中央線鉄道唱歌 第47番 心慰むべき、姨捨山に入る月 秋は田毎に映り、おぼろに照らす

中央線鉄道唱歌の歌詞(姨捨駅、姨捨山の観光・歴史など)について、鉄道に詳しくない方にもわかりやすく解説してゆきます!

↓まずは原文から!

心なぐさむ更級さらしな
姨捨山おばすてやまにてる月は
秋は田毎たごとにうつろひて
四郡しぐん平野へいやおぼろなり

さらに読みやすく!

心なぐさむ 更級さらしな
姨捨山おばすてやまに てる月は
秋は田毎たごとに うつろいて
四郡しぐん平野へいや おぼろなり

さあ、歌ってみよう!

♪こーころなぐさむ さらしなやー
♪おばすてやまにー いるつきはー
♪あーきはたごとに うつろいてー
♪しぐんのへいやー おぼろなりー

(篠ノ井線)
塩尻駅→村井駅→松本駅→田沢駅→明科駅→西条駅→聖高原駅→冠着駅→姨捨駅→稲荷山駅→篠ノ井駅

(信越本線)
篠ノ井駅→川中島駅→長野駅

※鉄道唱歌に関連する主要駅のみ表記

現代語訳のまとめ(姨捨の棚田・田毎の月)

まずは、現代語訳から確認してゆきましょう。

  1. 心慰められる素晴らしい景色の更級さらしなの里よ。
  2. あの有名な姨捨山おばすてやまを優しく照らす美しい月は、
  3. 秋になると、山の斜面に広がるいくつもの棚田たなだ(水田)の一つひとつに、まるで万華鏡のように美しく映り込んで(移ろい動いて)いる。
  4. そして、その月の光に照らされた四郡しぐんの広大な平野は、夜霧の中でどこか幻想的におぼろに霞んでいるのである。
江戸時代の「姨捨の棚田」の「田毎の月」(画像はAIによるイメージです)

江戸時代の「姨捨の棚田」の「田毎の月」。田んぼ一つ一つに月が映し出されるという美しさ。(画像はAIによるイメージです)

姨捨駅に到着

列車は現在、篠ノ井線しののいせんで松本から長野方面へ向かっています。

冠着山かむりきやま、通称・姨捨山おばすてやまのトンネルをくぐると、やがて姨捨駅おばすてえき(長野県千曲市)に到着します。

姨捨駅(長野県千曲市)

姨捨駅(長野県千曲市)

「姨捨伝説」の残る、姨捨山

姨捨山おばすてやまは、かつて年老いたお婆さんを捨てていた山という伝説があります。
普通に可哀想なことなので、現代でこれをやると余裕で「人権侵害」だと言われそうですね。
SNSでは余裕で炎上しそうです。

というか、現代でこれをやると刑法217条違反の「遺棄罪いきざい」にあたり、犯罪となります。
年老いたお婆さんを、姨捨山という危険な場所に移置いち置き去りにしているため、普通に遺棄罪が成立します。
絶対にやってはなりません。

姨捨山の物語

以下が、姨捨山の物語です。

昔ある夫婦と、夫の母親である年老いたお婆さんがいました。

すると嫁が、

そんな役立たずの老婆なんか、山に捨ててきなさい!

という、もはや人権侵害SNS炎上確定の、酷すぎることをいいます。

そんな毒嫁の言いなりになった旦那は、母親に対して

山で素晴らしい催し物があるから、おんぶ(背負うこと)していくで。

と嘘を言います。

そんな嘘をついて、夫は母親を山へ捨ててきてしまいました。

すると夫は、更級さらしなの姨捨山に照る月を見ながら、

月はとても綺麗なのに、私の心は慰められません。

といって、山に捨ててきた母親を元に戻したといいます。

これが「姨捨山」の物語です。
歌詞にも

♪心なぐさむ更科や
とありますよね。

「栞しおり」という言葉の由来

もう一つ、こんな伝説もあります。

年老いた母親を山へ連れてきた息子でしたが、お婆さん(母親)は息子のために、来た道の木の枝を折り、その枝を息子のために、道にバラ巻いていたのでした。
そしてお婆さん(母親)は、息子にこう言いました。

ここまで枝を折ってきたから、その枝を便りにお帰り。

なんて素晴らしいお母様でしょうか。
息子はこのお母さんの行動・言動に感動し、お母さんを家まで連れて帰ったのだといいます。

この枝を折る行為が、

枝折り」→「しおり」→「しおり

と変化したのでした。

しおりとは、こうしたエピソードから転じて「旅の道しるべ」「手引き」などのことをいいます。
まさに、お母さんが折って来た枝こそが、「道しるべ」となったのでした。

冠着山(姨捨山)・姨捨駅の歴史やエピソード等

松尾芭蕉の「更科紀行」

更級さらしなとは、長野県千曲市ちくましの地名です。
しなの鉄道・千曲駅ちくまえきの西に千曲川ちくまがわが流れます。

また、

  • 川の西は、更級地域
  • 西には、姨捨山月見堂棚田たなだ

があるイメージです。

姨捨山は、松尾芭蕉の「更級紀行さらしなきこう」など、また多くの詩人から詩に詠まれた場所になります。
松尾芭蕉については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください

【松尾芭蕉とは?】名句に込められた思いや、旅の真実などを徹底解説!
松尾芭蕉について、意外な素顔や名句の背景、さらに「わび・さび」の思想や『おくのほそ道』の旅路など、彼の人生と旅の魅力に迫ります!今回は、松尾芭蕉について わかりやすく解説旅の天才、松尾芭蕉の意外な素顔名句「古池や」に込められた静寂と生命力​...

