聖高原(長野県)の歴史と「麻績方式」について、わかりやすく解説! 篠ノ井線の旅【前編】

聖高原長野県)と長野県のリゾート開発方式である麻績方式について、旅行・地理・歴史に詳しくない方にもわかりやすく解説してゆきます!

冠着山のふもと・姨捨駅からの景色(長野県千曲市)

冠着山のふもと・姨捨駅からの景色(長野県千曲市)

今回からは、2回に渡って長野県の篠ノ井線・

  • 聖高原(ひじりこうげん)
  • 冠着山(かむりきやま)

の話になります。

今回は「前編」で、次回は「冠着山」についての話題になります!

筆者現地探訪日:2024年4月
2025年4月18日に起きました、長野北部地震で被災された方々へ、お見舞い申し上げます。

まずは、松本駅からスタート

今回の目的地である

  • 聖高原駅(ひしりこうげんえき、長野県東筑摩郡麻績村)
  • 姨捨駅(おばすてえき、長野県千曲市)

へは、まず松本駅からのスタートとなります。

松本駅(長野県松本市)

松本駅(長野県松本市)

長野県松本市まつもとしは、ご存じの通り国宝・松本城まつもとじょうで有名です。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。

中央線鉄道唱歌 第43番 松本城(深志城)と女鳥羽川 信濃国の重要拠点の歴史ある街
中央線鉄道唱歌の歌詞を、わかりやすく解説しています!鉄道の知識のみならず、歴史や旅行を楽しむためのノウハウを、鉄道に詳しくない人でも楽しめるよう解説してゆきます!

聖高原へ向けてスタート

松本駅を出ると、犀川さいがわに沿いながら、篠ノ井線しののいせん長野方面へと向かいます。

犀川の景色(篠ノ井線の車窓より)(長野県)

犀川の景色(篠ノ井線の車窓より)(長野県)

この沿線については、以下の各記事でも解説していますので、ご覧ください

中央線鉄道唱歌 第45番 松本を出て、犀川沿いをゆく 田沢・明科を過ぎゆく
中央線鉄道唱歌の歌詞を、わかりやすく解説しています!鉄道の知識のみならず、歴史や旅行を楽しむためのノウハウを、鉄道に詳しくない人でも楽しめるよう解説してゆきます!

聖高原駅に到着

やがて、聖高原駅(ひじりこうげんえき、長野県東筑摩郡麻績村)に着きます。

聖高原駅(長野県東筑摩郡麻績村)

聖高原駅(長野県東筑摩郡麻績村)

聖高原駅は、元々は麻績駅おみえきという名前でした。
それは、麻績村おみむらという自治体にある駅だから、ということになります。

しかしながら、「麻績おみ」はとても読みにくい、いわゆる「難読駅名」となります。

そのため、

  • より覚えやすい駅名
  • 観光地「聖高原」の名前を冠した駅名

にしようということで、地元の要望・要請もあり、現代の「聖高原駅」に改称された、という経緯があります。

聖高原(ひじりこうげん)

聖高原駅(長野県東筑摩郡麻績村)

聖高原駅(長野県東筑摩郡麻績村)

聖高原ひじりこうげんは、長野県東筑摩郡ひがしちくまぐん麻績村おみむらに存在する高原・リゾート地になります。

この地域(聖高原のあたり)におけるリゾート開発において、かつて「麻績方式おみほうしき」という、長野県ならではの独特の手法が採用されたのでした。

長野県ならではのリゾート資金調達方法「麻績方式」

聖高原の開発のための、資金集めのための方式

聖高原(ひじりこうげん)のリゾート施設を開発してお金を儲けていくためには、そもそも「開発」をしていかなければなりません。

例えば、

  • 別荘地
  • スキー場
  • ゴルフ場
  • ホテル
  • 旅館
  • 生活必需品などを売るための店など
  • 道路
  • 土地を工事するための建設費用
  • きれいな道路を工場するための、人件費など

