鉄道唱歌 北陸編 第26番 「田毎の月」 多くの詩人や絵師に愛されてきた、月の名所

まずは原文から!

田毎(たごと)の月(つき)の風景も
見てゆかましを秋ならば
雲をいたゞく冠著(かむりき)の
山はひだりにそびえたり

さらに読みやすく!

田毎(たごと)の月(つき)の風景も
見てゆかましを秋ならば
雲をいただく冠着(かむりき)の
山はひだりにそびえたり

さあ、歌ってみよう!

♪たごとのつーきの ふうけいもー
♪みてゆかましをー あきならばー
♪くーもをいただく かむりきのー
♪やーまはひだりに そびえたりー

(しなの鉄道線)
軽井沢駅→信濃追分駅→御代田駅→小諸駅→大屋駅→上田駅→坂城駅→千曲駅→屋代駅→篠ノ井駅

(信越本線)
篠ノ井駅→川中島駅→長野駅

※鉄道唱歌に関連する主要駅のみ表記

列車は、坂城駅(さかきえき、長野県埴科郡坂城町)を過ぎて、やがて千曲駅(ちくまえき、長野県千曲市)に至ります。

田毎の月(たごとのつき)とは、前回紹介した姨捨山(おばすてやま)、別名・冠着山(かむりきやま)の麓(ふもと)にある、格子状にたくさんある田んぼごとに映った月のことを言います。

篠ノ井線の車窓より。右側が姨捨山(冠着山)、写真中央あたりが「姨捨の棚田」

冠着山(かむりきやま)の麓(ふもと)に田んぼ(姨捨の棚田/おばすてのたなだ)が格子状に並び、夜になると月が各々の田んぼ(の水面)に写り、まるで地上に月がたくさん光っているかのようなシーンを演出します。

これが後述するように江戸時代の「浮世絵」の格好の題材となったり、現代でいう「インスタ映え」のような景色の描写となるのです。
「絵になる」「映(は)える」とは、まさにこのことですね。

また、姨捨山や田毎の月は、多くの風雅士(みやびお。歌人のこと)によって詠(よ)まれ、多くの詩歌(しいか)に登場します。

これは長野県歌・「信濃の国」の第4番でも歌われています。

また、先述したように「田毎の月」は歌川広重(うたがわ ひろしげ)などさまざまな浮世絵に登場します。

歌川広重の書いた浮世絵(うきよえ)には、イラストの中に田んぼに映る月がくっきりと丸く描かれています。
もし江戸時代にインスタ(Instagram)があって、歌川広重がインスタにこの浮世絵を投稿したら「いいね」が3,300万個はついたでしょう。
(3,300万というのは、江戸時代の日本の人口)

浮世絵(うきよえ)とは、現代でいうところの「インスタ映えする画像」のようなものと思ってください。「江戸時代版Instagram」のようなものだと思ってもらえればOKです。
つまり、江戸時代の旅人たちが描いた情緒あふれるイラストや絵画(かいが)のことを言います。
現代の我々が、例えば景勝地などに行くとスマホで写真をパシャパシャやる行為と似ていますが、当時はスマホもカメラも無かったので、絵画(かいが)に残すのが主流だったのです。

浮世(うきよ)というのは、いわば「世の中」のことです。
ただし、どちらかというと「憂鬱な世の中」というようなマイナスの意味です(「憂き世」とも書きます)。
浮世絵」というと、ここでは「当時の世の中を描き表した絵画」というような意味合いになります。
浮世絵を眺めることで、当時の人々の様子(服装、家屋、道路、景観など)を伺い知ることができます。

歌川広重(うたがわ ひろしげ)は、江戸時代の浮世絵(うきよえ)作家です。

あの東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)において、それぞれの宿場町のイラストを書いたのも、あの浮世絵師の歌川広重になります。

稲荷山にはかつて、北国街道の宿場町である稲荷山宿(いなりやましゅく)がありました。
そしてこの稲荷山の近くには、久米路橋(くめじばし)という、「木曾の桟(かけはし)」と並んで当時から往来が危険な橋がありました。

長野県歌「信濃の国」第4番では、「木曾の桟かけし世も 心してゆけ久米路橋」と歌われていて、それなりに覚悟して渡らなければならない橋だったことが伺えます。

中央線鉄道唱歌第48番でも、
久米路の橋に行く人の 下車する駅は稲荷山」と歌われており、篠ノ井線(しののいせん)には稲荷山駅(いなりやまえき、長野県長野市篠ノ井)という駅があります。
稲荷山駅は、スイッチバックで有名な姨捨駅(おばすてえき、長野県千曲市)の次の駅です。
スイッチバックとは、一旦先頭車両から(枝分かれした線路の駅のホームに)突っ込み、駅のホームで乗客を乗り降りさせ、バックして、再び本線へ戻って進む構造のことです。
なぜ駅にスイッチバックが設けられるのかというと、きつい勾配の上に列車を停車させる事態を回避するためです。

次は、篠ノ井線との分岐点である篠ノ井駅(しののいえき)、そして古戦場で有名な川中島(かわなかじま)方面へ進んでゆきます!

注意
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