鉄道唱歌 北海道編 南の巻第8番 渡島富士・大沼公園

まずは原文から!

トンネル出でゝ(て)ながむれば
周回(しゅうかい)八里の大沼(おおぬま)に
裳裾(もすそ)をかけて聳(そび)え立つ 
渡島(おしま)の富士も面白や

さらに読みやすく!

トンネル出でて ながむれば
周回(しゅうかい)八里の大沼(おおぬま)に
裳裾(もすそ)をかけて聳(そび)え立つ 
渡島(おしま)の富士も面白や

さあ、歌ってみよう!!

♪トンネルいーでて ながむればー
♪しゅうかいはちりの おおぬまにー
♪もすそをかーけて そびえたつー
♪おしまのふじも おもしろやー

(函館本線)
函館駅→桔梗駅→七飯駅→新函館北斗駅→大沼公園駅→駒ヶ岳駅→森駅→八雲駅→国縫駅→長万部駅→黒松内駅→比羅夫駅→倶知安駅→然別駅→余市駅→蘭島駅→塩谷駅→小樽駅

※鉄道唱歌に関係ある主要駅のみ抜粋

新函館北斗駅を出ると、森・長万部方面へ 一気に山岳地帯に

新函館北斗駅(しんはこだてほくとえき、北海道北斗市)を過ぎると、長万部(おしゃまんべ)方面の列車の本数は一気に減り(2022年のダイヤで長万部行は1日3本、(もり)は1日6本)、普通列車のみの移動となるとかなりの難関区間となります
したがって、長万部方面へ普通列車のみで行くには、時刻表を充分にチェックし、余裕あるスケジュールを立てなければなりません
逆にいえば、私のような鉄道旅行マニアならば、ここが旅行計画のセンスの試しどころです。

また、ここから先の線路(新函館北斗駅→仁山駅(にやまえき)→大沼駅)は急勾配が続く山岳地帯となるため、列車にとっても難関区間といっていい区間に入ります。

新函館北斗駅の次の駅、仁山駅。勾配もきつくなり、列車は一生懸命上っていく

普通列車の旅がきつくなったら、無理なく特急列車を

青春時代18きっぷ北海道東日本パスでの移動(つまり、普通列車のみの移動)に慣れていない場合は、無理せずに特急列車などに乗った方がいいかもしれません。
また、普通列車のみの利用だとダイヤに著しく制約があり、その日のうちに札幌に着けない・・・なんてこともあるでしょう。
そんな場合にはどうしても、1日の本数が多くて速くて快適な特急に乗る必要があります

しかし、特急列車でまともに札幌までいくと8,000円近い出費となるので、例えば新函館北斗駅~森駅のみ特急利用という選択肢もあります。この場合、1,380円(乗車券+特急料金)で約26分で着くので、1時間以上の短縮になり、ショートカットとしてはかなり有効です

普通列車のみで移動する場合、朝8時台の函館発の普通列車に乗れば、その日のうちに札幌に着けます!
繰り返しにはなりますが、北海道での普通列車のみの移動は常に時刻表をチェックし、余裕のあるスケジュール感で臨むのがよいでしょう。

函館から札幌に普通列車のみで行くときのスケジュール例

※以下、2024年ダイヤにて表記

08:18 函館発 函館本線・長万部行
11:09 長万部着
13:29 長万部発 函館本線・倶知安行
15:02 倶知安着
15:16 倶知安発 函館本線・小樽行
16:26 小樽着
18:30 小樽発 
  快速エアポート166号・新千歳空港行
19:07 札幌着

このスケジュールであれば、普通列車のみで、夜までに札幌に着けます。

北海道の普通列車は窓全開 線路にシカも乱入!?

前述した通り、新函館北斗駅を過ぎると、一気に山林に囲まれた区間になります(仁山駅付近

線路上にはシカが乱入してくることもあるため、シカ対策このためその都度列車「ビーッ!!」という大きな警笛を鳴らします。

また、夏場は冷房が入っておらず、窓全開のために、凄まじい風が車内に入ってきます。所持品が吹き飛ばされないように注意する必要がありますが、夏の北海道の涼しい風を全開に受けながら列車で突き進むのは、JR北海道の旅ならではです。

トンネルを出ると、小沼と渡島富士の景色が登場

険しい山林区間を越え、トンネルを過ぎると、窓左手には大きな湖が登場します。これを「小沼(こぬま、北海道亀田郡七飯町)」といいます。

トンネルを出た後に、窓左側に登場する小沼(こぬま)の景色。やや右奥にあるのが北海道駒ヶ岳(渡島富士)。
冬の小沼と、渡島富士。小沼は、見事に凍ってしまっている(函館本線の車窓より)(北海道)

大沼の景色も登場

冬の大沼。見事に凍ってしまっている(函館本線の車窓より)(北海道)