などのために、たくさんのお金が必要になってくるわけです。

これらのお金をかけて、ようやくお客様に来てもらえる「リゾート地」が出来るというわけです。

聖高原のリゾート地開発のための資金調達には、「麻績方式(おみほうしき)」という、長野県ならではの独特の開発方法が用いられたのでした。

なぜ聖高原に、リゾート地が必要だったのか

ではなぜここまでお金をかけてまで、リゾート地を作る必要があったのか。

それは、農作物を干上がらせないための、ダム建設のための資金が必要だったからです。

地域にダムを作ったり、農地に水を提供し、町を発展させていくには、とにもかくにも「税収」が必要になってきます。

その税収を補うために、「麻績方式」が考え出されたといってもいいでしょう。

元々は同じ長野県の「菅平法式」からはじまった

今回メインで扱う「麻績方式おみほうしき」は、長野県上田市やや北に存在する、菅平すがだいらダムというダムの建設資金集めのために使われた「菅平方式すがだいらほうしき」と並ぶ方式です。

なぜ、ダムが必要だったのか?

なぜ、当時の長野県でダムが必要だったのかというと、人々の農業に使う水を確保するためでした。

ダムの建設のために、レジャー開発による収益によって、建設資金をしようとしたわけですね。

ダム開発資金集めのために、リゾート地を開発する必要があった

つまり、聖高原のリゾート開発は、

  1. ダムなどの公共インフラを、リゾート地開発することで、
  2. レジャーで遊びに来たお客様にお金を落としてもらい、
  3. その利益・収益から、固定資産税事業税などを、自治体や長野県に対して納めてもらい、
  4. その税収をもとに、長野県の地元やに対する開発・発展をさせていこう

という目的によるものです。

  • 固定資産税:建物などの「資産」を持っていると、それに対してかかってくる税金
  • 事業税:事業の「売り上げ」「所得」などにかかってくる税金

夏でも涼しい高原地帯の多い、長野県ならではの出来る手法ですね。

「菅平方式(すがだいらほうしき)」とは

菅平方式すがだいらほうしきとは、長野県上田市にある、「菅平ダム」の建設のときに用いられた手法です。

まずは、地元の人たちが元々持っていた土地を、県に対して無償で貸し出しをするわけです。

さらに長野県が、

  • 別荘保養地
  • リゾート地

などとして、リゾート開発をしてゆきたい事業者に対して土地を「貸し出し」していくわけです。
※「売る」わけではありません。

法律的には、「地上権の譲渡」になります。
つまり、「この土地で好きなように建物を建てていいよ」という権利を付与してあげるわけです。

こうした「リゾート事業」によって得られた利益から、固定資産税事業税という形で、自治体(村や長野県など)に対して納めてもらうわけです。
こうして得られた税収により、ダム等といった地域インフラなどの事業費に充てる、というものです。

麻績方式は、リゾート開発手法の先駆けともいわれています。

「菅平方式」がはじめられたきっかけは、農地の干ばつだった

かつて長野県の上田市・東御市とうみしの一帯では、水不足による干ばつ・農作物の不作が頻繁に発生していたのでした。

こうした干ばつ・不作防止のために、ダムを建設することになったのでした。

そのため、地元のお金持ちたちが持っていた土地を、長野県へと無料(タダ)で譲り渡したのでした。

リゾート地で得られた利益を、ダム建設費用に

長野県が、その(地元から無償で)譲り受けた土地を、別荘保養地(リゾート地)として、発展させていったのでした。

その無償譲渡された土地を、リゾート地を開発したいという事業者に対して分譲(※)していくわけです。
これによって、リゾート地として、お金を得ていくようになったのでした。

