今回の房総半島の旅は、ユニークすぎる経営手法で知られる銚子電鉄での旅になります!そしてこの地域の旅行を楽しむための豆知識を、わかりやすく解説します!
(銚子電気鉄道線)
銚子駅→仲ノ町駅→観音駅→本銚子駅→笠上黒生駅→西海鹿島駅→海鹿島駅→君ヶ浜駅→犬吠駅→外川駅
銚子駅からは、ユニーク過ぎる私鉄路線・銚子電鉄へ
列車は既に、銚子駅(ちょうしえき、千葉県銚子市)に達しています。
今回は、銚子駅で乗り換えて、銚子電鉄の旅ということになります。
銚子電気鉄道線(ちょうしでんきてつどうせん)は、銚子駅から南東の海沿いに外川駅(とかわえき、千葉県銚子市外川町)まで向かって走る、約6.4キロのローカル私鉄線になります。
赤字を独特の経営手法によって解決してきたユニークな会社であり、「まずい棒」というお菓子の販売でも有名ですね。
「まずい棒」とは味がまずいわけではなく、経営がまずいという意味です。
つまり鉄道の収入だけでは到底利益が上がらないため、お菓子の販売や、後述するネーミングライツ(駅名の決定権)の販売などで利益を確保しているわけです。
元々は、「犬吠埼」を見に行くための観光路線だった
銚子電鉄は、元々は明治時代にできた、関東地方最東端の犬吠埼(いぬぼうざき)という綺麗な海岸を眺めるための、いわば観光のための私鉄路線である「銚子遊覧鉄道(ちょうしゆうらんてつどう)」がその始まりでした。
また、銚子の名産である「醤油(しょうゆ)」などを運ぶための列車としての役割も果たしていました。当時は自動車が普及しておらず、荷物を運ぶトラック等の車両が無かったからですね。
銚子電鉄は先述の通り、鉄道黎明期ともいえる明治時代に作られたわけです。
そしてまだ車が一般的に普及していなかった当時は、地域住民の移動の足として十分に機能していました。
しかし1960年代の高度経済政長期になると、自動車が普及していくという「モータリゼーション」が起こりました。その煽(あお)りをうけ、銚子電鉄は苦境に立たされることとなりました。
自動車の普及によって、人々は電車を使わずに(ドアツードアで便利な)車を使うようになったため、全国の鉄道路線は田舎のローカル路線から赤字のために廃止されていくようになります。銚子電鉄も時代とともに経営が苦しくとなってゆき、経営が文字通り「まずく」なってきました。
粉飾決算、赤字の連続・・・苦境だらけの銚子電鉄の歴史
さらに、粉飾決済(ふんしょくけっさい)までをもやってしまいました。
それは具体的には、財務諸表(ざいむしゃひよう)を逆に書いてしまったというものです。
財務諸表(ざいむしょひょう)とは、簡単にいえば企業がどれだけ儲かっているか、あるいはどれだけ赤字を出しているかという報告を、株主などのステークホルダー(利害関係者)に対して報告するものです。これによって株主は、(儲かっていれば)この会社の株を買うか、あるいは(赤字で損失続きであれば)買わずに撤退するかを決めるわけです。この数字が良くないと、銀行からお金を借りるのも難しくなるので、財務諸表の数字は株式会社の経営にとってはとても重要になります。
この財務諸表において、なんと「利益」と「借金(負債)」を逆に記載してしまったのです。つまり、実際は借金や負債の方が大きいのに、利益の方が大きいと見せかけるという事を行ってしまったわけです。
これはさすがにまずい(棒)ですね。
会計の専門的知識を生かした、経営の抜本改善
銚子電鉄は上記のような経営危機を打開するため、税理士の資格を持ち後に社長となる竹本勝紀(たけもと かつのり)さんが顧問税理士に就任してからは会計ソフトの導入や節税といった専門的なテクニックを使い、財政再建のための施策を次々に打ち出しました。
会計ソフトであれば、たくさんの財務諸表を作成するときの記載ミスや計算ミスを防ぐことができ、書類作成の手間が省けます。また、それによって誤りや不正も防止でき、正しい儲け・損失の数値を報告・申告することで、本来払うべき適切な税金を計算することができます。また、節税に関する知識があれば、本来払う必要のない税金を無駄に納めなくてすみます。例えば、資本金を1億円以下に調節することで中小企業とみなされるため、それによって税金がより低く抑えられるという制度を利用したのでした。これは税理士のような会計に関する専門的知識あってのものです。
このようにして、竹本さんは金融機関から7,000万円の資金調達に成功したり(これは銀行からの信頼あってこそのものです)、また「ぬれ煎餅(せんべい)」といったお菓子の販売を行い大ヒットするなど、あの手この手で銚子電鉄の経営を改善しようと試行錯誤したのでした。
ネーミングライツの販売による、画期的な利益確保
それでも傷んだ線路の補修などでお金がかかるため、やはり赤字がひどく、苦しい状況には変わりありませんでした。なんとか(老朽化していく)駅や車両・線路などを維持していく資金源を確保するために、駅名の「ネーミングライツ(命名権)」を企業等に売ったりもしてゆきました。