更級紀行とは、松尾芭蕉が

  1. 美濃みの(岐阜県)から木曽路を通って、
  2. 長野の善光寺ぜんこうじまで旅をする

という物語です。
途中で姨捨山にも寄って詩を詠んだわけです。

更級紀行については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください

【更科紀行】松尾芭蕉が追い求めた「月」と旅路の美学を徹底解説!
松尾芭蕉の名作『更科紀行』。なぜ芭蕉は木曽路を歩き、姨捨の月を求めたのか?その謎や歴史を、わかりやすく解説してゆきます!俳聖・松尾芭蕉が綴る「月」と「道」の物語​松尾芭蕉の『更科紀行さらしなきこう』について、お話ししますね!この作品は、松尾...

長野県歌「信濃の国」においても、

しるき名所も 雅士みやびお
詩歌しいかに詠みてぞ 広めたる

と歌われていますね。

しるとは、「有名な」と言う意味です。
現代でも「著名ちょめいな」といいますよね。

雅士みやびおとは、松尾芭蕉のような歌人のことをいいます。

更級さらしなは「更科さらしな」とも書きます。
長野県は元々は「信濃国」といい、昔は「しな」という植物が多かったことから、

科野しなの信濃しなの

というようになりました。
そのため、長野県には「しな」という地名が多いといえます。

「姨捨の棚田」

また、姨捨山のふもとにある棚田たなだには、秋には月が田んぼごとに映って、とても美しくなります。
つまり、複数の段々重ねのマス目のような田んぼに、夜に1つずつ月が映るということです。

例えば、田んぼが30個あれば、それに映る月も30個になります。
これを「田毎の月たごとのつき」といいます。

田毎の月については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください

鉄道唱歌 北陸編 第26番 「田毎の月」 多くの詩人や絵師に愛されてきた、月の名所
鉄道唱歌 北陸編の歌詞を、わかりやすく解説してゆきます!田毎の月の地理・歴史について、初心者の方にもやさしく解説してゆきます!↓まずは原文から!田毎たごとの月つきの風景も見てゆかましを秋ならば雲をいたゞく冠著かむりきの山はひだりにそびえたり...

この「姨捨山の棚田」「田毎の月」は、歌川広重浮世絵にも描かれてきました。
こちらは、当時まだカメラや写真が無かった時代の風刺画風景画であり、現代版Instagram(インスタ)と思ってもらえればいいでしょう。

誰だって旅に出れば、スマホで景色をパシャパシャ(撮影)やりたくなりますよね。
あれと同じで、昔はカメラがなく絵に残すくらいしかなかったわけですが、現代人がスマホでSNSに載せる行為と同じということでしょう。

長野「四つの郡」を照らす、月の明かり

また姨捨山の付近には、昔からとても美しい「田毎の月」が眺められると言われてきた月見堂つきみどうというお寺もあります。

四郡しぐんとは、ここでは川中島四郡かわなかじましぐんのことをいいます。
奈良時代の律令制においては、都道府県は「」と呼ばれていました。
さらに、その「国」の下には「」というさらに細かい区分がありました。

その川中島四郡の平野に照る月が、「おぼろである」というのです。

おぼろなり」とは、月が雲で欠けてぼんやりしている様子をいいます。

姨捨駅のスイッチバック

姨捨駅おばすてえきは、スイッチバックで有名です。

「スイッチバック」とは?

スイッチバック」とは、一旦先頭から突っ込んで客を乗り降りさせ、再びバックして本線に戻り、駅を出発する構造のことです。

姨捨駅はきつい勾配(坂道)の位置にあります。
そのため、

  • 一旦、平地の駅ホームに、先頭から列車を突っ込む
  • お客様を乗り降りさせる
  • 再びバックして本線に戻り、再びきつい坂道をゆく

という手順をとります。

なぜ姨捨駅は、スイッチバックなのか?

ではなぜ姨捨駅は、スイッチバック構造なのか。

それは昔は、きつい勾配の上に列車を止めておくことが難しかったからになります。
また、単線(線路が1本しかないこと)のときの列車行き違いの待避所としての役割もありました。

現代ではこうした問題は改善され、

  • 列車の性能が向上したこと
  • 複線化したこと

もあって、列車行き違いの退避スペースも必要なくなりました。
そのため、スイッチバック構造の駅はほとんど廃止されています。
しかし、今ではスイッチバック構造の駅は珍しくなり、観光要素もあるため、敢えてスイッチバックを残しているという駅もあります。

「日本三大車窓」の一つでもある

姨捨駅ホームからの善光寺平の景色は絶景であり、「日本三大車窓」とも呼ばれます。

姨捨駅からの景色(長野県千曲市)

姨捨駅からの景色(長野県千曲市)

次回は、稲荷山駅へ

おわりに:次は、稲荷山駅いなりやまえきに止まります!

コメント