分譲(ぶんじょう)とは、分割譲渡の略です。
つまり、土地を分割して、譲り渡すことを意味します。

その儲かった利益(から納められた税金)によって、

  • ダム建設をしたり、
  • 土地を良くしていくための、工事や建設事業

などを実施していったのでした。

さらに、そこから余った利益を、地元に分配・還元してゆき、地元の人々にも恩恵がもたされたのでした。

菅平方式の成果

「菅平方式」によって、上田市周辺の地域の観光地化・リゾート地化が、一気に進んでいったのでした。
その結果として、別荘・ロッジなどがどんどん建っていったのでした。

やがては多くの人々が観光やレジャーでやってくるようになり、地元にお金を落としてくれるようになったのでした。
長野県は標高が高く、夏でも涼しい土地が多いため、これは強みですね。

この「菅平方式」が成功したことにより、長野県の公営による高原・リゾート開発事業の、「モデル」「典型」となったのでした。

麻績方式」も、これと同じような仕組みによるものになります。

1968年に完成した「菅平ダム」の成功

菅平ダムは、こうして1968年10月に完成したのでした。
菅平ダムは、近隣の神川かんがわという川をき止めて水を貯めてゆき、そこから水を取ってきて、周辺の農家などに水を供給していく、というわけです。

このようにして、長野県上田市周辺地域に存在する、約1,200ha(東京ドーム約250個分)にもおよぶ農地をうるおしているというわけです。

「上水道」「水力発電」にも役立っている、菅平ダムの役割

また、菅平ダムの水は

  • 上水道
  • 発電の利用(水力発電

にも役立っています。

「上水道」とは?

ここでいう上水道じょうすいどうとは、いわゆる「飲み水」「洗濯用水」に使われる水のことです。

対義語は、「下水げすい」です。

水力発電とは?

また、水力発電とは、ダムから水が大量に落ちてくるときの位置エネルギーを利用して発電を行う方式です。

水力発電について詳しくは、以下の記事をご覧くださいね。

飯田線の旅7 中部天竜に到着!佐久間ダムの壮絶な歴史
今回は飯田線・中部天竜駅に到着します。さらに、近隣にある屈指の巨大ダム・佐久間ダムの歴史に迫ってゆきます!とても広い!浜松市天竜区前回も最後で解説したように、飯田線(いいだせん)は途中、愛知県から静岡県に入ります(その後、長野県に入ります)...

聖高原における、麻績方式(改めて解説)

麻績方式は、まとめると

  1. 麻績村(おみむら)が持っているリゾート地における、土地の所有権を、
  2. あくまで地上権(※)のみを提供することによって、
  3. 個人や法人のみなさんたちが使う「別荘用地」として提供する方式

のことです。

地上権とは、文字通り、地上の土地を使っていいよ、という権利のことです。

民法265条によって「地上権の内容」が定められています。
つまり、他人の土地において「どうぞ建物を、自由に建てていいよ」といった、土地を使用するための権利を与えてあげる、という権利のことです。

つまり、土地を使いたいという人に対しては決して譲る」・「売る」というわけではないということですね。
地上権といって、あくまで「土地を使う権利」を与えるのみ、ということになるわけです。

ここから、姨捨駅・冠着山方面へ

聖高原駅(長野県東筑摩郡麻績村)

聖高原駅(長野県東筑摩郡麻績村)

聖高原の観光を終えたら、今度は姨捨駅に向けて移動します。

次回の記事をご覧くださいね!

ちゅうい!おわりに

この記事は、「旅行初心者に教える」ことを目的地として書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
もし内容の誤りに気付かれた方は、「お前は全然知識ないだろ!勉強不足だ!」みたいなマウントを取るような書き方ではなく、「~の部分が誤っているので、正しくは~ですよ」と優しい口調で誤りをコメント欄などでご指摘頂ければ嬉しく思います。再度こちらでも勉強し直し、また調べ直し、内容を修正致します。何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

この記事が良いと思った方は、よかったら次の記事・前回の記事も見てくださいね!

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