鉄道唱歌 奥州・磐城編 第32番 一ノ関に到着! ここから岩手県へ

鉄道唱歌 奥州・磐城編の歌詞を、わかりやすく解説してゆきます!
石越→花泉→一ノ関の鉄道旅について、楽しく解説してゆきます!

↓まずは原文から!

水は川瀬かわせいしこして
さきちる波の花泉はないずみ 
一の關いちのせきより陸中りくちゅう
きけば南部なんぶ舊領地きゅうりょうち

さらに読みやすく!

水は川瀬かわせの いしこして
る波の 花泉はないずみ 
一の関いちのせきより 陸中りくちゅう
けば南部なんぶの 旧領地きゅうりょうち

さあ、歌ってみよう!

♪みーずはかわせの いしこしてー
♪さきちるなみのー はないずみー
♪いちのせきーより りくちゅうと
♪きーけばなんぶの きゅうりょうち
(東北本線)
福島駅→伊達駅(旧・長岡駅)→越河駅→白石駅→岩沼駅→仙台駅→岩切駅→国府多賀城駅→塩釜駅→松島駅→鹿島台駅→小牛田駅→石越駅→花泉駅→一ノ関駅→平泉駅→盛岡駅

※鉄道唱歌に関係ある主要駅のみ抜粋
  1. 今回は、石越→花泉→一ノ関の行程
    1. 小牛田・新田をさらに北上、岩手県へ
    2. 石越→花泉→一ノ関のルート
    3. 歌詞「水は川瀬の石こして」
    4. 歌詞「さきちる波の花泉」
    5. 県境を三回通過 宮城県→岩手県→宮城県→岩手県
      1. 夏川を越える
      2. 宮城県栗原市へ
      3. 岩手県へ入る
      4. 疲れたら無理せず休憩
  2. 一ノ関駅へ到着 ここからは岩手県の旅が本格化
    1. 岩手県最南端・一関市
      1. 陸中とは?
      2. 「陸後」という表記はあまりみられない
      3. 駅名は「一ノ関」、市名は「一関」
      4. 「一関」の由来は?
      5. 「関所」は関係ない?
      6. 合併の繰り返しにより、広い面積を誇る一関市
    2. 一ノ関駅から東へ延びる、大船渡線
      1. なぜ「ドラゴンレール」のようになったのか
      2. 当時の地元の激しい誘致活動
      3. 鉄道の有用性が世の中で実証されつつあった大正時代
      4. 津波で流された線路 現在はBRTというバスで代行運転
      5. 岩手県陸前高田市「奇跡の一本松」
  3. 歌詞の三・四行目についての考察
    1. 一関は「南部」ではない!?歌詞の内容について深く考察
      1. ここで「南部」とは?
      2. 仙台藩(伊達藩)の支藩・一関藩
    2. 残念ながら存在する(と思われる)、いくつかの情報の「誤り」
      1. その他の例:東海道編 第21番
      2. その他の例:山陽・九州編 第33番
      3. 人間が書く以上、勘違いや思い込み等が入るのは仕方ない
  4. 次回は一ノ関駅を出て、平泉へ

今回は、石越→花泉→一ノ関の行程

小牛田・新田をさらに北上、岩手県へ

小牛田駅こごたえき新田駅にったえきを過ぎて東北本線を北上していくと、

  • 石越駅いしこしえき(宮城県登米市石越町)

を過ぎて、宮城県と岩手県の県境をなす、

  • 夏川

という川を渡ります。

石越→花泉→一ノ関のルート

川を渡ると、一旦岩手県に入り

  • 花泉駅はないずみえき(岩手県一関市花泉町)

を過ぎて、もう一度だけ宮城県に入ります

そして、かつての奥州街道の宿場町・有壁宿ありかべしゅくのあった

  • 有壁駅ありかべえき(宮城県栗原市)

を過ぎ、再度県境を越え、再度岩手県に入ります

そして、岩手県最南端の街である一関市いちのせきしの中心駅である、

  • 一ノ関駅いちのせきえき(岩手県一関市)