そして窓より右側に登場するのは、より巨大な大きな湖です。これが「大沼(おおぬま、北海道亀田郡七飯町、周囲約24km)」です。
歌詞には「周回八里(しゅうかいはちり)」とありますが、1里が約4kmだと覚えておけばいいので、4km×8里=32kmとなり、実は計算が合いません
大沼と小沼を合わせたら8里なのか、鉄道唱歌が作られた当時(1906年)の湖の面積と、現在の湖の面積が異なるからなのかは、はっきりしません
なお、昔の湖の面積と現在の面積が異なる理由は、埋め立て・灌漑(農地に水を引き込むこと)、干拓(湖を干上がらせて平地を作ること)・・・など、様々な理由があります(どれも違うような気がします)。

「渡島富士」こと、北海道駒ヶ岳

その大沼のバックには、大きな2つのとんがり帽子をつけたような巨大な山が大きな存在感を発揮しています。

この大きな山は、北海道駒ヶ岳(ほっかいどうこまがたけ、北海道亀田郡七飯町、標高1,131m)といって、別名・渡島富士(おしまふじ)といいます

「新日本三景」ともいわれる、まるで松島のように美しい大沼公園。バックに見えるのが北海道駒ヶ岳(渡島富士)。

この渡島富士(おしまふじ)は、現在でこそ2つの巨大なとんがり帽子のような外観ですが、元々は富士山のような綺麗な円錐型の山でした。しかし、過去・江戸時代の1640年に巨大な噴火が起きたために、噴火の勢い真ん中から頭の部分が吹っ飛んでしまい、現在のような外観になったようです。

日本各地の「郷土富士」と「駒ヶ岳」

日本には(いや、世界中にも)富士山そっくりな山はたくさんあります。こうした、様々な地域の富士山に似た山を「郷土富士」といいます。
例えば、同じく北海道・後志(しりべし)地方の羊蹄山(ようていざん)はかなり富士山そっくりなので「蝦夷富士(えぞふじ)」と呼ばれていますし、青森県最高峰の岩木山(いわきさん)も「津軽富士(つがるふじ)」、岩手県のシンボルともいえる岩手山(いわてさん)も「岩手富士」、鹿児島の開聞岳(かいもんだけ)も「薩摩富士(さつまふじ)」と呼ばれるなど数多くあります。
こうした山々は、まるで富士山のように美しい円錐型の山容を誇っていることが多く、その地域のランドマークになっていることも多いです。

北海道駒ヶ岳は、渡島半島(おしまはんとう)の富士山のようであることから、渡島富士(おしまふじ)という愛称で呼ばれているわけです。

また、なぜ北海道駒ヶ岳に「北海道」という地名がつくのかというと、全国的に「駒ヶ岳」という名前の山が多く存在するため、それらと区別するためです。

例えば、長野県の中央線飯田線(いいだせん)の旅をしていればわかると思いますが、

甲斐駒ヶ岳
(かいこまがたけ、山梨県北杜市・長野県伊那市、標高2,967m)

木曽駒ヶ岳
(きそこまがたけ、長野県上松町・長野県木曽町・長野県宮田村、標高2,956m)

などがあります。

アイヌ語の「ポロト」に由来する、大沼

大沼公園駅(北海道亀田郡七飯町大沼町)
大沼公園駅(北海道亀田郡七飯町大沼町)

大沼(おおぬま、北海道亀田郡七飯町、周囲約24km)は、元々は湖ではなくだったようです。しかし、先述の1640年に起きた北海道駒ヶ岳の火山の噴火によって、放出された溶岩が川の流れをせき止めしてしまい、そこにダムのように水が溜まったことからとなったようです。

大沼は、アイヌ語の「ポロト」という言葉に由来します。アイヌ語で「ポロ()」とは「大きな「ト」とは「という意味なので、

ポロ・ト(大きな・沼)→大沼

です。
まんまのネーミングですね(^^;)。

「ポロ(幌)」→大きな、というアイヌ語は北海道の地名で大変よく出てきますので、覚えておくと便利です。

「新日本三景」に数えられる、大沼

大沼公園は「千の風になって」という曲が作られた場所でも有名です。私が大沼公園に行ったときには、「千の風になって」の記念碑のようなものがありました。

大沼公園は、まるで日本三景である松島(宮城県宮城郡松島町)のように湖に浮かぶ島々の景色がとても美しく、そのバックに堂々と誇り立つ北海道駒ヶ岳(渡島富士)の山容は、壮観です!!
実際、大沼は1915年に「日本新三景」に選定されています。あと二つは、静岡県静岡市の「三保の松原(みほのまつばら)」と大分県中津市の「耶馬溪(やばけい)」です。

