流よりも大きな電力を得られるという時代になっていっため、先述の九州・東北以北の区間では交流電化がどんどん進められていったのでした。
しかし、先述の通り、日本では富士川を境に交流の周波数が異なるため、すべての鉄道区間を「交流」にするのは、とても現実的ではありませんでした。先ほどの例の通り、青森から鹿児島まで、全く同じ電車で向かうことは不可能だということは説明しました。
そして後の1980年代以降に、たとえ直流区間であってもVVVFインバーターと呼ばれる設備を導入することで、直流を交流に変換することで交流区間と同じ性能を発揮するということが可能になりました。
そのため、すべての区間を「交流」にするという必要性そのものがなくなったため、今では直流と交流の区間が混在しているというわけです。
まとめ:直流と交流の違い、メリット・デメリットなど
いかがだったでしょうか。以下に今回の要点をまとめておきます!
- 電気は、電車を走らせるためには不可欠である。
- 電圧とは、電気を押し出すための力である。ホースの中の水を押し出すための水圧と似ている。単位はボルト(V)である。
- 電圧が小さいと、遠くに行けば行くほどロス(電力損失)が起こりやすくなる。これは水とホースで例えると、水を押し出す力(水圧)が弱いと、水が遠くへ行きにくいのと同じ。
- 直流は、一方通行にしか流せない方式である。交流よりも歴史が古く、シンプルな仕組みである。
- 交流は、時間とともに周期的に変化する方式である。変圧器を用いて電圧を変えられるが、その技術や仕組みは複雑である。
- 交流を理解するには、数学や物理の知識・技術が必要であり、複雑な仕組みになる。「位相」や「三角関数」の知識が必要になる。
- 「直流」と「交流」は、それぞれにメリット・デメリットがあるため、時と場合によってうまく使い分けなければならない。
- 直流は、遠くに行けば行くほど電圧が弱くなるため、電圧を上げるための変電所が必要となる
- 交流は、トランス(変圧器)によっで電圧を増減できるため、変電所は必要がない。その分、コストが安くなる。
- 電車の本数が多い都市部などでは、乗客数が多く変電所の数を多くしてもコストの元が取れるため、直流方式の方がよい。また、変圧器を搭載する必要が無いため、車両を軽くできる。
- 電車の本数が少ない地域では、変電所の数が少なくてもすむ交流方式の方がよい。
- 交流においては変圧器(トランス)を車両に載せないといけないため、車両の重量が重くなる
- 日本では、「直流区間」と「交流区間」が混在している。
- 日本の交流方式では、富士川を境に50Hzと60Hzの周波数に分かれている。そして周波数が異なると、同じ車両で走らせることができない。
- 東海道新幹線は、富士川より東側では50Hzを60Hzに変換して走っている
- 交流方式の方が、大きな電力を得ることができる。しかし先述の富士川などの問題により、すべての区間を交流にするのは現実的ではなかった。
- VVVFインバーターなどの登場により、直流を交流に変換し、直流区間でも交流方式のときと同じ性能で走れるようになった。
今回はここまでです。
お疲れ様でした!
おわりに・ちゅうい!
この記事は、「旅行初心者に教える」ことを目的地として書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
もし内容の誤りに気付かれた方は、「お前は全然知識ないだろ!勉強不足だ!」みたいなマウントを取るような書き方ではなく、「~の部分が誤っているので、正しくは~ですよ」と優しい口調で誤りをコメント欄などでご指摘頂ければ嬉しく思います。再度こちらでも勉強し直し、また調べ直し、内容を修正致します。何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
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