に着きます。

今回はこのような行程となります。

歌詞「水は川瀬の石こして」

まず、歌詞に

水は川瀬の石こして

とありますが、これは、

  • 川瀬の石を越す」という意味と、
  • 石越いしこし

という地名・駅名を掛けているものと思われます。

これは「掛詞かけことば」といい、歌における、ある種の洒落・言葉あそびです。

(石越→花泉→一ノ関)石越駅(宮城県登米市石越町)

石越駅(宮城県登米市石越町)

歌詞「さきちる波の花泉」

また同様に、

さきちる波の花泉

とありますが、これも、

  • さきちる(咲き散る)波の花」と、
  • 花泉はないずみ

という地名・駅名を掛けているものと思われます。

鉄道唱歌では、このように多くの掛詞が登場します
ある種の遊び心のようなものであり、作者の大和田建樹おおわだたけきさんが実際に鉄道の旅をされたときの、旅のワクワク感が伝わってきますね!

県境を三回通過 宮城県→岩手県→宮城県→岩手県

この時、県境を3回通過します

夏川を越える

1回目は、夏川という、

  • 宮城県
  • 岩手県

の県境をなす川を越えます。
すると、岩手県最南端の町である花泉町はないずみまちに着きます。

花泉町は2005年に合併して、現在は一関市の一部となっています。

宮城県栗原市へ

2回目の県境は、花泉駅から南へ進んだ北西に進んだところにあり、

  • 宮城県栗原市くりはらし

の北部の一部分のみを通過していくことになります。

そして、ここに奥州街道のかつての宿場町・有壁宿ありかべじゅくのあった、有壁駅ありかべえきを過ぎていきます。

岩手県へ入る

3回目の県境は、有壁駅を北上して、

  • 宮城県
  • 岩手県

の県境になります。
この県境を越えると、(他に寄り道をしない限りは)次の県境は、遙か北の青森県までありません。

つまりここから、南北にとても長い岩手県(※)をひたすら北上していくという旅が始まります。

※岩手県の面積は、北海道に次ぐ第2位となります。

疲れたら無理せず休憩

移動がきつくなったら、無理をせず一ノ関駅・平泉駅・水沢駅・北上駅・花巻駅などで途中下車して休憩しましょう。

基本的には1時間に1本の割合で列車はあるはずなので、1時間の小休憩を入れたいものです。

盛岡駅では、必ず降りて休憩や買い物などをしたいものです。

一ノ関駅へ到着 ここからは岩手県の旅が本格化

(石越→花泉→一ノ関):一ノ関駅(岩手県一関市)

一ノ関駅(岩手県一関市)

岩手県最南端・一関市

まず、岩手県一関市いちのせきしは、岩手県最南端の市となります。
また、歌詞にあるように、ここから陸中りくちゅう地方への入り口となります。

また、一関市の北にはかつての奥州藤原氏おうしゅうふじわらしの拠点だった平泉ひらいずみもあります。

陸中とは?

歌詞にある陸中りくちゅうとは、(正確ではありませんが)おおよそ現在の岩手県のことを言います。

しかし一部例外もあり、例えば

  • 岩手県陸前高田市りくぜんたかたしは、その名の通り陸前国りくぜんのくにに位置する

など、太平洋側地域に例外となる地域が存在するため、注意しましょう。

したがって、必ずしも正確ではないものの

  • 陸前→宮城県
  • 陸中→岩手県

という風に暫定的に覚えておけばいいでしょう。

「陸後」という表記はあまりみられない

一方、「陸後」という表記はあまりみられません。
強いて言えば、青森県が「陸後」にあたるかもしれません。
しかし、代わりに「陸奥むつ」と書いた方が、しっくりくるかもしれません。

つまり、「後」ではなく、「」の漢字を充てるわけですね。

なお、「むつ」という地名は、青森県の下北半島にある「むつ市」にその名があります。

そして、陸前・陸中・陸奥の3地域を合わせて、三陸さんりくといいます。

駅名は「一ノ関」、市名は「一関」

ちなみに、駅名は「一ノ関」であり、市名は「一関」という表記揺れがあるため、混同しないように注意しましょう。

(石越→花泉→一ノ関)「ようこそ一関へ」(一ノ関駅より)(岩手県一関市)

「ようこそ一関へ」(一ノ関駅より)(岩手県一関市)

「一関」の由来は?