静岡県の三保の松原については、以下の記事でわかりやすく解説しておりますので、ご覧ください

鉄道唱歌 東海道編 第20番 三保の松原と、駿河湾と富士山・伊豆半島の風景

大分県の耶馬渓(やばけい)についても、以下の記事で解説しておりますので、ご覧ください

鉄道唱歌 山陽・九州編 第33番 中津に到着!頼山陽の耶馬溪、そして福澤諭吉生誕の地

大沼駅を中心に広がる「8の字ルート」 藤城支線と砂原支線

次に、全国的にも珍しい、いわゆる「8の字ルート」について解説します。

大沼公園駅の1つ前の大沼駅(おおぬまえき、北海道亀田郡七飯町)は、前回紹介した函館本線」と「藤城支線(ふじしろしせん)」の合流駅となります
新函館北斗駅経由の本線は、勾配がきついため、勾配が緩やかな迂回支線として「藤城支線」が作られたことは前回説明した通りですが、大沼駅以北も勾配を避けるために迂回経路が設けられています。
それは、北海道駒ヶ岳を海側(東側)に大きく迂回する経路で、渡島砂原駅(おしまさわらえき、北海道茅部郡森町)を経由することから「砂原支線(さわらしせん)」と呼ばれています。
これは、大沼公園駅・駒ヶ岳駅経由を通ると勾配がきついため、勾配が緩い海側を通るルートが砂原支線というわけですね。

このような勾配を避ける迂回ルートができる目的は、昔の鉄道車両は現在と違ってとても勾配に弱く、補助機関車を付けないと坂を登れませんでした。しかし、補助機関車の付け替え作業を行っていると、そのたびに時間ロスとなり、大幅に輸送力が下がります。特に、戦争中はこのような時間ロスは許されないため、補助機関車の付け替えが必要ない(大回りの)迂回ルートが造られたケースもあります(例:東海道線・新垂井駅の区間など。新垂井駅は現在は廃止)。

大沼駅を中心・合流点として、まるで8の字のようなルートを構成するため、全国的にも珍しい「8の字ルート」になっているわけです。

大沼駅と森駅では、大沼公園方面か、渡島砂原方面かで乗り間違えのないようにする必要があるわけですね。

赤井川駅を過ぎ、やがて森へ

やがて、赤井川駅(あかいがわえき、北海道茅部郡森町)という秘境駅的な駅に停車します。
2024年ダイヤで確認したところ、函館8時18分発の普通列車に乗った場合、9時19分赤井川駅着、9時28分赤井川駅発で、約9分の停車時間があります。この時間を有効利用して、簡単な秘境駅めぐりを兼ねてうまく休憩しましょう。

以前は約17分の停車時間がありましたが、2024年のダイヤでは約9分の停車時間に短縮されました。一応秘境駅めぐりは出来ますが、あまり時間はないので注意しましょう。

この先の旅路は長いので、是非駅のホームに降りて、駅名標と並んで記念撮影したり、キハ40の車両を撮影したり、駅周辺をちょっとだけ散策してみましょう。
真冬の赤井川駅周辺は本当に真っ白な林が広がり、北海道ならではの独特の景色や雰囲気を楽しむことができます。

しかし、列車の発車に置いて行かれないよう絶対注意しましょう。
もし遅れたら、次は約2時間半後の12時06分発森行まで(場合によっては真冬の極寒の中で)待つことになります。
それよりも、約1時間後の10時43分発・函館行で、一旦大沼公園駅まで引き返します
そして10時48分には大沼公園駅に着きます。
そこから別途乗車券特急券を買い直し、11時15分大沼公園発・特急北斗9号札幌行に乗れば、長万部には12時14分に着くため、スケジュールの挽回が可能です(13時29分発の倶知安行に乗車券可能。もう遅れないようにしましょう)。

この場合、別途3,570円(大沼公園→長万部までの乗車券+指定席特急料金)の出費が出るわけですが、遅れを挽回し、ここで旅を諦めないためには仕方ありません。また、2024年3月のダイヤ改正では特急北斗の自由席が廃止され指定席料金のみとなっため、注意しなければなりません
北海道に限らず、列車の本数が少ないエリアでは、こういった不測の事態に備えて「一旦逆方向に(特急の止まる駅まで)戻って、特急列車でスケジュールを挽回する」といった救済措置も必要になります。

こうした厳しい時間制約と戦いながら、また時刻表とにらめっこしながら最適な行程やスケジュールを組み、そして、それを実行に移していく。その結果、美しい車窓や景色に出会うことができます。

これも、旅の面白さですね!

次は、森駅に止まります!

注意
この記事は、「小学生の頃の私(筆者)に教える」というイメージで書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
もし内容の誤りに気付かれた方は、「お前は全然知識ないだろ!勉強不足だ!」みたいなマウントを取るような書き方ではなく、「~の部分が誤っているので、正しくは~ですよ」と優しい口調で誤りをコメント欄などでご指摘頂ければ嬉しく思います。再度こちらでも勉強し直し、また調べ直し、内容を修正致します。何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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