「ネーミングライツ」とは、その権利を買えば、駅名や施設などに対して、企業が自身の社名や商品の名前などを入れることができる権利のことをいいます。例えば東京の「味の素スタジアム」や名古屋の中日ドラゴンズの本拠地「バンテリンドーム(ナゴヤドーム)」などが有名です。
例えば、
銚子駅→絶対にあきらめない
笠上黒生駅(かさがみくろはええき)→髪毛黒生(かみのけくろはえ)駅
君ヶ浜駅(きみがはまえき)→ロズウェル
外川駅(とかわえき)→ありがとう
などになります。
「髪毛黒生(かみのけくろはえ)」とは、頭皮をケアする製品などを扱う会社である株式会社メソケアプラスによって付けられました。
「ロズウェル」とは、銚子の海にはUFOが現れる、という都市伝説にちなんで付けられた名前です。ロズウェルとは、1947年にUFOが墜落した「ロズウェル事件」が起きた、アメリカの地名です。君ヶ浜駅の命名権を取得した株式会社MIST solutionによって名付けられました。
「ありがとう」とは、命名権を取得した早稲田ハウスという会社がモットー・大切にしている言葉から採用されたということです。
ネーミングライツを販売することによって、年間1,160万円ほどの利益になったといいます。
一方のネーミングライツを購入した企業にとっても、駅名や施設名などに自社の社名や製品名、ブランド名などを入れることができるため、宣伝につながります(ただし銚子電鉄の場合は、ダイレクトに企業名や商品名は入れていません)。
まさに双方にとって、WinーWinの効果をもたらしたわけです。
犬吠埼の、源義経の犬の悲しい歴史
銚子から外川(とかわ)方面に向けて進むと、やがて犬吠埼(いぬぼうざき)という景勝地に至ります。
「犬吠埼(いぬぼうざき)」は、源義経(よしつね)の犬の伝説にあるといいます。
1185年の「檀ノ浦の戦い(だんのうらのたたかい)」で源平合戦に勝利した義経でしたが、その後兄の源頼朝と政治的意見が食い違って対立し怒りを買ってしまい、遠く東北地方・岩手県の平泉(ひらいずみ)まで逃げてきたのでした。
九郎判官(くろうほうがん)とも呼ばれた源義経の歴史については、以下の記事でわかりやすく解説しているため、ご覧ください。
鉄道唱歌 山陽・九州編 第4番 「一ノ谷の戦い」 源義経による奇襲 源平の古戦場
義経が東北地方に逃げるときに千葉・銚子の海にかかり、彼の犬が置き去りにされてしまったのです。
その虚しくも置いていかれた愛犬が、いつまでもその海岸で鳴き吠え続けていたといいます。
これが「犬吠埼」の由来になります。
源義経は、やがて岩手県の平泉(ひらいずみ)にたどり着き、当時東北地方で栄華を築いていた奥州藤原氏に匿(かくま)ってもらうことになりました。
しかし、それが頼朝にバレてしまい、東北地方に軍を派遣され、追い詰められた義経は平泉の衣川館(ころもがわやかた)で、悲劇の自害となってしまいました。
この詳細については以下の記事でわかりやすく解説しているため、ご覧ください。
鉄道唱歌 奥州・磐城編 第33番 平泉に到着! 金色堂、安倍氏、奥州藤原氏など戦いや栄華の歴史
全国各地(北海道にもある)源義経ゆかりの地
しかし義経は本当は自害しておらず、こっそりと東北地方から北上して青森の方まで逃げ、さらには津軽海峡を越えて北海道に渡ったという都市伝説も存在しています。
それは、義経の最期があまりにかわいそうだったので、それに同情する人々による「義経は本当は生きていたことにしたい」という願望によって、実は死なずに生きていて北海道へ渡った、という設定が生まれたのです。
これを判官贔屓(はんがんびいき)といいます。
北海道にはかつて明治時代に「義経」「弁慶」という名前の蒸気機関車が、官営幌内鉄道(かんえいほろないてつどう)という石炭を運ぶ路線の鉄道として、小樽付近を走っていたのはそのためですね。
さらに義経は、北海道からモンゴル帝国まで渡って「チンギス・ハンとして君臨した」という都市伝説まであるのです。
なお、青森県の津軽半島には、源義経を弔(とむら)うお寺である「義経寺」というお寺があります。
犬吠崎(いぬぼうざき)からは、とても素晴らしい銚子の海が見えることになります。
銚子電鉄の観光を終え、再び成田線で出発
次は、銚子駅から成田線(なりたせん)に乗り換え、香取(かとり)・成田(なりた)方面へと向かってゆきます。
注意
この記事は、「旅行初心者に教える」ことを目的地として書いており、難しい表現や専門用語などは極力使用を避けて、噛み砕いて記述・説明することに努めております。そのため、内容については正確でない表現や、誤った内容になっている可能性があります。
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