私は「一関市」の由来について、色々な事を予想してみました。
せき」がつく地名はおおよそ、古くから関所がおかれていたことに由来することが多いといえます。
そのため、

  • 岐阜県・滋賀県の間の「関ヶ原せきがはら
  • 三重県の「関宿せきしゅく

など、一関も関所に関係するのではないか?とも予想してみました。

実際、

  • 岩手県の最南端にあること
  • ここが、陸前から陸中への入り口になること

わけですから、歴史的に関所が置かれていても、何ら不思議ではありません。

「関所」は関係ない?

しかし、色々調べてみましたが、関所があったとする明確な文献はありませんでした。

しかし、一関市の名前が関所に由来するというのは、ありそうな話ではあります。

合併の繰り返しにより、広い面積を誇る一関市

一関市は、周囲の町との合併を繰り返してとても広い面積を誇ります。

一ノ関駅から東へ分岐していく大船渡線おおふなとせんの駅も、大部分が一関市の領域になります。

一ノ関駅から東へ延びる、大船渡線

大船渡線おおふなとせんは、一ノ関駅から東へ太平洋側(三陸海岸側)に延びる線路です。

まるでルートが竜(ドラゴン)の形に似ていることから、「ドラゴンレール」とも呼ばれます。

なぜ「ドラゴンレール」のようになったのか

このような線路の形になったのは、歴史上の様々な政治的要因が重なったことは、結構知られた話です。

というのも、

  • 陸中門崎駅りくちゅうかんざきえき(岩手県一関市)
  • 千厩駅せんまやえき(岩手県一関市)

との間が、直線距離で結べばかなりのショートカットとなるだろう、というのは誰でも予測がつきます。

当時の地元の激しい誘致活動

しかし、実際には摺沢駅すりざわえき(岩手県一関市)方向へ大きく迂回した経路になっています。

それは、当時の地元の有力な政治家の激しい誘致活動によるものです。

大船渡線の車窓(岩手県~宮城県)

大船渡線の車窓(岩手県~宮城県)

大船渡線ができた1920年代当時は、鉄道開業から既に50年が経っていました。

1870年代の開業当時は、蒸気機関車が吐く煙が住民に嫌がられ、線路敷設に反対するなどありました(いわゆる「鉄道忌避説」)。

鉄道の有用性が世の中で実証されつつあった大正時代

しかし、50年も経つと

  • 鉄道が通り、駅がある街は発展する
  • 逆に、鉄道が通らず、駅がない街は取り残されて衰退する

という経験則が、この時代には世の中で実証されつつありました。

そのため、この時代は地元の住民たちがあの手この手で鉄道敷設や駅建設のために、誘致活動を繰り広げてきました。

これは大船渡線や摺沢駅に限らず、わりと全国的にそのような懸命な鉄道誘致の雰囲気があったようでした。

まだ日本では自動車が一般的でなかった当時ですから、鉄道はやはり移動手段として死活問題だったでしょう。

そして、当時は原敬はらたかしをはじめとする、岩手県出身の有力な政治家が政治の中心にいたのでした。
そのため、駅の誘致にも大きな影響力を持っていました。

こうして、ドラゴンレールの「胴体」をなす線形が完成したわけです。

津波で流された線路 現在はBRTというバスで代行運転

なお大船渡線は、2011年の東日本大震災によって、大船渡線のうち、

  • 気仙沼けせんぬま陸前高田りくぜんたかた大船渡おおふなと

の区間の線路は、津波で流されてしまったのでした。
そのため、現在はBRTというJR東日本が運営するバスによって代行運転をしています。

BRTは

  • 「青春18きっぷ」
  • 「北海道&東日本パス」

でも乗ることができます。

岩手県陸前高田市「奇跡の一本松」

なお、岩手県陸前高田市りくぜんたかたしには、海岸の松原(高田松原)の他の松が全部津波で流されてしまった中、唯一奇跡的に流されなかった「奇跡の一本松」があります。

大船渡線の旅や、奇跡の一本松などについては、以下の記事でもわかりやすく解説していますので、ご覧ください。

【東北】大船渡線の旅 岩手県・陸前高田へ 震災のあと「奇跡の一本松」を訪ねる
大船渡線・陸前高田市の観光・歴史を、わかりやすく解説します!震災の津波から生き残った、奇跡の一本松についても解説しています!大船渡線で、岩手県・陸前高田市へ 東日本大震災のあとをめぐる旅今回は、東北・岩手県・宮城県を結ぶ大船渡線おおふなとせ...

