鉄道唱歌 関西編 第21番 津駅を出発 阿漕・高茶屋を過ぎ、松阪方面へ 雲出川を渡る

まずは原文から!

阿漕(あこぎ)が浦(うら)に引く網(あみ)の
名も高茶屋(たかちゃや)の雲出川(くもずかわ)
わたりながらも眺めやる
桃のさかりやいかならん

さらに読みやすく!

阿漕(あこぎ)が浦(うら)に引く網(あみ)の
名も高茶屋(たかちゃや)の雲出川(くもずかわ)
わたりながらも眺めやる
桃のさかりやいかならん

さあ、歌ってみよう!

♪あこぎがうーらに ひくあみのー
♪なもたかぢゃやの くもずかわー
♪わーたりながらも ながめやるー
♪もものさかりやー いかならんー

(紀勢本線)
亀山駅→一身田駅→津駅→阿漕駅→高茶屋駅→松阪駅→多気駅

(参宮線)
多気駅→田丸駅→宮川駅→伊勢市駅→二見浦駅(→至・鳥羽駅)

※鉄道唱歌に関連する主要駅のみ表記

※正式名称は「鉄道唱歌 関西・参宮・南海編」です。記事タイトルの便宜上、このようなタイトル(関西編)とさせていただいております。ご了承ください。

津駅(つえき、三重県津市)を出発すると、阿漕駅(あこぎえき)、高茶屋駅(たかちゃやえき)という風に過ぎてゆき、雲出川(くもずかわ)という大きな川を渡り、やがて松阪(まつさか)方面へ向かっていきます。

阿漕駅(三重県津市)
阿漕駅(三重県津市)

阿漕駅(あこぎえき、三重県津市)は前回も説明したように三重県津市の駅であり、また結城神社(ゆうきじんじゃ)が近くにある駅でもあります。
とはいっても、阿漕駅から結城神社まではやや距離がありますので、注意しましょう。

阿漕(あこぎ)」は、いわゆる「阿漕(あこぎ)な商売」と言う言葉の由来です。

阿漕な商売」とは、「社会通念上好ましくない商売」、つまり「自分の利益だけを優先した、自分本位な商売」のことをいいます。

昔はこの近辺の海岸地域、つまり伊勢神宮の付近の海では(神域のため)漁業が禁止されていました
ところが、ある漁民が自分本位で(自分の利益だけを追求して)魚釣りをしてしまったという故事から、「阿漕(あこぎ)な商売」という言葉の由来となりました。

まあ、確かに神域では誰も魚を釣ろうとしません。畏れ多いし、罰(ばち)も当たるからです。
しかし、逆に言えばライバルとなる漁民がいないわけで、他の人(漁師)がやっていない中で自分だけやってしまえば、確かに大儲けになるかもしれません。祟り(たたり)や罰(ばち)の存在を恐れていない(または信じていない)か、あるいは魚を捕らないと生活が成り立たない切羽(せっぱ)詰まってるような人は、それでも(いけないと思いつつも)やってしまうでしょう。
それでも、やはり完全なるマナー違反です。
もし法律で禁止されていたら罰則ものになるでしょう。

ちなみに余談にはなりますが、人間がいけないことをする原理を説明した法則として、「不正のトライアングル理論」というものがあります。
これは人間は「機会」「動機」「正当化」の3つのトライアングル要素が揃ったときに犯罪をするとするという、アメリカのクレッシーという学者が唱えた理論になります。
例えば「不正をやる権限が立場上与えられてるし(機会)」、「急いでるし、お金もないし(動機)」「みんなやってるし(正当化)」などという理由が揃えば、人間は悪いことをやってしまうという理屈です。
逆にいえば、犯罪や不正、コンプライアンス違反を防ぐには、上記の3つの要素をいかに(世の中や会社、社員の間などで)減らしていくがが重要となるわけです。もちろん罰則を厳しくするのもアリですが、それだけでは根本的解決にはならず再発のリスクもあるからです。

話がだいぶ逸脱してすみません。

阿漕駅を過ぎると、やがて高茶屋駅(たかちゃやえき、三重県津市高茶屋)に到着します。

高茶屋駅(三重県津市)

高茶屋(たかちゃや)とは、昔、伊勢神宮の帰りに高貴かつ名高い人達が寄ってみた茶屋があったことが、その名前の由来になっています。
茶屋(ちゃや)とは、お茶やお菓子などをイートインで提供する、昔の道端にあったお店です。現代でいうところのスタバやカフェ、喫茶店、道の駅などに該当します。
現代でもスタバは都市部の駅前だったり、郊外の交通量の多いドライブスルー的な場所に店舗があることが多いですが、道を行き交う人々を呼び止めてコーヒー等の飲食物を提供するスタンスは、今も昔も変わりません。
あ~移動に疲れた!」という時にスタバを発見したときの喜びはハンパないですからね。

