愛知県安城市にある東海道新幹線の駅・三河安城駅について、さまざまな魅力や意外な歴史などについて、わかりやすく解説してゆきます!
三河安城駅の不思議な魅力と歴史

デンマークの農家を模した駅舎デザインの、東海道新幹線・三河安城駅(愛知県安城市)
新幹線で「通過されるだけの」駅!?
あと10分ほどで名古屋に到着します。
お降りの方は、お忘れもののないよう…
東海道新幹線「のぞみ号」に乗って名古屋・新大阪方面に向かうときに、このアナウンスをよく聴く機会のある人も多いことでしょう。
なかなかこの駅で降りる機会は少ない
そんな三河安城駅(愛知県安城市)は、基本的には新幹線は「こだま」のみの停車となっています。
そのため、世の中の大半の人々にとっては「通過されるだけの駅」となってしまっているという、少し特殊な特徴を持つ駅です。
通過するだけでは「勿体無い」「一度は降りてみたい」駅

東海道新幹線・三河安城駅(愛知県安城市)
しかしながら、この三河安城駅は単に通過するだけでは少し勿体無い、たくさんの魅力に溢れているわけです!
地元の方々や鉄道ファンからも愛着を込めて語られることが多い場所となっています。
そんな「一度は降りてみたい駅」である三河安城駅について、今回はたくさん掘り下げて研究してゆきます!!
東海道新幹線については、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。

地理と建設の背景:三河安城駅

東海道新幹線・三河安城駅(愛知県安城市)
三河安城駅は、愛知県の東側にある安城市に位置しています。
在来線には「安城駅」もある
ちなみに、在来線(東海道本線)にも別の安城駅という駅があります。
どちらかというとこちらの方が、安城市のメインの駅となっています。
安城駅の方がむしろ市の中心部に近いです。
快速列車が停車するのもこちらの安城駅の方というわけですよ。
すなわち、在来線の三河安城駅には快速列車などは停車せず、普通列車しか停車しないという駅となっています。
さらには新幹線の駅とは直結していません。
150mほどの通路を徒歩で移動する必要があるため、注意しないといけないわけですね。
「安城駅」と「三河安城駅」は全く別の駅
たとえ1駅といえど、徒歩だと30〜40分ほどかかります。
うっかり降り間違えると大変なことになるので、注意が必要ですね!
そもそも「三河」とは?
ちなみに「三河」とは、愛知県東部の古い呼び方です。
愛知県は大きくわけて2つの地域に分かれます。
- 愛知県北部:尾張国
- 愛知県南東部:三河国
つまり、在来線の「安城駅」と区別するために、「三河安城駅」となっているわけですね。
「新安城駅」ではなく「三河安城駅」となった理由
こうして、新幹線の駅ができるときに、既存の在来線「安城駅」と区別する必要がありました。
しかし、「新安城駅」とはしませんでした。
「三河安城駅」と名づけたのは、単に安城市だけのためではありません。
周辺の岡崎市や刈谷市、豊田市といった、「西三河地方全体」の駅であることを強調したかったからです。
このように、新幹線の駅名に対して「三河」という接頭辞をつけました。
これによって、歴史ある土地への敬意と、三河地方全体への広域アクセスへの期待が込められているというわけですね!
地元の要望により、1988年に開業した「請願駅」
この三河安城駅は1988年に、請願駅として誕生しました。
請願駅:地元の自治体や企業などが、鉄道会社に対して「ここに駅を作ってほしい」とお願いして、建設費用を自分たちで負担して建設される駅のことです。
したがって、地元自治体が自分達で建設費を負担して作られたという経緯があります。
三河安城駅は、それだけ地域の発展への熱い期待が込められた駅であったというわけです。
三河安城駅 興味深いエピソードの数々
幻の「幸田駅」設置案の真実
実は、岡崎市のやや南にある幸田町も、元々はこのときの新幹線駅設置にあたっての有力候補でした!
元々、豊橋~名古屋の間には、新幹線の駅がなかった
元々、1964年の東海道新幹線開通時からの約20年間は、名古屋・豊橋の間には東海道新幹線の駅は存在していませんでした。
そして、約20年後の1988年に駅を新設することになりました。
その際、安城市(三河安城駅)だけでなく、南の幸田町(幸田駅付近)への設置案も実際に検討されていたといいます。
読み方についての豆知識(幸田町・幸田駅)
- 町の名前:こうたちょう(幸田町)
- 駅の名前:こうだえき(幸田駅)
駅名には「濁点」が入るわけですね。
幸田駅は、在来線と新幹線が交差する位置にある
なぜなら、この(幸田町・幸田駅)位置には、
- 東海道新幹線
- 在来線(東海道本線)
がそれぞれちょうど交わる(立体交差する)地点が存在するからですね。
立体交差:例えば信号などで止まらなくて済むように、橋やトンネルを使って、異なる高さで交差するようにすることです。
幸田町との激しい誘致合戦
豊橋駅と名古屋駅のちょうど中間にあたるこのエリアでは、「わが町に新幹線を!」という熱いバトルが繰り広げられたといいます。
そのため、もし幸田町に駅が決まっていたら、今の三河安城駅周辺の景色は全く違ったものになっていたかもしれません。
しかし、最終的には安城市が建設費を負担する「請願駅」という形をとりました。
より有利な形で、1988年に三河安城駅が開業したというわけです。
駅誘致失敗の幸田町 しかし後に自動車工場誘致で発展
このように、結果的には安城市に新幹線駅の設置が決まりました。
幸田町にとっては「落選」という苦い歴史となってしまいました。
しかし、それでも幸田町は、後に独自の努力によって自動車産業などの工場誘致に成功しました。
たくさんの従業員やその家族が暮らす町へと成長したのです。
そのため、今では人口が増え続けるという元気な町になっています。
したがって、どちらの町も「それぞれの形」で夢を叶えたと言えるのではないでしょうか!
三河安城駅 新幹線駅と在来線駅が少し離れている理由
三河安城駅は、先述の通り、新幹線の駅と在来線(東海道本線)の駅が、それぞれ約150mほど離れています。
この2つの駅は屋根付きの通路によってつながっています。
それぞれの駅間の移動が可能という形になっています。
なぜ安城駅に(新幹線駅を)併設できなかったのか?
新幹線のルートが「直線」を優先したため
先述の通り、元々は豊橋~名古屋の間には、新幹線の駅はありませんでした。
新幹線は時速200km以上(当時)で走行します。
そのため、なるべくカーブを少なくして、直線的に線路を敷く必要がありました。
したがって、既存の安城駅(市街地)を通るようにルートをやや東に曲げると、大きな時間ロスや急カーブが生じてしまうことになります。
そのため、1964年の開業時点では、元々新幹線が安城市の中心部を通り抜けるルートにはなりませんでした。
つまり、安城駅(安城市の中心部)の場所を避ける形で決まったのでした。
そして、約20年後の1988年になりました。
新幹線と在来線の線路がほぼちょうど重なる、今の三河安城駅の位置に駅ができることになったというわけです。
しかし後述するように、この位置にはちょうどニチバンの工場がありました。
新幹線の駅設置には、もう少しの苦労・工夫が必要でした。
駅同士が150m離れている 「ニチバン工場」との関連性
完全に交差する場所に、ちょうど工場があった!
新幹線の三河安城駅と、在来線の駅が少し離れている最大の理由があります。
まさにちょうどこの位置に存在する「ニチバンの工場」の敷地に配慮してのことでした。
新幹線と東海道本線がちょうど立体交差している場所のすぐそばには、古くからニチバン安城工場の広大な敷地がありました。
そもそも工場の「立ち退き」自体が困難だった
しかし、もし在来線のホームを新幹線と完全に重なる位置に作ろうとすると、
- 工場の設備を縮小してもらう
- 工場に立ち退き・移転してもらう
などの必要がありました。
もちろん、ニチバン工場としてはこれらを要求されると、単なるムチャ振りでしかありません。
したがって、わざわざ工場に立ち退いてもらうための膨大な補償費や移転期間などといった様々な問題を避ける工夫がなされました。
あえて在来線のホームから、少し西側(名古屋方面)へとずらして、新幹線の駅を建設したのでした。
結果として生まれた「150mの通路」
そしてその結果、新幹線から在来線に乗り換えるためには、あの150mほどの通路を歩くという形になりました。
すなわち、あの通路の上を歩いているときは、まさにニチバンの敷地を避けながら移動していると言っても過言ではないわけです。
こうして見ると、一見すると不便に思える「150mの距離」も、日本の物流を支えるセロテープの生産を守るための「優しさの距離」にも思えてこないでしょうか。
そして、新幹線のホームから見える赤と青のニチバンの大きな看板も、そう考えながら眺めるとまた違った趣があることでしょう。
日本のデンマーク・安城市