歌詞の三・四行目についての考察

一関は「南部」ではない!?歌詞の内容について深く考察

さて、歌詞には

一の関より陸中と きけば南部の旧領地

とありますが、一関市(一関藩)は果たして南部の旧領地といっていいのか、やや疑問です。

ここで「南部」とは?

南部なんぶ」とは、もちろん方角のことではありません。
南部氏なんぶしという、江戸時代に盛岡藩もりおかはんを治めていた氏族のことをいいます。

盛岡藩は南部氏が統治していたことから、南部藩なんぶはんとも呼ばれます。

仙台藩(伊達藩)の支藩・一関藩

しかし、当時の南部藩が治めていた領域は現在の岩手県の中部まででした。
そのため、一関藩いちのせきはんはどちらかというと仙台藩(伊達藩)の支藩しはんという位置づけでした。

つまり、一関は南部寄りというよりも、むしろ伊達寄りなのです。

私の勉強不足かもしれませんが、もしかしたら本歌詞の内容は「誤り」というべきかもしれません。

残念ながら存在する(と思われる)、いくつかの情報の「誤り」

このように、鉄道唱歌の歌詞には、残念ながらいくつかの情報の誤りが混じっていたりします。

その他の例:東海道編 第21番

例えば、東海道編 第21番にて

わたればここぞ宇津の谷の 山きりぬきしほらの道

とありますが、これは事実ではないことはよく知られています。

宇都ノ谷峠うつのやとうげは山側にあり、鉄道のトンネルは海側にあるため、一致しないということですね。

詳しくは、以下の記事をご覧ください。

鉄道唱歌 東海道編 第21番 静岡に到着!徳川家康が幼少期と晩年を過ごした地
鉄道唱歌 東海道編の歌詞(静岡、安倍川、宇津ノ谷峠など)について、鉄道に詳しくない方にもわかりやすく解説してゆきます!まずは原文から!駿州一すんしゅういちの大都會だいとかい 靜岡しずおかいでゝ阿部川あべかわをわたればこゝぞ宇津の谷うつのやの...

その他の例:山陽・九州編 第33番

また、山陽・九州編 第33番にも、

中津は豊後の繁華の地

とありますが、これも「豊後ぶんご」ではなく「豊前ぶぜん」が正解となります。

大分県中津市なかつしは大分県にあり、大分県の大部分は豊後国にあたることから、中津も豊後国と勘違いされがちなのですが、国東半島より北にある中津市は豊前国の領域にあたるからです。

詳しくは、以下の記事をご覧ください

鉄道唱歌 山陽・九州編 第33番 中津に到着!頼山陽の耶馬溪、そして福澤諭吉生誕の地
鉄道唱歌 山陽・九州編の歌詞を、わかりやすく解説しています!鉄道の知識のみならず、歴史や旅行を楽しむためのノウハウを、鉄道に詳しくない人でも楽しめるよう解説してゆきます!

人間が書く以上、勘違いや思い込み等が入るのは仕方ない

どんな書籍や文献にも間違いや誤植というものは存在します。
人間が書く以上、どうしても勘違いや思い込み等が入ってしまうため、それは仕方ないことなのです。

そして、このブログの記事にも多くの間違いがあるかもしれません。

※もちろん、充分に調べた上で書いてはいますが。

毎回お願いしていることではありますが、誤りに気付かれた方は、優しい口調でコメント欄に誤りをご指摘いただければ幸いです。
(^^;)

次回は一ノ関駅を出て、平泉へ

一ノ関駅を出ると、次は平泉駅に止まります!

ちゅうい!おわりに

この記事は、「小学生の頃の私(筆者)に教える」というイメージで書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。
そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
もし内容の誤りに気付かれた方は、「お前は全然知識ないだろ!勉強不足だ!」みたいなマウントを取るような書き方ではなく、「~の部分が誤っているので、正しくは~ですよ」と優しい口調で誤りをコメント欄などでご指摘頂ければ嬉しく思います。
再度こちらでも勉強し直し、また調べ直し、内容を修正致します。
何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

この記事が良いと思った方は、よかったら次の記事・前回の記事も見てくださいね!

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