歌詞は、「その名も高い」と「高茶屋」という地名の掛詞(かけことば)になっているものと思われます。
掛詞(かけことば)とは、日本の歌や詞などで古くから使われてきた言葉遊び、洒落の一種です。掛詞は鉄道唱歌では非常に多く登場します。

高茶屋駅を過ぎたら、雲出川(くもずかわ)という大きな川を渡ってゆきます。

雲出川

雲出川(くもずかわ)の由来は、島根県の出雲(いずも)と語源が同じなんでしょうかね(?)。
ちなみに余談にはなりますが、出雲の斐伊川(ひいがわ)は、元々ヤマタノオロチ(八岐大蛇)がスサノオ(素戔嗚尊)に討たれた場所であり、「雲がたち出ずる国」ということで出雲という名前になりました。
斐伊川(ひいがわ)は、JR木次線(きすきせん)と並行して流れる川です。JR木次線は、スーパー赤字路線として鉄道ファンから人気があります。営業係数(100円稼ぐのに必要な投資金額)はなんと6000以上であり、中国山地の険しくも美しい山々の景色、出雲坂根駅(いずもさかねえき)の「三段スイッチバック」、そして車窓の「奥出雲おろちループ」などが木次線の魅力です。

なので、島根県とは全然関係ないのに、私は三重県の雲出川を列車で渡るときは「この川の上流(みなかみ)に、八岐大蛇とスサノオがいるのかなぁ~」とか考えます(^^;)

また、三重県のこの近辺でJR線に乗っていると気付くと思いますが、普通列車の車内での「きっぷ拝見」があります。
きっぷ拝見」は新幹線や特急列車などの不正乗車や特急券買い忘れ防止などを目的として行われますが、三重県は普通列車でも「きっぷ拝見」を行うため、かなり珍しいといえます。

このように三重県内において普通列車でも「きっぷ拝見」をやる理由は、恐らく近鉄線と常に隣接していて、乗り間違え(誤乗)を防ぐ目的があると考えられます。
特に、松阪駅ではJR線と近鉄線のホームが共有スペース内にあるので、JR線のきっぷを買って普通に近鉄線に乗り間違えることができます(←日本語おかしい)。
わからない人は本当に間違えるので、乗ってから「きっぷ拝見」されて初めて誤乗車に気付くわけです。
三重県を青春18きっぷで旅行される方は、この辺りも念頭に置いておくとよいでしょう。

雲出川を渡ると、東側には近鉄線の重要駅である伊勢中川駅(いせなかがわえき、三重県松阪市)があります。
伊勢中川駅は、いわゆるデルタ(Δ)の線路で有名です。
大阪・奈良方面から伊勢中川駅までやってきた列車は、伊勢中川駅からそのまま伊勢方面へ真っ直ぐ延びる線路の形となっており、名古屋方面へ向かうには反対側へ向かわなければなりません。
このとき、Δ形ではなくスイッチバック形式(先頭から突っ込んで、反対方向へ運転する方式)だったら、伊勢中川駅で座席の向きを変えたり、名古屋方面への乗り換え必須になったりと、近鉄線の大阪難波~名古屋間の移動は大きなボトルネックとなり、新大阪~名古屋間で競合する東海道新幹線に対してかなり競争不利になっていたでしょう。それだけに、伊勢中川駅のデルタ構造は、存在価値・意義が高いものと思われます。

やがて、松阪駅に近づくにつれ、名松線と合流してきます。
名松線(めいしょうせん)は、松阪駅と名張駅(なばりえき、三重県名張市)を結ぶことを目的とした路線です。しかし名張駅までの延伸は断念し、途中の伊勢奥津駅(いせおきつえき)までで建設はストップしています。
理由は、先に出来た近鉄大阪線との競合で敗れ、名張まで延ばす意味・意義・必要性が無くなってしまったことが原因です。
こうしたニョロっと突き出た行き止まりの路線を、盲腸線(もうちょうせん)といいます。
盲腸線が出来る理由は、建設途中で資金不足・工事困難・人口減少などの理由で建設ストップしたり、また元々はどこかの駅と繋がっていたのが、一部分の区間だけ利用者激減などが理由で廃止されることなどによって起こります。

程なくして、列車は松阪駅(まつさかえき)に着きます!

注意
この記事は、「小学生の頃の私(筆者)に教える」というイメージで書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
もし内容の誤りに気付かれた方は、「お前は全然知識ないだろ!勉強不足だ!」みたいなマウントを取るような書き方ではなく、「~の部分が誤っているので、正しくは~ですよ」と優しい口調で誤りをコメント欄などでご指摘頂ければ嬉しく思います。再度こちらでも勉強し直し、また調べ直し、内容を修正致します。何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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