「日本のデンマーク」の説明がなされた案内板(三河安城駅前より)(愛知県安城市)
愛知県安城市は、かつて明治用水という(人工的に田畑に水を引っ張ってくるための)インフラによって、それまでまともに作物が育たなかったような不毛の大地を、豊かな農地へと生まれ変わらせてきました。
かつて世界水準の農業先進国になぞらえて、「日本のデンマーク」と呼ばれた輝かしい歴史を持ちます。
さらに、安城市は交通の利便性や豊かな水資源を活かして、ニチバンのセロテープ工場などの企業誘致にも成功しました。
農業の発展から生まれた広大な土地と産業基盤は、地域に安定した雇用と税収をもたらしました。
そして、新幹線の三河安城駅開業とともに、現在の住みやすい都市へと大きな成長を遂げたのです!
詳しくは、次回詳しく解説しますね。
名古屋までの「あと一歩」を味わう
名古屋まであと10分弱という場所で、あえて降りて一息ついてみるのも素敵ですね。
都会の喧騒に飛び込む前の、贅沢な「静寂の時間」を過ごすことができます。
通過する際のアナウンスを聞くだけでなく、実際にホームに立って風を感じてみると、また違った世界が見えてくるはずですよ!
おわりに・まとめ
今回は東海道新幹線の三河安城駅にまつわる、意外な歴史や「150mの通路」の秘密について解説しました。
単なる「通過駅」にとどまらない、地域の熱い思いが詰まった素晴らしい駅ですね!
次回は、今回少し触れた「日本のデンマーク」と呼ばれる安城市の歴史や、農業と産業の発展の物語をさらに深くお届けします。
どうぞお楽しみに!
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